顔妃(がんひ)は皇帝(こうてい)の病状を診るため太医を呼びました。覆水(ふくすい)は診察後、皇帝(こうてい)は衰弱しており強い薬は使えず、まずは体力を回復させる薬を与えるべきだと進言しました。顔妃(がんひ)はこれを好機と捉え、皇帝(こうてい)をしばらく昏睡状態にさせることにしました。太医に鍼で皇帝(こうてい)を目覚めさせることを禁じ、他の妃嬪たちにも皇帝(こうてい)に会うことを許しませんでした。李宝林は事態の深刻さを察知し、侍女に傅柔(ふじゅう)へ使いを出し、慈恩寺に留まり絶対に宮궐へ戻らないよう伝えさせました。
一方、曹内侍(そうないし)は皇帝(こうてい)の密詔を傍受し、顔妃(がんひ)に献上しました。顔妃(がんひ)はそこで初めて皇帝(こうてい)が周王(しゅうおう)の権力を奪おうとしていたことを知ります。周王(しゅうおう)は皇帝(こうてい)の急病の知らせを受け、顔妃(がんひ)の元を訪れ、彼女が関与しているのかと問い詰めました。しかし顔妃(がんひ)は委屈そうに、数十年も皇帝(こうてい)と共に過ごしてきた自分がそんな酷いことをするはずがないと訴えました。
その夜、傅柔(ふじゅう)一行は長安(ちょうあん)の城外に野営し、翌日には長安(ちょうあん)へ戻る予定でした。君慧(くんけい)が李宝林からの伝言を届けに野営地へ駆けつけます。宮中の状況を知った傅柔(ふじゅう)は逃げることなく、宮궐へ戻り自分の責任を果たす決意をしました。盛楚慕(せいそぼ)は傅柔(ふじゅう)の身を案じ、帰還を止めようとしますが、傅柔(ふじゅう)は盛楚慕(せいそぼ)もかつて自身の安全を顧みず責任を果たしたことがあると諭し、粘り強く説得します。傅柔(ふじゅう)の説得により、盛楚慕(せいそぼ)はやむを得ず彼女の帰還を承諾しました。独孤将軍(どっこしょうぐん)も長安(ちょうあん)の状況を知り、傅柔(ふじゅう)の帰還と真相究明を認め、禁軍を率いる自分が宮궐内で万一の事態が起きた際には傅柔(ふじゅう)を守ると約束しました。
宮궐内の危険を察知した傅柔(ふじゅう)は、秦王(しんおう)を伴わず、替え玉を同行させました。独孤将軍(どっこしょうぐん)は同行しようとしますが、曹内侍(そうないし)に周王(しゅうおう)の手諭を以て阻まれます。しかし独孤将軍(どっこしょうぐん)は皇帝(こうてい)の詔勅を示し、自分は皇帝(こうてい)の命令しか聞かないと、周王(しゅうおう)の手諭を拒否しました。同様に、盛楚令(せいそれい)も周王(しゅうおう)の手諭を拒否し、百騎の解散を拒みました。
一方、宮궐へ戻った傅柔(ふじゅう)は、顔妃(がんひ)が韋松(いしょう)を処刑しようとしている場面に遭遇します。傅柔(ふじゅう)は韋松(いしょう)を弁護しようとしますが、無罪を証明する証拠がありません。顔妃(がんひ)は威嚇のため韋松(いしょう)の処刑を強行しようとしますが、傅柔(ふじゅう)は先皇后(こうごう)から賜った赦免の文字を用いて韋松(いしょう)を救いました。権力を掌握した顔妃(がんひ)も先皇后(こうごう)の定めた規則を無視することはできず、韋松(いしょう)の処刑を断念しました。韋松(いしょう)を救った後、傅柔は尚礼局へ戻り、顔妃(がんひ)に媚びへつらい韋松(いしょう)を陥れ、賄賂を受け取っていた何司賛(かしさん)を罰し、投獄しました。替え玉の秦王(しんおう)がいなくなったことに気付いた玉内侍(ぎょくないじ)は、紛失した如意を探す名目で各宮を捜索しますが、独孤将軍(どっこしょうぐん)の協力もあり、大きな被害は出ませんでした。
盛楚慕(せいそぼ)は何太医(か たいい)を伴い方相の元を訪ね、方相と独孤将軍(どっこしょうぐん)の尽力により、顔妃(がんひ)はついに何太医(か たいい)による皇帝(こうてい)への鍼治療を許可します。こうして皇帝はようやく意識を取り戻しました。一方、玉内侍(ぎょくないじ)は周王(しゅうおう)に方相を長安(ちょうあん)から追放するよう進言しますが、周王(しゅうおう)は皇帝の病状を理由に兵を動かした直後に朝廷の大臣を動かすことに難色を示し、玉内侍(ぎょくないじ)に自分の行動には限度があると告げました。
馬海虎(かいこ)は偶然、厳子方(げんしほう)と覆水(ふくすい)の会話を盗み聞きします。覆水(ふくすい)は厳子方(げんしほう)に舒子琪(しょしき)という人物を探すよう指示していました。厳子方(げんしほう)は覆水(ふくすい)が怜燕児を殺害したことに不満を抱き、事の成就後には馬海虎(かいこ)に高い官位を与えることを要求します。怜燕児が覆水(ふくすい)に殺されたことを知った馬海虎(かいこ)は驚き、覆水(ふくすい)の尾行を開始しますが、覆水(ふくすい)の手下に捕まり殺害されてしまいます。
第52話の感想
第52話は、顔妃(がんひ)の専横と傅柔の機転、そして皇帝の覚醒という大きな転換点を描いた、緊迫感あふれるエピソードでした。顔妃は皇帝の病状を利用し、権力掌握を目論みます。周王(しゅうおう)を唆し、忠臣を陥れようとする彼女の冷酷なまでの策略には、恐怖すら感じました。皇帝の密詔を握りつぶし、偽りの涙で周王(しゅうおう)を操る姿は、まさに悪女の典型と言えるでしょう。
対照的に、傅柔の勇敢さと聡明さが際立ちます。宮中での危険を承知の上で帰還し、韋松(いしょう)を救うために先皇后(こうごう)の赦免状を使う機転は見事でした。何司賛(かしさん)を処罰する場面でも、彼女の正義感と決断力が発揮されています。盛楚慕(せいそぼ)や独孤将軍(どっこしょうぐん)、方相といった味方の存在も心強く、それぞれの立場で傅柔を支えようとする姿に感動を覚えました。
特に印象的だったのは、周王(しゅうおう)の葛藤です。顔妃に唆されながらも、朝廷の大臣を動かすことに躊躇する彼の姿には、まだ良心が残っているように感じられました。今後の展開において、彼がどのような選択をするのか、非常に気になります。
馬海虎(かいこ)の死は衝撃的でした。怜燕児の仇を討とうとするも、返り討ちに遭うという悲劇的な結末は、権力闘争の残酷さを改めて浮き彫りにしています。舒子琪(しょしき)という謎の人物の登場も、今後の物語に大きく関わってくる予感がします。
つづく