有翡 -Legend of Love- 第38話 あらすじ/ネタバレ

謝允(しゃいん)が朱明火尾草(しゅめいかびそう)という名の3番目の珍しい薬を服用すると、体内に残っていたわずかな生気が無理やりに刺激され、表面上は以前のような活力と精神を取り戻したように見えるが、実際には命の火を燃やし尽くしているに過ぎない。この薬は一時的に死を遠ざけることはできても、根本的な解決にはならず、体内は日を追うごとに衰弱していく。このままでは取り返しのつかないことになるだろう。

眠りの中で穏やかな表情を浮かべる周翡(しゅうひ)を見つめ、謝允(しゃいん)の心はかつての激動の日々へと遡っていく。乱世の中、人々は苦しみ、彼は天下の重責を担いながらも、争いを望まず、民衆を犠牲にして天下を取ることも望んでいなかった。しかし、親友である王麟(おうりん)が投獄されたことを聞き、正義への執念と友情への思いから、再び硝煙の渦巻く安平(あんへい)軍の軍営へと足を踏み入れる。この旅の目的は、王麟(おうりん)を救出するだけでなく、安平(あんへい)軍の希望である令牌を周以棠(しゅういとう)の手に安全に届けることだった。王麟(おうりん)が後顧の憂いなく、勇猛果敢に命を落とせるようにするためである。この犠牲と託しによって、謝允(しゃいん)と周翡(しゅうひ)の運命は静かに結びつき、山盟海誓を交わすことなく、生死を共にすることを願うようになった。

自分が長くはないことを悟った謝允(しゃいん)の心には、周翡(しゅうひ)のために比類なき宝刀を鍛造するという願いだけが残り、それは彼女が江湖を生き抜くための頼りになるだろう。過去の失敗から学び、彼は再び師匠に教えを請い、後悔を晴らす決意をする。刀が形になる前に、ある名前が彼の心に浮かび上がっていた。「熹微」である。この名前は、乱世に生まれ、波乱万丈の運命を背負った无奈の嘆きであり、同時に訪れる夜明けの曙光への無限の憧れでもある。暗闇の中にいても希望を持ち、夜明けの暖かさと光を期待することを意味している。

一方、柳庄主は祝寿を名目に、清暉真人(せいきしんじん)を包囲する作戦を密かに準備し、天下の英雄たちが集結する。李妍(りけん)は李晟(りせい)が招待状を準備している秘密を偶然知り、賑やかな宴会だと思い込んで、一緒に行くよう騒ぎ立てる。一方、呉楚楚(ごそそ)は四十八寨(しじゅうはちさい)で武術の典籍を黙々と整理しており、自身の修行のためだけでなく、李家の南刀(なんとう)を継承するという重責も負っている。李妍(りけん)の登場は、呉楚楚(ごそそ)にとって下山する絶好の機会となり、二人は意気投合し、柳庄主のもとへ武術を学びに行くことを決意する。

謝允(しゃいん)と周翡(しゅうひ)は、互いに心の中では理解しているが、言葉には出さないまま、建康への旅に出る。建康の街は、戦火の被害を受けず、まるで桃源郷のような繁栄を見せていた。ロマンチックな伝説に彩られた提灯屋の前で、謝允(しゃいん)は二人の関係を隠そうとするが、周翡(しゅうひ)は未婚妻として堂々と認め、周囲の人々を驚かせる。この店は実は四十八寨(しじゅうはちさい)の隠れ拠点の一つであり、店主の周翡(しゅうひ)への敬意の念は溢れんばかりで、謝允(しゃいん)も周翡(しゅうひ)が自分の人生において重要な存在であることを実感する。

夜が更けていくと、謝允(しゃいん)は周翡(しゅうひ)を連れて酒楼の屋上へ上がり、煌々と輝く街並みを見下ろしながら、未来への惜しみない思いと別れへの寂しさを胸に抱く。限られた時間の中で、彼らはあらゆる悩みや不安を捨て、ただ互いの陪伴を楽しむことにした。酒を酌み交わし、二人は顔を見合わせて微笑む。言葉は必要ない。心に秘めた愛情と静けさは、この過ぎ去ろうとする夜を温めるのに十分だった。

第38話の感想

第38話は、謝允(しゃいん)の病状が明らかになり、彼の命が残り少ないことが示唆されるなど、物語が大きく動き出したエピソードでした。周翡(しゅうひ)との関係も深まり、互いへの愛情が感じられるシーンも多く、感動的な内容でした。

特に印象に残ったのは、謝允(しゃいん)が周翡(しゅうひ)のために宝刀を鍛造しようとするシーンです。過去の失敗から学び、師匠に教えを請う姿は、彼の周翡への強い想いを表しています。刀に「熹微」という名前をつけたのも、暗闇の中でも希望を持ち、夜明けを待つという二人の決意を表しているように感じました。

また、李妍(りけん)と呉楚楚(ごそそ)が柳庄主のもとへ武術を学びに行く展開も興味深かったです。李妍(りけん)の行動力は相変わらずですが、呉楚楚(ごそそ)が下山する決意をしたのも意外でした。二人がどのような成長を遂げるのか、今後の展開が楽しみです。

つづく