第17話、冥王の娘、桑桑(そうそう)と寧缺(ねい・けつ)を乗せた馬車が姿を現すと、周囲は騒然となる。無数のカラスが馬車を覆い尽くし、荒人(こうじん)たちはひれ伏して桑桑(そうそう)を崇める。熊初墨、葉紅魚(よう・こうぎょ)、程立雪、羅克敵を始め、各国から集まった修行者たちは驚きを隠せず、「冥王の娘が現れた!」と口々に叫んだ。
荒人(こうじん)に支えられ、桑桑(そうそう)は静かに馬車から降りる。周囲の複雑な視線にも動じない。一方、寧缺(ねい・けつ)は魔宗の功法で姿を隠し、敵陣に奇襲を仕掛ける。西陵(せいりょう)の騎兵隊は不意を突かれ、次々と落馬。寧缺(ねい・けつ)はまるで幽霊のように山間を駆け抜け、敵は翻弄され、一方的に攻撃を受ける。
激怒した熊初墨は、桑桑(そうそう)を襲おうとする。その瞬間、寧缺(ねい・けつ)が神符の力で熊初墨の攻撃を防ぎ、桑桑(そうそう)を守った。しかし、戦闘が続くにつれ、桑桑(そうそう)の体内の寒気が悪化し、激しい咳に襲われ、体力が尽きかけていく。なぜ自分がこのような扱いを受けなければならないのか、桑桑(そうそう)は委屈と戸惑いを募らせる。怒りに駆られ、桑桑(そうそう)が天に向かって叫ぶと、天地は闇転し、激しい嵐が巻き起こる。寧缺(ねい・けつ)もその力に押し戻された。
永夜が訪れるかと思われたその時、桑桑(そうそう)は功法を止め、空は再び静けさを取り戻す。寧缺(ねい・けつ)は安堵するも、桑桑(そうそう)の悲しげな表情に胸を痛める。そして、桑桑(そうそう)を永遠に守ると誓う。
その時、熊初墨が再び襲いかかる。禅杖を振り回し、巨大な龍を召喚する。寧缺(ねい・けつ)は躊躇なく龍に飛びかかり、格闘を始める。龍の咆哮と共に天地は変動し、寧缺(ねい・けつ)は地面に叩きつけられる。
まさに危機一髪のその時、夫子(ふうし)が寧缺(ねい・けつ)の危機を感知し、時空を超えて駆けつける。剣聖柳白から剣を借り、龍と壮絶な戦いを繰り広げる。激しい攻防の後、天地は静まり、夫子(ふうし)と龍は共に姿を消す。熊初墨は内心でほくそ笑む。夫子(ふうし)の出現は、唐国討伐の大義名分を得るための策略だったのだ。
寧缺(ねい・けつ)は馬車の中で目を覚ます。傍らには夫子(ふうし)がいた。現実と夢の境目が曖昧な寧缺(ねい・けつ)に、夫子(ふうし)は厳しく「生きろ」と告げる。寧缺(ねい・けつ)は桑桑(そうそう)の無事を心配するが、夫子(ふうし)は直接的な答えを避けるものの、桑桑(そうそう)は冥王の娘ではなく、ただの桑桑(そうそう)であると強調する。
一行は再び旅を続ける。寧缺は夫子(ふうし)の不可解な行動に疑問を抱き、唐国の安危を案じる。夫子(ふうし)は唐の人々は安全な場所に避難させたと伝え、熱海へ向かうことを決める。道中、寧缺と桑桑(そうそう)の関係に微妙な変化が生じ、夫子(ふうし)は寧缺に天地輪廻の道理を説く。
一方、西陵(せいりょう)神殿は正式に唐国へ宣戦布告。隆慶も金帳王庭(きんちょうおうてい)の軍を率いて参戦する。唐国国境は危機に瀕し、李仲易は重甲騎兵を率いて前線へ増援に向かう。厳しい戦況の中、李仲易の勇敢な姿は夏のの尊敬を集める。しかし、勝利の代償は大きく、李仲易は重傷を負い、都へ戻り、心配する家族と再会する。
第17話の感想
第17話は、桑桑(そうそう)の持つ冥王の娘としての力がついに顕現し、物語が大きく動き出した重要な回でした。これまで静かに寧缺の傍らにいた桑桑(そうそう)ですが、その内に秘めた強大な力が解き放たれ、周囲の人々、そして寧缺自身にも大きな衝撃を与えます。
特に印象的だったのは、桑桑(そうそう)が天に向かって叫ぶシーンです。怒りと委屈、そして戸惑いが入り混じった彼女の叫びは、見る者の心を強く揺さぶります。同時に、彼女の持つ力があまりにも大きく、製御できないものであることが示唆され、今後の展開への不安を感じさせます。
寧缺は、そんな桑桑(そうそう)を必死に守ろうとしますが、彼の力だけではどうにもならない状況に追い込まれます。夫子(ふうし)の登場は、まさに deus ex machina であり、物語に新たな局面をもたらします。しかし、夫子(ふうし)の真意は未だ謎に包まれており、彼の行動が今後の物語にどのような影響を与えるのか、非常に気になるところです。
また、唐国と西陵(せいりょう)、金帳王庭(きんちょうおうてい)の三つ巴の戦いが本格的に開始され、物語はますます複雑化していきます。李仲易の勇敢な戦いぶりは感動的ですが、同時に戦争の残酷さも改めて感じさせられます。
つづく