静かな日々は、西炎(せいえん)の瑲玹(そうげん)の一言、「塗⼭璟(とざんけい)を殺したのは私だ」で砕け散った。西陵玖瑶(せいりょうきゅうよう)は耳を疑った。愛する人を殺めたのが、いつも自分を守ってくれていた兄だとは、信じられなかった。怒りと悲しみが渦巻き、理性を失った玖瑶は、刃を瑲玹(そうげん)の心臓へと向けた。驚愕する瑲玹(そうげん)の目に映ったのは、妹の断固たる決意だった。抗うこともできたはずだが、彼は諦めたように刃を受け入れた。鮮血が衣を染めた。

地に崩れ落ちた瑲玹(そうげん)は、苦しげに玖瑶への深い愛情と、己の行為の苦衷を呟いた。震える手で刀を握りしめた玖瑶の心は引き裂かれた。愛と憎しみがこれほど簡単に交錯するとは、想像もしていなかった。瑲玹(そうげん)は自らの手で刃を押し付け、心中を図ろうとした。その姿に玖瑶は泣き崩れ、駆けつけた祖父が悲劇を止めた。しかし、祖父の複雑な眼差しから、玖瑶は全てを知っていたことを悟った。

夜更け、祖父は玖瑶の部屋を訪れ、瑲玹(そうげん)の行動は状況に追い詰められた上での、一瞬の過ちだったと諭した。憎しみに囚われず、私怨で無辜の民を巻き込むなと戒めた。しかし、玖瑶の心の傷は深く、一族への信頼は崩れ去っていた。問い詰める声は、涙声へと変わった。祖父は、やむなく玖瑶を厳重に監視するよう命じた。玖瑶は冷笑し、幽閉など恐れないと告げた。

それでも瑲玹(そうげん)は玖瑶との繋がりを絶とうとはしなかった。酒と桑の実を届けさせる機会を利用し、密かに鍵を差し入れたのだ。玖瑶は桑の実を弄ぶうちに鍵を見つけ、自らの枷を外した。自由を得た玖瑶は、瑲玹(そうげん)との思い出が詰まった鳳凰林へ向かった。そこで二人は再会を果たし、言葉にならない思いを交わし合った。

瑲玹(そうげん)は幼い頃の思い出のブランコで、二人の間の溝を埋めようとした。しかし、玖瑶の心には深い傷跡が残っていた。ブランコに揺られながら、かつての純粋無垢だった兄の姿を思い出し、今はもう手の届かない存在だと悟った。玖瑶は、かつて鳳凰林で瑲玹(そうげん)と穏やかに暮らすことを夢見ていたが、全ては兄の行為によって壊されたと告げ、復讐を果たさねばならないと宣言した。

玖瑶の決意を前に、瑲玹(そうげん)は逃げることなく受け入れた。玖瑶は鳳凰の花を差し出し、猛毒があると偽り、共に花の蜜を飲み、黄泉へと旅立とうと持ちかけた。しかし、玖瑶が先に倒れた時、瑲玹(そうげん)は花に毒などなかったこと、玖瑶が自らの命で自分を守ろうとしたことに気づいた。瑲玹(そうげん)は弱りゆく玖瑶を抱きしめ、後悔と絶望の涙を流した。玖瑶は微笑みながら息を引き取り、その犠牲は瑲玹(そうげん)の心を深く傷つけた。冷たくなった体を抱きしめ、瑲玹(そうげん)の絶望の涙は止めどなく流れ落ちた。

この夜、鳳凰林は二人の深い愛憎劇と、玖瑶の無私で壮絶な犠牲を目撃した。そして瑲玹(そうげん)は、妹を失った悲しみの中で、自らの行為の代償と結果を深く心に刻んだ。

第19話の感想

第19話は、愛憎入り乱れる壮絶な展開に息を呑む、シリーズ屈指の悲劇的なエピソードでした。西陵玖瑶(せいりょうきゅうよう)と瑲玹(そうげん)の兄妹の絆が、塗⼭璟(とざんけい)の死によって決定的に断ち切られる様は、あまりにも残酷で、胸が締め付けられる思いでした。

特に印象的だったのは、玖瑶の心の変化です。愛する人を失った悲しみと、兄への裏切りによる怒りが、彼女の心を深く蝕んでいく様子が繊細に描かれていました。復讐を決意するまでの葛藤、そして瑲玹(そうげん)との最後の対峙で見せた覚悟は、彼女の強い意誌と深い愛情を感じさせ、涙を誘います。

瑲玹(そうげん)の苦悩もまた、視聴者の心を揺さぶりました。愛する妹を守るため、そして天下を安定させるため、苦渋の決断を下した彼の心中は、どれほどの苦しみだったでしょうか。妹を深く愛していながらも、彼女の刃を受け入れる姿は、彼の深い愛情と責任感の表れでしょう。

つづく