斛珠夫人~真珠の涙~ 第12話 あらすじ/ネタバレ

黄泉営に到着した海市(かいし)は、休む間もなく新兵の訓練に身を投じた。毎日早起きして遅くまで働き続け、肩の旧傷を悪化させ、さらに新しい傷まで負ってしまう。哨子が方鑑明(ほうかんめい)に報告すると、表面上は冷静を装っているものの、心の中では心配を隠せない様子だった。

方卓英(ほうたくえい)は黄泉営に急いで駆けつけると、海市(かいし)が自分の体を顧みずに訓練している姿を見る。怒りと心配を募らせた方卓英(ほうたくえい)は、海市(かいし)を帳幕に連れ込み叱責する。そして、自分たちは師弟の関係ではあるが、実の親子のように情が深い。今後も方鑑明(ほうかんめい)に仕えて忠義を尽くすのだから、わざわざ黄泉関で苦しむ必要はないと言う。

海市(かいし)は納得できず、方鑑明(ほうかんめい)を「父親」と認めることを拒否する。しかし、方卓英(ほうたくえい)は海市(かいし)の言葉を誤解し、彼女を厳しく叱責して去ってしまう。その夜、海市(かいし)は自分が海底に沈んでいく夢を見る。ぼんやりと人影が揺れているのが見え、目を覚ますと、方鑑明(ほうかんめい)がベッドの横に立っていた。そして、朦朧とした意識の中で愛の言葉を口にし、苦しみながらも執着する。

翌朝、海市(かいし)はベッドの横に粥が置かれているのを見て、昨夜方鑑明(ほうかんめい)が来たのかと錯覚する。張軍侯は海市(かいし)の怪我を気遣い、翌日には北上すること、そのため今日は休暇を与え、兵士たちは家族に別れを告げられると告げる。天啓城と黄泉関は遠く離れているため、今回別れたら次はいつ会えるかわからないからだ。

海市(かいし)は熟考の末、霽風館に戻ることを決意する。そして、方鑑明(ほうかんめい)と室内で将棋を指しながら、自分の感情が他の者とは違うことを認める。もし方鑑明(ほうかんめい)がもう一歩踏み込んだら、言ってはいけないことを言ってしまい、してはいけないことをしてしまうかもしれない。そのため、一生関外に隠れて、都には戻れないと言う。

一方、李医官は帝旭(ていそく)にテイ蘭の容体を報告する。テイ蘭は怪我をした手にもかかわらず、彫刻を続けようとしている。薬を塗っていても、休養しなければ悪化する一方であり、廃人になってしまうかもしれないと言う。帝旭(ていそく)は少し躊躇した後、南宫を訪ねて様子を見に行く。しかし、実際には想像以上に深刻な状況だった。帝旭(ていそく)はテイ蘭を気遣うつもりだったが、テイ蘭は反射的に抵抗し、帝旭(ていそく)の手のひらに彫刻刀で傷をつけてしまう。

帝旭(ていそく)は激怒し、テイ蘭は誰かに唆されたに違いないと判断し、侍女2人を引きずり出して杖殺すよう命じる。テイ蘭は慌てて侍女をかばい、帝旭(ていそく)に贈り物をしたいと申し出る。そして、自分が彫刻した龍尾神のお守りを取り出し、大徵に来た当初は恨みを抱いていたが、今は帝旭(ていそく)の置かれた立場と孤独を理解しているため、この龍尾神と紫簪(しさん)の龍尾神を一緒に置いてほしいと話す。

テイ蘭の言葉に心を動かされた帝旭(ていそく)は、それ以上咎めることはせず、禁を解いて穆德慶にテイ蘭と侍女たちを愈安宮に送るよう命じる。一方、方鑑明(ほうかんめい)は棋盤に一手を打って海市(かいし)の言葉を遮り、彼女が悲しんで立ち去るまで何も言わず、ようやく安堵して、手のひらに浮かび上がった血痕を黙って見つめる。

施内宮が官服を持ってくると、方卓英(ほうたくえい)はそれを嬉しそうに眺め、柘榴(しゃりゅう)(しゃりゅう)が官服を縫うために苦労していることを知って、思わず取り乱しそうになる。海市(かいし)はそれを察して咳払いをして兄に注意し、施内宮たちが去った後、好きな人がいるなら勇敢に手に入れるべきだと暗示するが、方卓英(ほうたくえい)は真意を理解していない。

方鑑明(ほうかんめい)は公務で忙しく、夜には戻れないため、海市(かいし)に昭明宮に泊まり、自分の部屋で過ごすように言う。部屋の様子を見回した海市(かいし)はますます寂しくなり、一人枕を抱いて方鑑明(ほうかんめい)のすべてを感じようとする。しかし、方鑑明(ほうかんめい)がこの気持ちに応えられないのは、彼がもともと不自由な体であり、生まれつき大徵に尽くす運命にあるためだと彼女は知らない。

