始皇帝 天下統一 第55話 あらすじ/ネタバレ

夕暮れ時、城壁の上で嬴政(えいせい)と李斯(りし)が肩を並べて立ち、郭開(かくかい)の遠ざかる背中を見送りながら、より広大な戦略を練っていた。嬴政(えいせい)は静かに「郭開(かくかい)という男は、うまく使えば十万の兵士に勝る。六国を混乱に陥れるための妙手だ」と語った。そして、李斯(りし)に六国の権力者と交際し、天下の情勢をかき乱すように命じた。

郭開(かくかい)は邸宅に戻ると、趙国の朝政の急変に複雑な心境に陥った。趙偃(ちょうえん)が自分を捨て駒とみなしており、急いで新宰相の李牧を推挙しようとしていることを知ると、背筋が凍る思いがした。夜も更けた頃、郭開(かくかい)は趙偃(ちょうえん)の車駕を遮り、秦国での九死に一生を得たこと、邯鄲の獄吏が勇敢に助けてくれたこと、そして獄吏が命を落としたことを涙ながらに訴えた。同情を得るために大げさに語った。

しかし、趙偃(ちょうえん)は簡単には騙されない人物だった。彼は秦国が趙姫(ちょうき)の件で激怒していることを知っており、郭開(かくかい)を簡単に許すつもりはなかった。幸いなことに、皇后が取り成してくれ、郭開が事前に工作していたこともあって、趙偃(ちょうえん)は郭開を完全に捨てることはなかったが、宰相の地位には戻さなかった。

一方、李斯(りし)は趙国の朝政の最新情報を嬴政(えいせい)に密報していた。嬴政(えいせい)はそれを聞いて冷笑を浮かべ、趙偃(ちょうえん)の一挙手一投足を把握していた。一方、趙偃は頓弱(とんじゃく)が秦の使者であることが発覚したことに激怒し、すぐに捕縛するよう命じた。趙偃の尋問に対し、頓弱(とんじゃく)は自分の使命は燕国だけでなく斉国にも及んでおり、三国が協力して楚国に対抗することを目的としていると答えた。これは嬴政(えいせい)が巧妙に仕掛けた連環の計だった。

趙偃は頓弱(とんじゃく)の言葉に心を動かされ、秦が楚を攻めるのは天が与えた好機であり、趙はこれを利用して休養し、国力を増強できると考えた。そこで、秦との同盟を結ぶことを目的に書簡を送り、秦の力を借りて楚を弱体化させ、燕を攻略する野心を秘めていた。

趙公子葱の登場は、この複雑な政治ゲームにさらに変数を加えた。彼は、趙偃が自ら秦に赴くことで同盟の誠意を示すべきだと主張した。李牧は、国書で迎えるのと、趙偃に後継者を立てさせるという二重の保険をかけるべきだと提案した。倡女(しょうじょ)は公子遷の地位を守るために郭開に多額の賄賂を贈り、公子嘉(こうしか)の背後には強力な勢力が控えているため、立てると内乱が起こる恐れがあると趙偃を説得した。

嬴政は趙偃が後継者を立てたことと頓弱(とんじゃく)が秦に帰還するとの知らせを受け、すでに計画を立てていた。彼は流れに乗じて国書で趙偃を招き、同時に各国文書の差異が大きいことに気づき、書同文の宏大な理想を抱き、この重責を李斯(りし)に託した。

遠く燕国の燕王は、趙と秦が同盟を結ぶことを聞いて憂慮し、臣下たちは様々な策を献策した。最終的には、宗室の子弟を秦に人質として送り、自国の安全を確保することに決めた。しかし、燕太子丹はこれに強く反対し、自ら秦に赴いて同盟を阻止したいと主張したが、燕王は聞き入れなかった。六国の運命を左右する暗流が静かに動き出していた。

こうして、第55話は錯綜した政治闘争の中で幕を閉じた。それぞれの勢力が自らの利益のために策略を練り、真の勝者はこの霧の奥に潜み、時を待って一撃必殺を狙っているのかもしれない。

第55話「棋局深邃、同盟迷霧」感想

第55話は、複雑に絡み合った政治闘争が描かれた回だった。各勢力が自らの利益のために策略を巡らせ、緊張感が漂う展開だった。

特に印象的だったのは、嬴政の冷静さと狡猾さだ。彼は郭開を利用して六国を混乱に陥れ、さらに頓弱(とんじゃく)を使って趙偃を操ろうとした。その巧妙な策略には、さすが始皇帝と思わせるものがあった。

また、趙偃の苦悩も描かれていた。彼は秦国に翻弄され、自国の未来を模索していた。最終的に秦との同盟を決めたのは、彼の苦渋の決断だったと言えるだろう。

この回は、今後の展開を占う上で重要な意味を持つ回だった。嬴政の野望はさらに強まり、六国の命運は風前の灯火となった。果たして、六国は秦の侵略を阻止することができるのか。

つづく