あらすじ

第三十二話は、高貴妃こうきひの悲劇的な最期を描いています。華やかな「万紫千紅ばんしせんこう」の演目を楽しんでいた高貴妃こうきひでしたが、仕掛けられた火花によって大火傷を負ってしまいます。これは事故ではなく、陰謀によるものでした。

嫻妃かんひは、この事件の真相を暴きます。魏瓔珞ぎえいらくが用意した溶けた鉄の中に、嫻妃かんひが「金汁」を混入していたのです。高貴妃こうきひは火傷の痛みだけでなく、傷口の感染という二重の苦しみを味わうことになります。死が避けられないことを悟った高貴妃こうきひは、皇帝の心の中に美しいままの自分を留めておきたいという思いから、自らの手で命を絶つ道を選びます。

皇帝は高貴妃こうきひの死に深い悲しみと罪悪感を抱き、嫻妃かんひは復讐を果たしたことに満足します。

ネタバレ

高貴妃こうきひは皇帝の気を引くため、華やかな花火を使った万紫千紅ばんしせんこうの芸を披露しました。嫻妃かんひも同席し、皆が見守る中、美しい花火が夜空を彩りました。しかし、仕掛けられた花火によって高貴妃こうきひは火傷を負い、騒然となります。嫻妃かんひはとっさに皇帝をかばい、自身も軽い火傷を負いました。

皇帝は刺客を疑い、捜索を命じます。袁春望えんしゅんぼうが怪しいと睨んだ海蘭察ハイランチャは彼を追跡しますが、証拠は見つかりません。魏瓔珞ぎえいらくの住まいも捜索されますが、こちらも何も見つかりませんでした。高貴妃こうきひは火傷の痛みと、跡が残ることを恐れ、治療を拒否します。皇帝は仕方なく、無理やり薬を塗らせます。葉天士ようてんしの診察で、火傷の原因は鉄水ではなく、金汁だと判明します。

袁春望えんしゅんぼう魏瓔珞ぎえいらくの関与を疑いますが、彼女は否定します。皇帝をかばった嫻妃かんひは、軽い火傷にも関わらず、皇帝の同情を集めます。皇帝は嫻妃かんひに、金汁による火傷は悪意に満ちていると語ります。嫻妃かんひは内心でほくそ笑みます。全ては彼女の計画通りだったのです。

高貴妃こうきひの容態は悪化し、葉天士ようてんしも手の施しようがありません。跡が残ることを恐れる高貴妃こうきひは絶望します。嫻妃かんひ高貴妃こうきひを見舞い、わざと傷跡が残ることを告げ、彼女をさらに追い詰めます。

全てを掌握した嫻妃かんひは、弱り切った高貴妃こうきひに、鉄水に金汁を混ぜたのは自分だと明かします。長年積もり積もった恨みを吐き出し、皇帝に訴えても無駄だと高貴妃こうきひを脅します。高貴妃こうきひは精神的に崩壊し、皇帝に愛想を尽かされる未来を悟ります。せめて美しい姿で皇帝の記憶に残りたいと願った高貴妃こうきひは、最後の舞を披露し、息絶えます。最期の願いとして、母の墓を祖墳に入れることを皇帝に懇願します。

兄の高大人こうたいじんが見舞いに来ますが、高貴妃こうきひは面会を拒否します。美しい衣装を身につけ、愛の歌を歌い、自らの手で命を絶ちました。駆けつけた高大人こうたいじんは、変わり果てた妹の姿を目にします。高貴妃こうきひの死を知った皇帝は、罪悪感と悲しみに苛まれ、彼女を追封します。嫻妃かんひは計画の成功に満足げな笑みを浮かべます。しかし、後宮の権力争いと復讐の連鎖は、まだ終わる気配がありません。

第32話の感想

第32話は、高貴妃こうきひの悲劇的な最期と嫻妃かんひの冷酷な策略が描かれた、非常に印象的な回でした。高貴妃こうきひはプライドが高く、時に傲慢な振る舞いもありましたが、最期に見せた弱さや皇帝への深い愛情、そして母の願いを葉えたいという純粋な思いは、彼女の人間性を改めて浮き彫りにしました。華やかな衣装と歌声、そして最後の舞は、彼女の誇り高く、美しい人生の終焉を象徴しているようで、見ていて胸が締め付けられました。

一方、嫻妃かんひの策略は驚くほど緻密で冷酷でした。高貴妃こうきひの精神状態を巧みに操り、自滅へと追い込む様は、彼女の恐ろしさを改めて感じさせます。皇帝をかばって軽い火傷を負うことで同情を集め、自分の立場を有利にする計算高さも恐ろしいです。高貴妃こうきひへの長年の恨みを晴らした嫻妃かんひですが、その表情には達成感よりも、底知れぬ闇が見え隠れしていました。

つづく