『霜花(しもばな)の姫 ~香蜜が咲かせし愛~』第28話 あらすじ/ネタバレ

北苑山荘の一角で、錦覓(きんべき)は目を輝かせながら、語部の口から語られる熠王(えきおう)の赫々たる戦功に聞き入っていた。しかし、その中には誤った記述が混じっていた。錦覓(きんべき)は思わず言葉を挟み、熠王(えきおう)の真の勇姿を生き生きと描写した。その細やかな描写は、まるで目の前で見ているかのような臨場感があり、周囲の聴衆は驚きと感嘆の声を上げ、拍手喝採が鳴り響いた。羌活(きょうかつ)は、錦覓(きんべき)がなぜそんなに詳しく知っているのかと疑問に思ったが、錦覓(きんべき)は微笑んで答えず、心の中では旭鳳(きょくほう)と過ごした秘密の時間を思い浮かべていた。熠王(えきおう)の勇猛な物語は、旭鳳(きょくほう)に付き合って芝居をしている時に、何度もせがんで聞かされていたものだった。

夜が訪れ、錦覓(きんべき)が北苑山荘に足を踏み入れると、秦潼(しんとう)に急かされて旭鳳(きょくほう)の寝殿へと案内された。殿内では、旭鳳(きょくほう)が錦覓(きんべき)と一緒に鳳凰灯を作ろうと、意気揚々と提案していた。二人は深夜まで作業に没頭し、出来上がった鳳凰灯は少し拙いながらも、温かさと楽しさに満ちていた。さらに嬉しいことに、旭鳳(きょくほう)は庭いっぱいに鳳凰灯をプレゼントとして用意しており、一つ一つの灯が錦覓(きんべき)への想いを輝かせていた。錦覓(きんべき)は、その華やかな光景に心を躍らせながらも、理智的に自分に溺れてはいけないと自分に言い聞かせた。そして、最終的には口実を作って、少し名残惜しい気持ちを抱えながらその場を後にした。

一方、穂禾(すいか)は旭鳳(きょくほう)が錦覓(きんべき)のためにしたことを知り、怒りに震えていた。その時、奇鳶 (きえん)が現れ、秘術を使って穂禾(すいか)に天界での記憶を蘇らせた。そのことで、穂禾(すいか)の怒りはさらに増し、錦覓(きんべき)を排除しようと決意した。穂禾(すいか)は南平侯(なんぺいこう)に圧力をかけ、自分と旭鳳(きょくほう)の婚期を早めるように要求した。利益に目がくらんだ南平侯(なんぺいこう)は、彼女の要求を承諾した。

朝廷では、大臣たちの催促が相次ぎ、立太子から婚事まで、旭鳳(きょくほう)を悩ませていた。そんな中、錦覓(きんべき)が聖医族(せいいざく)への帰還を願い出る上奏を受け取り、旭鳳(きょくほう)の心はさらに重くなった。旭鳳(きょくほう)は酒に酔って憂さを晴らしていると、月下仙人が偶然彦佑(げんゆう)と出会った。彦佑(げんゆう)は誤魔化そうとしたが、二人は息の合った作戦を立て、旭鳳(きょくほう)と錦覓(きんべき)を助けることにした。

錦覓(きんべき)は、旭鳳(きょくほう)のそばにいると自分の感情が抑えられなくなると知り、離れる決意をした。しかし、運命のいたずらで、酔った旭鳳が彼女の寝殿に迷い込み、穂禾(すいか)との婚事に対する無力感と錦覓(きんべき)への本心を吐露した。彼は錦覓(きんべき)に新しい身分を与え、一生涯守ると約束した。錦覓(きんべき)は心の中で葛藤し、あらゆる理由をつけて断ろうとしたが、旭鳳は彼女の心痛そうな様子を見て、彼女の願いを拒否した。

羌活(きょうかつ)は、錦覓(きんべき)と熠王(えきおう)の関係に微妙な変化を感じ取り、聖医族(せいいざく)への帰還について探りを入れたが、錦覓(きんべき)は曖昧な返答で話題を変えようとした。羌活(きょうかつ)は疑念を抱きながらも、それ以上は追及せず、ただ黙って一杯のお茶を差し出して気遣いを示した。

一方、彦佑(げんゆう)は策略を巡らせて穂禾(すいか)を眠らせ、北苑山荘に連れて行った。そして、月下仙人の傀儡呪を使って、穂禾(すいか)に旭鳳の前で「自発的に」彦佑(げんゆう)との私情を告白させた。旭鳳は驚きながらも、それ以上に安堵を感じ、二人の関係を認めて穂禾(すいか)との婚約を破棄することを宣言した。

そして、遥か天界にいる潤玉(じゅんぎょく)は、省経閣の絵巻物の謎を追うために、自ら下界に降りて滅霊箭(めいれいせん)と霊火珠の手がかりを探ることにした。彼は鄺露(こうろ)を璇璣宮に置いて守り手とし、真実を探る旅に出た。この一連の出来事は、いつの間にか数人の運命をより緊密に結びつけ、愛、憎しみ、犠牲、救済に関する大掛かりなドラマの幕が静かに上がりつつあった。

第28話の感想

第28話は、愛と葛藤、陰謀と策略が複雑に絡み合い、物語が大きく動き出した回でした。

錦覓(きんべき)と旭鳳の恋は、ますます深まっていき、旭鳳は錦覓(きんべき)のために鳳凰灯をプレゼントしたり、新しい身分を与えて一生涯守ると約束したりと、深い愛情を示しました。しかし、錦覓(きんべき)は自分の感情を抑えきれず、旭鳳のもとを去ろうと決意します。二人の切ないやり取りは、見ていて胸が締め付けられる思いでした。

一方、穂禾(すいか)は彦佑(げんゆう)との私情を旭鳳に暴露され、婚約破棄となってしまいました。怒りと憎しみに燃える穂禾(すいか)は、錦覓(きんべき)への復讐を誓います。また、天界の潤玉(じゅんぎょく)も下界に降りてきて、滅霊箭(めいれいせん)と霊火珠の手がかりを探し始めました。

つづく