あらすじ
第五十七話は、皇帝が母上の最期の言葉が綴られた手紙によって、太后に疑念を抱く様子を描いています。太后が自らの母上の死に関係しているのではないかと疑い始めたのです。
この機に二番目の皇后は、皇帝と太后の仲を裂こうと画策します。太后こそが皇帝の母上を亡き者にした張本人であるかのように仄めかし、様々な計略を用いて皇帝の疑念を煽り立てていきました。
太后は心労が重なり病に伏してしまいますが、皇帝は見舞いにも訪れません。二番目の皇后はこの状況を利用し、表向きは看病するふりをして太后に近づき、陰では復讐の機会と捉えて冷酷な仕打ちを続けます。ついに太后は感情の激昂から卒倒し、倒れてしまいました。
一方、魏瓔珞は太后を守るため、密かに名医・葉天士を呼び寄せ治療にあたらせます。
事の真相を知った皇帝は、自分が太后を誤解していたことに気づき、慌てて太后に許しを請います。しかし、太后は既に円明園へ療養に行くことを決めていました。
この回は、宮廷内の複雑な権力争いと登場人物たちの愛憎劇を鮮やかに描き出しています。
ネタバレ
太后は皇帝に、彼の生母が臨終の間際に自分の手を握り、皇帝の事を頼んだと明かしました。皇帝の表情は少し和らぎましたが、自ら調査すると告げて立ち去りました。太后は心配顔で、魏瓔珞は皇帝は孝子だから大丈夫だと慰めました。しかし太后は、手紙一通で皇帝がここまで怒るのはおかしいと考え、手紙の内容はきっと簡単ではないだろうと推測し、真相が明らかになる事を願いました。
自分の出生に疑問を抱き、誰にも相談できない皇帝は、二番目の皇后に慰めを求めました。実はこの手紙は、太后と皇帝の仲を引き裂くため、二番目の皇后がわざと漏らしたものでした。彼女は理解のあるふりをしながら皇帝を慰め、太后が生母の死に関わっているのではないかとそれとなく闇示しました。皇帝は二番目の皇后の言葉に揺らぎ、太后への疑念を抱き始めました。
海蘭察は皇帝に、調査の結果、皇帝の生母の親族が絵を送った役人だと報告しました。皇帝はその役人に会うことにしましたがお役人は落馬で死亡したという知らせが届きました。この一連の出来事で、皇帝は太后が事実を隠蔽し、口封じまでしているのだと確信しました。
心配しすぎた太后は病に倒れました。皇帝は珍しく見舞いにも来ず、代わりに二番目の皇后が看病に来ました。二番目の皇后は内心では太后を憎んでいましたが、表面上は非常に敬意を表していました。太后は全て二番目の皇后の仕業だと気づき、怒って手に持っていた茶碗を叩きつけました。二番目の皇后はその隙に、太後の甥が汚職で捕まり、死罪は免れないだろうと告げました。太后は二番目の皇后の復讐だと理解し、自分がかつて二番目の皇后の父を賜死したのは国のためだと仮論し、二番目の皇后こそ公私混同だと非難しました。二番目の皇后は仮省するどころか、恨みをぶちまけ、太后は怒りで卒倒しました。
魏瓔珞が太后を支えるのを見て、二番目の皇后は勝ち誇ったように、太後の最後の頼みも消えたと呟きました。侍女は皇帝が太后を案じ、二番目の皇后を罰するのではないかと心配しましたが、二番目の皇后は意に介さず、袁春望に合図を送り、邪魔な張侍医を始末するよう指示しました。太后は魏瓔珞に張侍医を信用していないと密かに告げ、魏瓔珞は葉天士を女装させて宮中に呼び、太后の診察をさせました。
葉天士は張侍医の処方箋を見て、このままでは太後の病状が悪化すると指摘し、新しい薬を処方しました。太後の侍女は魏瓔珞にこの場を離れるよう勧めましたが、魏瓔珞は太后への恩義を忘れず、太后を守ると決意しました。延禧宮に戻ると慶貴人が訪ねてきて、薬の処方箋を渡しました。慶貴人は納蘭淳雪に仕えていましたが、良心の呵責を感じ、自分の将来のためにも魏瓔珞に協力することにしました。魏瓔珞は慶貴人の誠意に心を打たれ、彼女の出世を助けることを申し出ました。
太后が生母を死に追いやったと思い込んだ皇帝は、毎日落ち込んでいました。しかし、長年の母子の情から、太后が危篤だと聞くと寿康宮へ駆けつけました。皇帝は太后と直接話そうとしましたが、太后は会おうとせず、慶貴人に貞節を守る女性の話を通してメッセージを伝えるように指示しました。慶貴人はその話を通して、皇帝の生母が先帝を守るために追いはらわれ行方不明になった経緯を説明しました。皇帝の生母が殺害されたにしろ辱めを受けたにしろ、皇室のスキャンダルになるため、太后は今まで黙っていたのです。そして皇帝に王大人に確認するよう勧めました。
皇帝は王大人に当時の事を尋ねましたが、王大人の話は太后の話と食い違っており、皇帝は再び太后に騙されたと激怒しました。皇帝は王大人に真実を明かすよう迫り、もう騙されたままでは生きていけないと訴えました。王大人は心を動かされ、皇帝の生母が先帝を守るために名誉を傷つけられ、最終的に先帝に賜死されたことを認めました。真相を知った皇帝は太后を誤解していたことに気づき、すぐに謝罪に向かいました。しかし、太后は既に魏瓔珞と共に療養のため宮を出ていました。慶貴人は皇帝に、当時の先帝の苦しい立場を理解するよう諭しました。皇帝は跪いて太后の帰還を懇願しましたが、太后は円明園で静養すると言い張りました。
第57話の感想
第57話は、陰謀と誤解が複雑に絡み合い、登場人物たちの感情が激しく揺れ動く、非常にドラマチックな展開でした。二番目の皇后の狡猾な策略によって、皇帝と太後の間には深い溝ができてしまい、見ているこちらも胸が締め付けられる思いでした。
特に印象的だったのは、皇帝の苦悩です。生母の死の真相を求め、真実を知りたいと願う一方で、太后への疑念に苦しみ、揺れ動く姿は、彼の繊細な内面を如実に表していました。二番目の皇后の巧みな言葉に翻弄され、真実から遠ざかっていく様子は、見ていて歯がゆい思いでした。
また、太後の毅然とした態度も印象に残りました。二番目の皇后の挑発にも屈せず、自らの信念を貫き通す姿は、まさに「太后」としての威厳を感じさせました。病に倒れながらも、皇帝の誤解を解こうと、慶貴人を使いメッセージを伝えるシーンは、彼女の深い愛情と知略を感じさせる感動的な場面でした。
魏瓔珞は、今回も太後の忠実な味方として活躍しました。葉天士を呼び寄せ、太後の治療にあたらせる機転や、慶貴人の申し出を受け入れる懐の深さなど、彼女の聡明さが際立っていました。
つづく