かつて儀(ぎ)王は逆賊を名乗って反乱を起こし、宗室を虐殺し、民衆を鞭打ち、忠臣を殺害した。太子伯曜は国と共に滅びると宣言し、梁に殉じた。方鑑明(ほうかんめい)と帝旭(ていそく)は頼るものがなく、家国の危機を救うために全力を尽くし、血を流しながら戦った。その果てしない道のりの中で、帝旭(ていそく)と紫簪(しさん)は方鑑明(ほうかんめい)にとって唯一の同志だったが、方(ほう)家の災難によって彼は一時的に衝動に駆られ、包囲を早めたことで、紫簪(しさん)を死なせ、帝旭(ていそく)を命の危機に陥らせてしまった。

軍の士気を維持し、事態が再び悪化するのを防ぎ、これまでの努力を無駄にしないために、方鑑明(ほうかんめい)は帝旭(ていそく)の柏奚になることを決意した。これにより、帝旭(ていそく)の運命と一体となり、苦しみや不幸はすべて彼が引き受けることになる。海市(かいし)に出会っていなければ、方鑑明(ほうかんめい)はこのまま寂しい人生を送っていたかもしれないが、彼女のおかげで、後悔はないが、心残りがあることをより深く理解するようになった。

一夜も眠れなかった海市(かいし)は、ようやく朝を迎え、着替えて新しい官服を着る。海市(かいし)は子供の頃から簡素な服装をしていたため、このような重厚で複雑な礼服を着るのは少し難しい。方鑑明(ほうかんめい)が部屋に入ってきたときも、相変わらず鏡のように冷たい表情をしていたが、海市(かいし)の後ろに回り込んで、袍の紐を結び、鎧を整え、髪を結い上げ、冠をかぶせてくれた。2人の間には、言葉にできない深い愛情が流れていた。

卯の刻三刻になると、入営した新兵全員が朱雀門に集合しなければならなくなる。別れ際、海市(かいし)は指輪を方鑑明(ほうかんめい)に返し、方鑑明(ほうかんめい)は自ら祃儀を行い、城壁から見送る。そして、軍隊は順序正しく天啓を離れ、10里先まで甲冑の音が響き渡る。

帝旭(ていそく)は一人内閣に座り、紫簪(しさん)の位牌に向かって孤独を訴える。テイ蘭は彼女と同じ顔をしているのに、2人の性格は全く違う。紫簪(しさん)が生きていたら、帝旭(ていそく)に頑張り続けるように言うだろうが、彼は宮中の寒さが怖い。だからこそ、帝旭(ていそく)と方鑑明(ほうかんめい)は閣楼に立って懐古にふけっている。幸いなことに、2人は互いに支え合っているので、安心している。

第12話の感想

第12話は、海市(かいし)と方鑑明(ほうかんめい)の複雑な関係がさらに深掘りされ、切ない展開が続きました。

海市(かいし)の葛藤

海市(かいし)は、方鑑明(ほうかんめい)への愛を自覚しながらも、師弟の関係を超えることはできないという葛藤に苦しんでいます。黄泉営での過酷な訓練や、方卓英(ほうたくえい)との会話、方鑑明(ほうかんめい)との将棋を通して、彼女の揺れ動く心情が丁寧に描かれていました。

方鑑明(ほうかんめい)的決意

方鑑明(ほうかんめい)は、海市(かいし)への愛を認めたものの、自分の使命のためにその気持ちを押し殺す決意をします。かつて犯した過ちへの贖罪と、大徵への忠義の狭間で苦悩する姿が印象的でした。

テイ蘭の成長

テイ蘭は、帝旭(ていそく)への理解を深め、自分なりの方法で彼を支えようとします。彫刻刀で帝旭(ていそく)を傷つけたことは衝動的な行動でしたが、その後の謝罪と贈り物は、彼女の成長を感じさせました。

帝旭(ていそく)の孤独

帝旭(ていそく)は、紫簪(しさん)の死後もなお孤独と向き合っています。テイ蘭の存在は、紫簪(しさん)の面影を感じさせますが、2人の性格の違いに戸惑いを感じている様子が伺えました。

見どころ

  • 海市(かいし)と方鑑明(ほうかんめい)の将棋のシーン。言葉にできない想いが込められた、切ないやりとりが印象的です。
  • 方鑑明(ほうかんめい)の過去が明らかになるシーン。彼の決意の背景が理解でき、より一層共感できるようになります。
  • テイ蘭が帝旭(ていそく)に贈り物をするシーン。彼女の成長と、帝旭(ていそく)への想いが伝わってくるシーンです。

つづく