始皇帝 天下統一 第69話 あらすじ/ネタバレ

咸陽の獄中、薄暗い光の中で韓非は、畢生の思想を記した竹簡に向き合っている。そこに李斯(りし)が訪れ、酒を酌み交わしながら、かつての同窓だった頃を懐かしむ。しかし、運命の分かれ道によって、二人は異なる道を歩むことになった。

李斯(りし)は韓非の非凡な知性に感嘆する一方で、血統による束縛が彼の運命を左右したことを痛感する。韓非は世事に通じていたが、一族のしがらみから逃れることはできず、その気高さは黄土の下に消えてしまう運命にあった。

別れの時が迫り、李斯(りし)は韓非の尊厳を守るため、自らの手で毒酒を差し出す。韓非はそれを理解し、静かに飲み干す。そして、最後の力を振り絞って書き上げた二十巻余りの『韓非子(かんぴし)』を李斯に託し、後世を照らし、人々の幸せに役立ててほしいと願う。

しかし、韓非が息絶えた瞬間、趙高(ちょうこう)が現れ、赦免の詔書が届けられる。李斯は驚きと後悔に打ちひしがれ、激昂のあまり血を吐いて倒れてしまう。

数日後、秋風が吹きすさぶ中、韓非の棺は特使に守られ、函谷関を越えて故郷の韓国へと運ばれる。一方、李斯は妻子の看病を受けながら目を覚ますも、韓非の死を痛感し、取り返しのつかない過ちを悔やむ。姚賈の慰めの言葉も、彼の心を癒すことはできない。

南陽では、寧騰(ねいてい)の計画が張讓(ちょうじょう)の妨害に遭い、寧騰(ねいてい)は姚賈に助けを求める。一方、咸陽では秦王政(しんおうせい)が群臣と共に滅韓の計を練る。李斯は、韓の援軍を分断するため、軍を直ちに新鄭に向かわせるべきだと進言する。

計画通り、秦軍は李信を総大将として韓に侵攻する。韓王安は楚、趙、魏の支援を得て兵を起こすが、秦の策略に嵌められ、孤立無援となる。南陽では寧騰(ねいてい)が兵を起こし、秦に寝返る。張讓(ちょうじょう)は敗走し、韓王安は降伏を余儀なくされる。

紀元前230年、韓王安の降伏文書と韓の地図、国璽が咸陽の章台殿に届けられる。秦は韓を正式に併合し、潁川郡を設置する。こうして、戦国七雄の一つである韓国は歴史の舞台から姿を消す。

この戦いで、関東の諸国は震え上がり、秦に対抗する策を練り始める。秦は六国の統一を目指し、歴史の車輪は止められない。韓非は亡くなったが、彼の思想は星のように輝き続け、後世の法治の道を照らし、中華文明の宝として永遠に語り継がれることになる。

第69話感想

第69話は、韓非の死と韓国の滅亡という、戦国時代の大きな転換点を描いた重要なエピソードでした。韓非の最期は、彼の思想の偉大さと悲劇性を同時に感じさせるものでした。彼が書き上げた『韓非子(かんぴし)』は、後世の法治思想に大きな影響を与えましたが、その本人がこのような形で命を落とすのは、非常に残念です。

李斯は、韓非の死を目の当たりにして、大きな衝撃を受けます。彼は韓非の才能を認めながらも、秦の統一という大義のために彼を犠牲にしたことに、罪悪感を抱きます。李斯の葛藤は、秦の統一という歴史の必然性と、個人の命の尊厳との間の矛盾を象徴しています。

韓国の滅亡は、戦国時代の終焉を告げるものでした。韓非の思想は、秦の統一に利用された側面もありますが、その本質は、法治に基づいた平和な社会の実現を目指すものでした。韓非の死は、この理想が達成されることなく、戦乱の世が続くことを暗示しています。

つづく