花の告発~煙雨に仇討つ九義人~ 第19話 あらすじ/ネタバレ

軽快な足取りで煙雨繡楼に戻ってきた呉廉(ごれん)は、失われたと思われていた落梅図が戻っていることに驚き、複雑な思いに駆られます。その絵は、精巧な刺繍(ししゅう)技術だけでなく、彼と陳映雪(ちんえいせつ)姨娘との言葉にできない感情を秘めていました。幼い頃の記憶が蘇り、姨娘と過ごした穏やかな日々が、彼の心の永遠の安らぎの場所となります。

当時の呉家では、主君と夫人の喧嘩(けんか)声が後宅の静けさを破ることが多く、幼い呉廉(ごれん)はただ無力に傍観するばかりでした。そんな時、彼は陳映雪(ちんえいせつ)姨娘という心の拠り所を見つけます。彼女のそばでは、時間がゆっくりと流れ、刺繍(ししゅう)の針の音と優しい歌声が織り成す旋律が、呉廉(ごれん)を外部の喧騒から解放してくれました。陳映雪(ちんえいせつ)は彼に温もりを与えてくれるだけでなく、梅花の気高さや強靭さを教えました。その美に対する追求は、呉廉(ごれん)の心に静かに芽生えていきます。

ある日、呉廉(ごれん)は母親と一緒に帳簿の確認に出かけますが、染物屋で知ってはいけない秘密を目撃してしまいます。帰宅後、父親から問いただされても、彼は口を閉ざし、嘘で真実を隠してしまいます。しかし、内なる葛藤は彼を落ち著かせず、彼は陳映雪(ちんえいせつ)の部屋へ行き、刺繍(ししゅう)布と針で慰めを求めます。陳映雪(ちんえいせつ)は心配しながらも、彼の執念を理解し、このことを漏らさないようにと繰り返し忠告します。

呉廉の刺繍(ししゅう)技術は日ごとに上達していきますが、そのため家族から非難されることもありました。ある日、彼の刺繍(ししゅう)作品は兄たちに庭に捨てられ、激怒した父親は彼に重い罰を与え、陳映雪もその罰を免れませんでした。夜が更け、呉廉は怪我をした姨娘の様子を伺いに忍び寄ると、彼女の顔の傷跡を見て、自責の念と苦痛に苛まれます。陳映雪の慰めと励ましは、彼がこれまでとは違う道を歩む決意をさらに固めることになります。

小娘のために資金を集めようと、呉廉は愛する玉佩を質に入れますが、悲劇を防ぐことはできませんでした。陳映雪の死は、呉廉の世界を崩壊させる晴天の霹靂でした。彼は絶望の中、新しい道を見つけ、家を出て刺繍を学ぶことを決意し、一流の刺繍師になることを誓います。歳月が流れ、呉廉の努力によって煙雨繡楼は徐々に名を馳せ、淮州(わいしゅう)城の富豪である章(しょう)家の注目を集めるようになります。

呉廉と章榕児(しょうようじ)の結婚は、一見門当戸対に見えますが、実は波乱含みです。彼は章榕児(しょうようじ)を大切にしていますが、身体的な接触に関しては距離を置き、さらには拒絶するような態度をとっています。この異常な行動は、呉廉が女弟子を募集することにつながります。章榕児(しょうようじ)は疑問を感じながらも、彼の準備を全力でサポートします。若い女性たちが繡楼に押し寄せると、呉廉の心には一つの思いが浮かびます。それは、この落梅図を起点に、陳映雪との不朽の友情を記念した、後世に語り継がれる煙雨繡を刺繍することです。

繡楼が大きくなるにつれ、呉廉の野心も膨らんでいきます。彼は単一の作品に満足するのではなく、繡楼の力を結集して、世の中を震撼させるような煙雨繡を作り出そうとします。これは単に技術の追求ではなく、過ぎ去った時間への深い愛情の告白でもあります。刺繍布には、陳映雪への思いと敬意が込められ、彼が無邪気な少年から刺繍の達人へと成長するまでの苦労が刻まれています。

第19話の感想

第19話は、呉廉の心の葛藤と成長が描かれた、非常に印象的なエピソードでした。失われた落梅図の出現、陳映雪との思い出、そして刺繍に対する情熱が複雑に絡み合い、彼の揺れ動く心情が丁寧に表現されています。

特に、陳映雪の死は、呉廉にとって大きな転機となりました。彼女の死をきっかけに、彼は家を出る決意をし、刺繍の道を本格的に歩み始めます。刺繍への情熱は、陳映雪との約束であり、彼女への追悼の気持ちの表れでもあるのでしょう。

また、章榕児(しょうようじ)との結婚は、呉廉にとって新たな人生の始まりを意味します。門当戸対の結婚ではありますが、呉廉の心は依然として陳映雪に向けられています。章榕児(しょうようじ)との関係は、今後どのように発展していくのか、注目されます。

つづく