梁王は曹元(そうげん)将軍を捕らえた後も、その貪欲さを満たすことなく、曹元(そうげん)の妻妾たちにまで魔の手を伸ばした。彼女たちを捕らえ尋問し、更なる情報を引き出そうとしたのだ。間もなく、曹元(そうげん)の供述が周王(しゅうおう)の元に届く。曹元(そうげん)は陸琪(りくき)との衝突は認めたものの、皇后(こうごう)の帰路情報を漏洩したことは頑なに否定した。周王(しゅうおう)は熟慮の末、曹元(そうげん)に謀仮に加担する動機はないと判断し、関係者への更なる調査を命じた。

この時、顔妃(がんひ)が周王(しゅうおう)を訪ね、曹元(そうげん)の供述を見た後、傅柔(ふじゅう)への執著を捨て、悲しみすぎないようにと優しく諭した。一方、盛楚慕(せいそぼ)は宿屋で身分を隠して働き始めたが、プライドの高さが災いし、客と揉め事を起こしてしまう。それを見た傅柔(ふじゅう)は、自分が刺繍で生計を立てると提案するが、盛楚慕(せいそぼ)は傅柔(ふじゅう)に苦労をさせまいと、狩りで食料を調達することにした。

狩りから戻った盛楚慕(せいそぼ)は、傅柔(ふじゅう)と共に獲物を分け合おうとした矢先、ある爺孫に出会う。獅子山では山賊が横行し、役人も手が出せないことを知った盛楚慕(せいそぼ)は、義憤に駆られ、軍隊さえあれば山賊を討伐できると豪語する。夜、盛楚慕(せいそぼ)は家族を恋しがって悪夢にうなされ、傅柔(ふじゅう)は心を痛め、長安(ちょうあん)へ戻ることを提案する。しかし、盛楚慕(せいそぼ)は自分たちの計画をやり遂げると言い張った。

一方、陸琪(りくき)は依然として昏睡状態にあった。傅音(ふいん)は彼の看病をしていたが、最後の救命薬をうっかり失くしてしまう。当初は下心を持って陸琪(りくき)に近づいた傅音(ふいん)だったが、今は心から彼の回復を願っていた。幸いにも、陸琪(りくき)は意識を取り戻し始め、傅音(ふいん)は急いで太医を呼ぶ。陸琪(りくき)は一命を取り留め、さらに傅音(ふいん)の妊娠も判明し、陸雲戟は喜び、陸漢星と趙家の娘の婚礼を盛大に行うことを決めた。

しかし、陸琪(りくき)はこの機会を利用し、陸漢星が洪義徳(こうぎとく)と結託し、皇后(こうごう)の帰路情報を漏洩した事実を暴露する。激怒した陸雲戟は陸漢星を殺そうとするが、陸母の登場で阻まれ、一時的に監禁するにとどまった。陸漢星は隙を見て逃走するが、偶然にも傅音(ふいん)と傅濤(ふとう)の会話を耳にし、傅家の火事の真相を知ってしまう。混乱の中、傅濤(ふとう)は誤って陸漢星を刺殺してしまう。傅音(ふいん)は兄を守るため、自分が抵抗した際に誤って殺してしまったと嘘をつき、陸琪(りくき)も罪を被ろうとする。

その頃、盛楚慕(せいそぼ)は狩りから戻ると傅柔(ふじゅう)の姿が見えず、湖畔で沐浴する彼女を見つける。二人の穏やかな時間は、傅柔(ふじゅう)の衣服から見つかった長命鎖によって破られる。盛楚慕(せいそぼ)は傅柔(ふじゅう)と厳子方(げんしほう)の関係を疑い、怒ってその場を去ってしまう。傅柔(ふじゅう)は慌てて追いかけ説明しようとするが、途中で陳友(ちんゆう)に襲われる。間一髪で盛楚慕(せいそぼ)が駆けつけ、傅柔(ふじゅう)を救う。陳友(ちんゆう)の追及に対し、盛楚慕(せいそぼ)は機転を利かせ、自分は洪義徳(こうぎとく)の手下だと嘘をつき、危機を脱した。

同じ頃、広州から戻った傅濤(ふとう)は陸琪(りくき)に報告しようと訪ねるが、妹の傅音(ふいん)が陸琪(りくき)の妾になっていることを知る。兄妹の再会は驚きと戸惑いに満ちていた。傅濤(ふとう)は傅音(ふいん)の選択に失望し、共に逃げようと説得するが、二人の会話を陸漢星に聞かれてしまう。誤解と憎しみによる悲劇の幕が、静かに上がり始めていた…。

第29話の感想

第29話は、様々な登場人物の思惑が交錯し、運命の歯車が大きく動き出す、非常にドラマチックな展開でした。梁王の止まらぬ貪欲さ、周王(しゅうおう)の未練、盛楚慕(せいそぼ)と傅柔(ふじゅう)のすれ違い、陸家の内紛、そして傅兄妹の再会など、それぞれの物語が複雑に絡み合い、目が離せない展開となっています。

特に印象的だったのは、盛楚慕(せいそぼ)と傅柔(ふじゅう)の関係です。互いを想いながらも、小さな誤解からすれ違ってしまう二人の姿は、もどかしさと切なさを感じさせました。長命鎖をきっかけに、盛楚慕は傅柔と厳子方(げんしほう)の関係を疑い、二人の間に再び距離が生まれてしまいます。せっかく危機を乗り越え、穏やかな時間を過ごしていただけに、この誤解は非常に残念で、今後の展開が心配になります。

また、陸家における陸漢星の裏切りと、その後の悲劇的な結末も衝撃的でした。権力争いに巻き込まれ、翻弄される陸家の面々の姿は、人間の弱さや愚かさを改めて感じさせます。傅音(ふいん)と傅濤(ふとう)の再会も、今後の波乱を予感させるものでした。傅音(ふいん)は陸琪(りくき)の妾となり、傅濤(ふとう)は妹の選択に失望しますが、兄妹の強い絆が、この困難を乗り越える鍵となるのでしょうか。

つづく