霜花(しもばな)の姫 ~香蜜が咲かせし愛~ 第62話 あらすじ/ネタバレ

幽玄な忘川のほとりで、旭鳳(きょくほう)は一人佇んでいた。錦覓(きんべき)の最期の言葉が夢のように心を蝕み、希望の象徴である蓬羽を風に放つとともに、残された生への執著も手放そうとしていた。

日夜、酒に溺れ、心の傷を麻痺させようとする旭鳳(きょくほう)。しかし、骨身に染みついた錦覓(きんべき)への想いは消えることなく、ただ苦しみが蔓延していくばかりだった。

そんな中、長芳主(ちょうほうしゅ)が魔界にやってきた。かつての威風堂々とした姿はどこにもなく、自責の念に駆られ、膝をついている旭鳳(きょくほう)の姿に心を痛める。二人は語り合い、長芳主(ちょうほうしゅ)は先花神(せんかしん)の遺言を果たせなかったことへの自責の念を吐露するとともに、隕丹の秘密と錦覓(きんべき)が情愛に疎い理由を明かす。

その真実を知った旭鳳(きょくほう)は、自分が錦覓(きんべき)の恋路の最大の障害であることに気づき、自責と後悔の念に押しつぶされそうになる。

絶望の中、旭鳳(きょくほう)は斗姆元君(とぼくげんくん)に救いを求める。斗姆元君(とぼくげんくん)は直接手を下すことはなかったが、禅語で錦覓(きんべき)のわずかな元霊が人間界に残っていることを示唆する。そのかすかな希望は、闇闇の中で輝く星のように旭鳳(きょくほう)の心を照らし出す。

彼はすぐに花界に知らせ、長芳主(ちょうほうしゅ)は錦覓(きんべき)の元霊を探すよう命じる。

しかし、運命は旭鳳(きょくほう)に試練を与える。忘川のほとりで、仮噬の苦しみによって意識が朦朧とした彼は、錦覓(きんべき)の笑顔が川面に浮かぶ幻影を見る。必死に手を伸ばそうとするが、それは泡のように消え、空虚と絶望だけが押し寄せる。

錦覓(きんべき)を探すため、旭鳳(きょくほう)は魔尊(まそん)の座を鎏英(りゅうえい)に譲り、長い旅に出る。人間界で錦覓(きんべき)と過ごした草屋に戻ると、そこには二人の思い出が詰まっていた。まるで錦覓(きんべき)がまだそこにいるかのように。

彼は各地を奔走し、何度も間違った人物に心を乱されながらも、決して諦めなかった。そして、彼はその小屋に住み、二度と戻ってこないかもしれない錦覓(きんべき)を待ち続けることを決意する。

一方、天界でも大きな変化が起きていた。天魔大戦を引き起こし、禁術を使用した潤玉(じゅんぎょく)は、天界を混乱に陥れ、自業自得で璇璣宮に幽閉される。太上老君(たいじょうろうくん)、太巳真人(たいししんじん)、破軍(はぐん)は赤霄剣(せきしょうけん)を携えて旭鳳(きょくほう)を訪れ、天界の安定のために天帝(てんてい)の位を継ぐよう懇願する。千の思いを抱えながらも、大局のために赤霄剣(せきしょうけん)を受け取った旭鳳(きょくほう)は、天界へと向かう。

璇璣宮で、かつての兄弟であり、今は囚われの身となった潤玉(じゅんぎょく)と対峙する旭鳳(きょくほう)。彼は潤玉(じゅんぎょく)の行いを問い詰め、潤玉(じゅんぎょく)は自分の過ちを認め、自らの命を絶つよう求める。激闘の末、旭鳳(きょくほう)は赤霄剣(せきしょうけん)で潤玉(じゅんぎょく)を刺し、窮奇(きゅうき)の力を解放する。同時に、二人の因縁も断ち切られた。彼は潤玉(じゅんぎょく)に、赤霄剣(せきしょうけん)の真の意味は殺戮ではなく守護にあること、そして自分には潤玉(じゅんぎょく)と争う気持ちはなく、ただ錦覓(きんべき)を愛していることだけを告げる。

そして、旭鳳は潤玉(じゅんぎょく)を解放し、心の安らぎを求める旅に出させる。そして、彼は思い出が詰まった小屋で、永遠に葉わないかもしれない奇跡、錦覓(きんべき)の帰りを待ち続ける。愛と救済の旅の中で、旭鳳は手放すこと、許すことを学び、真の愛と犠牲の意味を知った。

第62話の感想

第62話は、愛と喪失、そして再生を描いた感動的なエピソードでした。旭鳳の深い悲しみと絶望、そしてそこから立ち直っていく姿には心を打たれました。特に、長芳主(ちょうほうしゅ)との会話や斗姆元君(とぼくげんくん)の禅語は、旭鳳の心の変化を鮮やかに描き出していると思いました。

また、潤玉(じゅんぎょく)との対決シーンも印象的でした。二人はかつての兄弟でありながら、今では敵同士となってしまいました。しかし、旭鳳は潤玉(じゅんぎょく)を憎むことなく、むしろ彼の心の安らぎを願っている姿に、彼の成長を感じました。

つづく