あらすじ
第十九話は、寧缺と桑桑が夫子の導きのもと唐の都城に戻り、懐かしい老筆斎を訪れる場面から始まります。そこで夫子は、桑桑の出生の秘密、そして自らが天命に抗う決意を明かします。一方、驚神陣の安全を憂慮する李青山は、陣を守り抜くことを誓い、そして棋盤を通して永夜の到来を予感します。
夫子は寧缺と桑桑を山に連れて行き、人定勝天の理念を説き、ついに“冥王”と呼ばれる存在と対峙します。それは、世界を揺るがす決戦の始まりでした。陳皮皮や講経首座をはじめとする人々は、この戦いを感知し、祈りを捧げます。
そして、夫子と桑桑は天上で激突します。寧缺はそれを止める術もなく、ただただ悲嘆に暮れます。夫子の行動は天地に異変をもたらし、降り続く雪、そしてこの報せを受けた李仲易の倒臥へと繋がります。
ネタバレ
寧缺が都を一時的に離れる中、都の空気は張り詰めていた。何明池は、守る者のいない驚神陣の安否を気遣い、李青山は昊天道南門の名誉にかけて驚神陣を守ると誓う。それは唐(とうの防衛の要であり、まさに命綱だった。何明池は李青山から驚神陣の秘密を探ろうとするが、逆に警告を受ける。
一方、夫子は桑桑と寧缺を連れ、都へ帰還する。懐かしい景色を眺め、寧缺は感慨にふける。一行は老筆斎へ戻り、桑桑は大切な珠を握りしめ、どこか物憂げな表情を浮かべる。寧缺は火を起こし、食事の準備をしながら夫子に唐(とうの現状を尋ねる。夫子はかつて自分が唐(とうを真の無敵の境地に導けなかったことを認める。
君陌と李慢慢は夫子の帰還を感知し、安堵する。二人は余簾と共に老筆斎を訪れる。寧缺が用意した食事を囲み、和やかな時間が流れるが、夫子は桑桑と寧缺を連れ、再び出立する。残された料理は友人たちの胃袋を満たすことになる。
馬車の中で、夫子は桑桑と寧缺に、かつて酒徒と屠夫を探した時の話を聞かせる。「人定勝天」の真理を確かめるための旅だった。その頃、何明池と李青山は対局をしていた。いつもと違い、何明池は一子も譲らず、引き分けを提案する。そして李仲易の病状を気遣う言葉を口にする。李青山は驚き、何明池が去った後、一人で占う。結果は「永夜将至」。李青山は絶望に打ちひしがれる。
山頂に登った夫子は、迫り来る永夜を前に不安を抱く寧缺に、冥王など存在せず、法器が鎮めているのは人々の恐怖と幻想だと説く。桑桑の正体を知る寧缺には受け入れがたい言葉だった。夫子は光と闇について語り、絶対の光は絶対の闇であるとし、既に天と敵対し、桑桑と寧缺の未来のために戦う覚悟を決めていることを明かす。
知守観で異変を感じ取った陳皮皮。その時、桑桑が夫子に戦いを挑む。桑桑の中の冥王の力を既に知っていた夫子は、寧缺と桑桑を結婚させ、人間の世界を味わわせ、この世界への愛著を育もうとしていたのだ。空に異変が起こり、雷鳴が轟く。西陵の人々や修行者たちは、世紀の戦いが始まろうとしていることを察知する。
冥王の娘へと変貌した桑桑は天へ昇り、寧缺は後を追うが、ただ愛する者の戦いを見守ることしかできない。夫子は桑桑の中の冥王の力と戦う。陳皮皮は胸を痛め、講経首座は弟子たちと共に夫子の無事を祈る。寧缺は夫子と桑桑の名を叫ぶが、戦局を変えることはできず、悲しみのあまり砂漠に倒れる。
戦いが終わり、空に一瞬の光が走る。屠夫と酒徒は夫子の選択に戸惑い、惜しむ。書院の人々は星空を見上げ、夫子に祈りを捧げる。夫子が昇天した後、大雪が降り、大地を覆い尽くす。馬士襄は李仲易に夫子の死を伝える。李仲易は吐血し、昏倒する。唐(とうは悲しみと不安に包まれる。
第19話 感想
第19話は、まさに「将夜」のクライマックスと言える、息詰まる展開でした。永夜を前にした緊張感、そして夫子の覚悟、桑桑の運命、様々な感情が渦巻く濃密なエピソードでした。
特に印象的だったのは、夫子の壮絶な戦いです。天と敵対することを選び、愛弟子である寧缺と桑桑のために戦う姿は、まさに師の鑑と言えるでしょう。これまで穏やかで達観的な人物として描かれてきた夫子が、これほどまでに激しい感情を露わにするシーンは、見ているこちらも胸が締め付けられるようでした。そして、その戦いの結末は、あまりにも悲しく、そして美しく、深い余韻を残しました。
桑桑の冥王としての覚醒も、大きな見どころでした。これまで寧缺と共に穏やかな日々を送っていた彼女が、自らの運命を受け入れ、戦う姿は、彼女の成長と強さを改めて感じさせます。寧缺との別れを予感させるシーンは、涙なしでは見られませんでした。
また、李青山が永夜到来の予言を前に絶望するシーンも印象的です。これまで国を守るために尽力してきた彼の、無力感と恐怖がひしひしと伝わってきました。
つづく