あらすじ

太后の死後、都には不穏な空気が漂っていました。帝家の冤罪を晴らそうと奔走する任安楽(じんあんらく)の周囲で、「彼女が国を乗っ取るかもしれない」という危険な噂が流れ始めます。皇帝からの疑いの目が向けられる中、安楽の腹心である洛銘西は、彼女を守るために驚くべき決断を下し、自ら投獄されてしまいます。最大の味方を失った安楽。彼女は友を救い、大義を成し遂げるため、民衆を巻き込んだ大胆な策に打って出ます。一方、太子・韓燁(かんよう)もまた、正義と愛する人のために、父である皇帝と対峙することを決意するのでした。それぞれの覚悟が試される、緊迫した展開が続きます。

ネタバレ

太后の葬儀がひっそりと執り行われ、宮廷には重苦しい空気が漂っています。息子の道理を尽くすため、太子・韓燁(かんよう)は質素な生活を送り、心身ともにすっかり憔悴しきっていました。そんな彼の元を任安楽(じんあんらく)が訪れます。韓燁(かんよう)は「君の気持ちは本物か、それとも偽りか」と、ずっと聞きたかった問いをぶつけますが、安楽の答えはあまりに冷たいものでした。帝家の冤罪が晴らされていない今、二人の間に情愛を語る資格はない、と。韓家を代表して謝罪したいという韓燁(かんよう)の言葉さえも、彼女は「私が欲しいのは皇帝の言葉だけ」と一蹴します。二人の間にある深い溝は、あまりにも深く、悲しいですね。

その頃、宮廷では新たな火種がくすぶり始めていました。安寧(あんねい)公主(あんねいこうしゅ)は国境で北秦による略奪が起きていることを知り、防衛の強化を決意。その裏で、冷北(冷北 (れい ほく))は姜瑜(きょう ゆ)に、任安楽(じんあんらく)を排除するようそそのかします。彼らの狙いは、皇帝の手で安楽を「君主を欺いた罪」で処罰させ、民の怒りを煽り、一石二鳥で邪魔者を消すこと。安楽の正体が帝梓元(ていしげん)ではないという事実は、彼らにとって最大の武器なのです。

都では、「任安楽(じんあんらく)は第二の帝盛天(ていせいてん)となり、この国の主となるかもしれない」という不穏な噂が流れ始めます。これに最も危機感を覚えたのが、皇帝・韓仲遠(かんちゅうえん)でした。そして、安楽の最大の味方である洛銘西(らくめいせい)もまた、この危険な空気を察知します。

愛する安楽を守るため、洛銘西は驚くべき行動に出ます。彼は一人で宮殿へ向かい、帝家の冤罪事件に関するすべての責任は自分にあると嘘の自白をし、自ら投獄される道を選んだのです。この知らせに、韓燁は言葉を失い、そして洛銘西を慕う琳琅(りんろう)は、彼の好きな舞を最後に舞い、後を追うことを決意します。あまりにも悲しい覚悟ですよね…。

牢獄で再会した安楽と洛銘西。傷だらけの彼の姿に、安楽は涙を止められません。「なぜこんな無茶を…」と責める安楽に、洛銘西は「今は足元を固める時だ。決して乱れてはならない」と優しく、しかし力強く諭します。

友の自己犠牲を無駄にはしない。安楽は反撃の策を打ち出します。彼女は都の学者や民衆の心を巧みに動かし、帝家の冤罪を隠蔽し、忠臣である洛銘西を投獄した皇帝への不満を爆発させたのです。民衆は宮殿の門に押し寄せ、正義を求めて叫びます。

この民衆の声を追い風に、ついに韓燁が動きます。彼は父である皇帝に謁見し、洛銘西の釈放を嘆願。「父上は、洛銘西が国を守るための忠臣だとわかっているはずです」と、皇帝の真意を突き、民の信頼に応え、帝家の潔白を証明するべきだと強く訴えかけるのでした。物語が大きく動く、緊迫のラストシーンです。

『安楽伝』第27話の感想

今回のエピソードは、登場人物それぞれの覚悟と想いが交錯し、物語の深みを一層感じさせる回でした。特に印象的だったのは、任安楽を守るために自らを犠牲にした洛銘西の行動です。彼の安楽への想いの深さと、自らの身を顧みないその覚悟には、胸を打たれずにはいられません。また、彼を想う琳琅(りんろう)の悲しい決意も、物語に切ない彩りを添えていました。

一方で、韓燁と安楽の関係は、帝家と韓家という決して越えられない壁の存在を改めて突きつけられ、苦しい展開が続きます。しかし、その中でも韓燁がただ悲しむだけでなく、民の声を受け止め、父である皇帝に正義を説く姿には、彼の太子としての成長と強い意志を感じ取ることができました。それぞれの正義と立場が複雑に絡み合い、誰か一人が正しいとは言えないこの重厚な人間ドラマこそが、本作の大きな魅力なのだと再認識させられました。

つづく