漆黒の夜、朱雀(すざく)大通りを飛燕のように駆け抜ける寧缺(ねい・けつ)。灼熱の陣眼杵を握りしめ、陳某を追撃する。跳躍の度に城壁の磚が震え、都の天地元気が彼に集まり、陳某へと襲いかかる。しかし、底知れぬ力を持つ陳某は、再び寧缺(ねい・けつ)を地に叩き伏せる。何度も倒れながらも、寧缺(ねい・けつ)は諦めない。立ち上がり、決死の覚悟で再び立ち向かう。
一方、春風亭では、朝老太爺が静かに余生を送っていた。陳某の都城侵入を知り激怒した老太爺は、近隣の住民と共に外敵に立ち向かうことを決意する。激戦を繰り広げる寧缺(ねい・けつ)は、限界に達し、満身創痍の状態だった。その時、朝老太爺に率いられた民衆が押し寄せる。彼らは武芸こそないが、熱い血潮で陳某に立ち向かう。しかし、圧倒的な力の差は歴然で、民衆は簡単に倒されてしまう。朝老太爺は怒りに燃え、陳某を罵倒する。民衆もまた義憤に立ち上がり抵抗するが、力の差は如何ともし難く、絶望的な状況に陥る。
その時、寧缺(ねい・けつ)の脳裏に神秘的な「乂」の文字が浮かび上がる。傷ついた体で最後の力を振り絞り、陣眼杵で朱雀(すざく)大通り地下に眠る火の鳳凰を起動させる。鳳凰は空高く舞い上がり、陳某に襲いかかる。驚愕する陳某が抵抗する隙に、寧缺(ねい・けつ)は刀を振るい、「乂」の文字を空に描く。驚神陣が発動し、都は堅牢な結界に包まれ、陳某は閉じ込められてしまう。
範悦の河山盤もついに解封され、書院(しょいん)の皆の不安は解消される。君陌(くんはく)、李慢慢(り・まんまん)、余簾たちは歓喜の声を上げ、寧缺(ねい・けつ)の成功と陳某の敗北を確信する。陳皮皮は父親を救おうと戦場へ駆けつけ、李慢慢(り・まんまん)は弱った寧缺(ねい・けつ)を支え、余簾と莫山山(ばく・さんさん)はその後ろに続く。彼らは天を仰ぎ、夫子(ふうし)に勝利を報告する。
同時に、青峡の戦場からも朗報が届く。君陌(くんはく)率いる弟子たちは青峡を守り抜き、陳皮皮は陳某の遺体と共に知守観へ戻る。程立雪は熊初墨に戦況を報告する。陳某の死により、葉紅魚(よう・こうぎょ)率いる連合軍の士気は大きく低下し、西陵(せいりょう)へ撤退した。挙世伐唐の計画は失敗に終わったかに見えたが、熊初墨は諦めず、程立雪に民心を乱さぬよう警告し、西陵(せいりょう)の律法で厳罰に処すと脅す。
都では、夏天(か・てん)と莫山山(ばく・さんさん)が城壁の上から帰還する唐軍を見つめ、感謝の気持ちで胸がいっぱいになる。莫山山(ばく・さんさん)は書院(しょいん)の先生たちの無事を祈り、彼らの帰還に喜びを爆発させる。桑桑(そうそう)は大黒馬と馬車を見つけると、喜び勇んで駆け寄る。重傷を負った寧缺(ねい・けつ)も、後山(こうさん)で師兄師姐たちの帰りを待っていた。彼らの姿を見つけると、杖を投げ捨てて駆け出す。しかし、君陌(くんはく)の右腕が失われているのを見て、激しい痛みと悲しみに襲われる。
第34話感想
第34話は、手に汗握る展開の連続で、息つく暇もないほど緊迫感に満ちていました。寧缺(ねい・けつ)の執念と、民衆の勇気、そして書院(しょいん)の仲間たちの絆が、強大な敵である陳某を倒す原動力となったことが印象的です。
特に、力の差を承知の上で陳某に立ち向かう朝老太爺と民衆の姿は胸を打ちました。彼らは武芸には長けていないものの、故郷を守るという強い意誌で立ち上がり、寧缺(ねい・けつ)の戦いを支えました。彼らの勇敢な行動は、まさに「民衆こそ国の宝」ということを体現していると言えるでしょう。
また、寧缺(ねい・けつ)が窮地に追い込まれながらも、諦めずに戦い続ける姿も感動的でした。何度も倒れ、満身創痍になりながらも、決して希望を捨てず、最後の力を振り絞って驚神陣を発動させるシーンは、まさにクライマックスと言えるでしょう。火の鳳凰が舞い上がり、都が結界に包まれる光景は、視覚的にも非常に美しく、物語の盛り上がりを最大限に引き立てていました。
つづく