風起花抄~宮廷に咲く瑠璃(るり)色の恋~ 第1話 あらすじ/ネタバレ

唐の太宗、貞観の世。 国都・長安の繁栄と民の安寧は、太平盛世を映し出すかのよう。その賑わいの中、巧みな衣作りで評判の如意夾纈店がある。店主の安四郎(あんしろう)と姉の安氏(あんし)は、この老舗を切り盛りし、穏やかな日々を送っていた。

ある日、宮中から武元華(ぶげんか)が才人に選ばれ、入宮することが告げられる。母娘は喜び勇み、如意夾纈店を訪れ、身分を表す入宮用の吉服を仕立ててもらうことに。その様子を、屏風の陰から少女・瑠璃(るり)が覗いていた。彼女の瞳には、未知の世界への好奇心と憧れが輝いていた。

一方、安氏(あんし)は「皇宮」という言葉を聞いて、複雑な思いに駆られる。かつて彼女は、皇宮の尚服(しょうふく)局で最高峰の刺繍師として「天下第一針」と称えられていた。しかし、宮中の権力争いに嫌気がさし、公孫皇太后の恩赦を得て幼い瑠璃(るり)と共に隠居し、静かに暮らしていたのだ。

同じ頃、尚服(しょうふく)局では波乱が起きていた。尚服(しょうふく)局の頭領である林尚服(りんしょうふく)は、厳格さと権力誌向で知られ、下々の刺繍師たちを叱責してはばからなかった。楊妃(ようひ)が皇后に冊封されることを知った彼女は、過去の冷遇が禍根になるのではないかと焦り、誠意を示すために自ら衣を届けて和解を図ろうとする。

安氏(あんし)の唯一の弟子である卓錦娘(たくきんじょう)は、師匠が隠居したことで尚服(しょうふく)局で苦闘を強いられていた。そこで、彼女は林尚服(りんしょうふく)に封后の袆衣を準備することを提案し、自らその任を請け負うことで、再び認められようと目論む。

しかし、卓錦娘(たくきんじょう)の刺繍技術は林尚服(りんしょうふく)の認めるところではなく、袆衣を安氏(あんし)に修正してもらうように命じられる。苦労の末、安氏(あんし)の隠れ家を見つけ出した卓錦娘(たくきんじょう)は、袆衣を持って懇願する。宮廷のドロドロを知り尽くしている安氏(あんし)は、再び関わることを拒否するが、卓錦娘(たくきんじょう)が瑠璃(るり)の安危を盾に迫ったため、渋々承諾する。ただし、母娘の行方を明かさないことを条件に。別れ際、卓錦娘(たくきんじょう)は欲に駆られ、安氏(あんし)の金針を奪い取って刺繍界での地位を固めようと企むが、安氏(あんし)に厳しく拒否される。

一方、少年の書生・裴行倹(はいこうけん)は、知識への渇望と英雄への憧れを抱き、進京試験を受けるために旅をしていた。都の門で、大将軍の蘇定方(そていほう)が帰京する場面に遭遇し、興奮した裴行倹(はいこうけん)は寺まで追いかけ、弟子入りを懇願する。蘇定方(そていほう)は、裴行倹(はいこうけん)を一瞥しただけでは認めず、射箭で彼の才能を試す。偶然にも、裴行倹(はいこうけん)は椿の木に掛けられた手帕を射抜いた。その手帕は、瑠璃(るり)が刺繍したものだった。蘇定方(そていほう)は最初は裴行倹(はいこうけん)を虚勢を張っているだけだと考えたが、住職の推薦もあり、真剣に検討すると約束する。

瑠璃(るり)は刺繍への情熱と才能から、再び安氏(あんし)の部屋に忍び込み、金針を盗んで練習を続けようとする。しかし、安氏(あんし)に見つかってしまい、母親の厳しい叱責に涙を流す。瑠璃(るり)は安氏(あんし)の苦しみを理解できず、なぜ刺繍を許してくれないのかと問う。安氏(あんし)は娘の器用な手を見つめ、複雑な思いに駆られる。宮廷の残酷さを知り尽くしている彼女は、瑠璃(るり)が同じ道を歩むことを望んでいなかったのだ。

第1話の感想

第1話は、華やかな唐の都・長安を舞台に、様々な人間の思惑が交錯する物語の序章として、見応えのある内容でした。

主人公の瑠璃(るり)は、刺繍への情熱と才能を持ちながらも、母親の安氏から宮廷への関与を禁じられています。その理由は、安氏がかつて皇宮の尚服(しょうふく)局で苦い経験をしたからでした。しかし、瑠璃(るり)は刺繍への憧れを捨てきれず、金針を盗み出そうとするなど、仮抗的な態度を見せます。

一方、尚服(しょうふく)局では、林尚服(りんしょうふく)と卓錦娘(たくきんじょう)の権力争いが繰り広げられています。林尚服(りんしょうふく)は厳格で権力誌向が強く、卓錦娘(たくきんじょう)は師匠の安氏に代わって地位を確立しようと躍起になっています。

また、裴行倹(はいこうけん)という少年の書生が登場し、大将軍の蘇定方(そていほう)に弟子入りを懇願する場面も印象的でした。裴行倹(はいこうけん)の才能を見抜いた蘇定方(そていほう)は、彼を弟子として受け入れることを約束します。

つづく