始皇帝 天下統一 第66話 あらすじ/ネタバレ

趙国では、郭開(かくかい)は李牧から銅鉄戦略の秘密を引き出すことはできなかったものの、配下の探子が趙国の銅鉄の命脈の真実を密かに暴きました。この重要な情報は、すぐに秦王・嬴政(えいせい)の耳に届きます。

嬴政(えいせい)は、燕太子?丹の妨害を察知し、李信を大将として北上させ、匈奴から趙国への銅鉄の供給を断ち切りました。これは、趙国の経済の喉元を扼殺するようなもので、たちまち銅鉄の価格が急騰し、民衆は苦しみます。

一方、春平君(しゅんぺいくん)?趙佾(ちょういつ)は頑固に己の考えに固執し、韓非の忠告を無視します。二人の間の溝はますます深まり、銅鉄の道が秦軍によって断たれたという知らせが届くまで、趙佾(ちょういつ)は夢から覚めることはありませんでした。

秦国の密使である頓弱(とんじゃく)は、趙国の窮状を嬴政(えいせい)に報告する一方で、韓非の知恵に感服し、彼こそが得難い敵であると評価します。

趙国では、銅鉄の利益が前代未聞の貪欲と狂気を引き起こしました。商人たちは買い占めに走り、職人は粗悪な製品を作り、貴族や士族はこぞって製鉄に乗り出し、国家の農事は荒廃し、民衆の生活は困窮しました。

韓非は、この状況を目の当たりにして心を痛め、韓王・安に重農抑商、私鋳禁止を強く勧めますが、君臣ともに無視されてしまいます。絶望した韓非は、私窯を破壊することで民衆を目覚めさせようとしますが、人々は皆、利欲に目がくらんでおり、彼の声はあまりにも微弱でした。

三晋での私鋳が横行し、田畑は荒れ果て、人々は流離失所し、多くの流民が秦国に流れ込みました。嬴政(えいせい)は、この機に戦略を転換し、王翦(おうせん)の大軍を趙の地から撤退させ、銅鉄の価格を急落させます。郭開(かくかい)は、このことで大きな損失を被りますが、頓弱(とんじゃく)は穀物市場に攻勢をかけることで損失を埋め合わせようと嬴政(えいせい)に助言します。

韓国では、飢饉が蔓延し、人々は草の根や野菜を食べて飢えをしのぎます。韓非は、この事態を早くから予測していましたが、それでも自ら農村に出向いて民心を慰撫し、秦国の流民に対する厚遇策を知って複雑な思いに駆られます。彼は、流民を西へ放置すれば三晋は守るべき地を失うことを悟り、諸国に書簡を送り、食料の援助を求めて窮地を脱しようとします。

一方、秦国の函谷関では、数十万人の流民が押し寄せます。嬴政は、自ら陣頭指揮を執り、物資を調達して流民の適切な安置を確保します。彼の慈悲と先見の明は、六国の流民を秦国の力に変えることを目的としており、その雄大な野望は明らかです。

張譲は、事態の悪化を察知して、寧騰(ねいてい)を密かに秦に派遣して和平を請いますが、姚賈に見破られ、嬴政に紹介されます。嬴政は、寧騰(ねいてい)の才能を高く評価しますが、警戒も怠らず、鄭国(ていこく)を通して彼の忠誠心をさらに試します。

最終的に、韓非は国家の利益と個人の安危の狭間で、前者を選びます。彼は、秦に赴いて単身で戦火を鎮めようと決意します。趙佾(ちょういつ)は、心配しながらも、これが韓非が三晋のために時間稼ぎをするための策略であることを理解します。韓非のこの旅は、秦国の真意を探るためだけでなく、秦国内に不和の種を蒔き、三晋の未来のために大きな賭けに出るためのものでした。

この銅鉄風雲の戦いの中で、韓非は彼の知恵と勇気をもって、国家の危機に際しての責任感と犠牲を証明しました。そして、嬴政と韓非の知力と勇気のぶつかり合いは、戦国末期の歴史をさらに壮大なものへと導いていくのです。

第66話 感想

第66話は、銅鉄をめぐる駆け引きと、韓非の苦悩が描かれた、非常に興味深いエピソードでした。

趙国は、秦の策略によって銅鉄の供給を断たれ、経済が混乱に陥りました。この状況を目の当たりにした韓非は、重農抑商、私鋳禁止を強く主張しますが、受け入れられません。絶望した彼は、私窯を破壊することで民衆を目覚めさせようとしますが、失敗に終わります。

一方、秦国は、流民を積極的に受け入れ、その力を自国の発展につなげようとします。嬴政のこの戦略は、韓非の苦悩とは対照的に、非常に現実的で冷酷なものです。

このエピソードは、戦国末期の混乱と、人々の生き残りをかけた必死の闘いをリアルに描いています。また、韓非の理想と現実のギャップ、嬴政の冷酷なまでの合理主義など、登場人物それぞれの生き様を浮き彫りにしています。

つづく