始皇帝 天下統一 第65話 あらすじ/ネタバレ
夜明け前の洛陽
五更の空がまだ薄暗い中、洛陽の街は人々で賑わっていた。秦の民衆は、肩に担いだり手に持ったりと、争うように穀物を運び、国難に立ち向かう意志を示していた。城壁に立った嬴政(えいせい)は、この光景を目にし、胸に込み上げるものがあった。「赳赳老秦,共赴国難」という壮大な志が彼の胸に響き渡った。この光景は、彼の治世理念を最も生々しく表していた。
燕太子丹の密謀
まさに大軍が洛陽へ向けて出発しようとしていた時、驚愕の知らせが雷のように響き渡った。なんと、燕太子丹が秦の兵士に扮して咸陽を脱出し、韓非や趙佾(ちょういつ)と合流して合従の計を企て、強大な秦に対抗しようとしていたのだ。韓非と趙佾(ちょういつ)は自ら姬丹(きだん)を迎え、3人は密談を重ねた。姬丹(きだん)は秦の結束の固さを痛感し、揺るがすのは難しいと感じていた。しかし、一方で、関東の商人が秦と密かに取引をして利益を得ようとしていることも知った。そこで、姬丹(きだん)と韓非はそれぞれの国に戻り、食料と軍資金を集めて趙の窮地を救うことにした。
嬴政(えいせい)の銅鉄商戦
一方、洛陽では、嬴政(えいせい)が呂不韋(りょふい)の死を悼みつつ、六国に対する新たな戦略を練っていた。それは、銅鉄の商戦を餌にして六国の民衆の心を秦に向けさせ、国力を削ぐというものだった。姚賈は命を受け、直ちに臨淄へと向かい、斉王に趙への銅鉄の供給を阻止するよう説得するとともに、韓、魏、楚、燕の四国にも警告を発した。趙に援助する者は、すべて秦の敵とみなすというのだ。
列国の思惑
嬴傒(えいけい)は、列国が趙を密かに援助するのではないかと心配していたが、嬴政(えいせい)は自信満々だった。燕と趙は長年の確執があり、燕が簡単に手を出すことはないことを知っていた。楚は中原から遠く離れており、銅鉄は得意分野ではない。韓と魏は秦を恐れているものの、唇亡歯寒の理屈から趙を密かに援助せざるを得ない。そして、それがまさに嬴政(えいせい)の策略の肝だった。
戦場の膠着状態
前線の戦場では、李牧と王翦(おうせん)の対峙が白熱化していた。李牧は何度も戦術を変えたが、王翦(おうせん)は堅守し、趙軍の兵糧が尽きるのを待っていた。部下の焦りに対して、李牧は冷静に対処し、体力を温存することの重要性を強調し、時を待った。
鄭国(ていこく)渠の完成
秦の鄭国(ていこく)渠が完成し、嬴政は鄭国(ていこく)の功績を称えて鄭国(ていこく)渠と命名した。渠の水は勢いよく流れ、千里を潤し、両岸の民衆は歓声を上げ、感謝の涙を流した。この祝賀の陰で、銅鉄をめぐる商戦が静かに繰り広げられていた。各国から趙への支援物資が続々と到着し、秦の使者である頓弱(とんじゃく)はそれを密かに記録し、郭開(かくかい)に献策した。秦と趙の対峙を利用して銅鉄を買い占め、暴利をむさぼろうというのだ。一時的に銅鉄の価格が急騰し、趙軍は窮地に陥った。
燕の援助と趙の窮地
まさに趙が危機に陥った時、燕太子丹は匈奴の力を借りて趙に銅鉄を輸送し、市場の風向きは一変し、銅鉄の価格は暴落した。韓非は農耕を重視し、私鋳鉄を拒否したため、趙佾(ちょういつ)らと争いが起こった。そんな中、姬丹(きだん)の到着により樊於期(はんおき)の策がもたらされ、趙に一筋の光明が差した。
民生大計の推進
一方、渭北では、嬴政の民生大計が着々と進められていた。彼は三川郡守に庶民を関中に移住させるよう命じ、隗状(かいじょう)と芈啓が道中で民衆の安全を確保した。王绾(おうかん)は、春の耕作に備えて、種籾、農具、耕牛の準備を進めた。姚賈からの捷報が届き、斉が趙への銅鉄の供給を禁じたことで、嬴政の商戦戦略は効果を発揮し始めた。
戦いの行方
この第65話は、単なる戦場での知略の戦いではなく、政治と経済が複雑に絡み合った戦いだった。銅鉄の商戦は、一見穏やかな水面の下で暗流が渦巻いているように、六国の興亡を左右するものであった。そして、この硝煙の立たない戦いでは、すべての決断が歴史の流れを変える鍵となる。
第65話の感想
第65話は、政治と経済が複雑に絡み合った、見応えのあるエピソードでした。特に、嬴政の銅鉄商戦は、一見シンプルでありながら、各国の思惑が交錯し、緊迫感のある展開でした。
また、各キャラクターの活躍も見どころでした。特に、燕太子丹の趙への援助や、韓非の農耕へのこだわりなど、それぞれの信念に基づいた行動が印象的でした。
そして、このエピソードで最も重要なポイントは、秦と六国の力の差が明確になったことです。秦は、圧倒的な国力と狡猾な戦略によって、六国を徐々に追い詰めていきます。果たして、六国は秦の脅威を乗り越えることができるのでしょうか?
つづく