夜明けの光の中、崇明(すうめい)は隆慶と別れを惜しんだ。唐国に残る隆慶の行く末を案じ、二層楼の試練を乗り越え、燕国の復興を果たせるよう祈りを捧げた。隆慶は兄弟への想いと未来への決意を胸に、書院(しょいん)の試験場へと足を踏み入れた。
翌朝、書院(しょいん)は大勢の弟子で賑わっていた。運命を決める試験を前に、寧缺(ねい・けつ)は不安を抱え、桑桑(そうそう)を連れ後山(こうさん)の花園へと逃げるように向かった。そこで偶然出会った余簾に教えを乞うも、彼女は寧缺(ねい・けつ)に諦めるよう諭し、より強い師を紹介すると約束する。しかし、寧缺(ねい・けつ)は諦めきれず、挑戦することを決意した。
試験開始の鍾が鳴り響き、学徒たちは一斉に瓢箪の掛かった木を目指し山を駆け上がった。謝承運(しゃしょううん)や鍾大俊(しょうだいしゅん)を始めとする書院(しょいん)の秀才、そして各地の俊英たちが競い合う中、隆慶は傲然とした様子で先頭を走っていた。寧缺(ねい・けつ)も負けじと、険しい山道を一歩一歩登り始めた。体力的に苦しい場面もあったが、強い意誌で前進し続けた。
途中、寧缺(ねい・けつ)は四先生範悦が仕掛けた石や釘の罠に苦しめられる。激しい痛みを堪えながら、彼は自らを鼓舞し続けた。一方、桑桑(そうそう)は霧の陣に迷い込むが、傘のおかげで無事に脱出できた。周りの学徒たちは、登り続ける者、諦める者と様々で、現場は混沌としていた。
五師兄と八師兄は、さらに試練を厳しくしようと、小石を撒き散らし、既に険しい山道をより危険なものにした。寧缺(ねい・けつ)は持ち前の身軽さで危機を回避し、徐々に頭角を現していく。一方、李青山は隆慶の順調な様子に不満を抱き、顔瑟(がんしつ)大師と議論を交わしていた。顔瑟(がんしつ)は寧缺(ねい・けつ)の素性に興味を示していた。
苦労の末、山頂に辿り著いた寧缺(ねい・けつ)だったが、目的の木がないことに愕然とする。焦る中、謝承運(しゃしょううん)を追い抜くも、隆慶の姿はまだ遥か先だった。後を追う桑桑(そうそう)は山頂で君陌(くんはく)に阻まれる。苛立ちのあまり君陌(くんはく)に噛み付いた桑桑(そうそう)は、彼が書院(しょいん)の二師兄だと知る。
隆慶の独走を危惧した李青山は、顔瑟(がんしつ)に寧缺(ねい・けつ)の身辺調査を依頼する。その結果、寧缺(ねい・けつ)が修行者であるだけでなく、唐王の闇侍衛でもあることが判明する。顔瑟(がんしつ)は大いに喜び、寧缺(ねい・けつ)を弟子に迎えたいと考える。一方、隆慶は最後の関門に辿り著き、「君子不」の謎に挑んでいた。試行錯誤の末、「君子不争」の真意を悟り、扉が開く。その先にあったのは、心の奥底へと続く12段の階段だった。
隆慶は一段一段、過去の記憶と心魔に立ち向かいながら階段を登っていく。戦争の悲惨さ、兄弟との別れ…、それぞれの階段が試練となっていた。下山中の陳皮皮(ちんぴぴ)は君陌(くんはく)と桑桑(そうそう)に出会い、一悶著あった後、桑桑(そうそう)は君陌(くんはく)の正体を知る。
試験は佳境を迎え、意誌、知恵、勇気を試す戦いが繰り広げられていた。二層楼の秘密が、今まさに明かされようとしていた。
第20話 感想
第20話は、まさに試練の連続でした。肉体的な試練、精神的な試練、そして知的な試練。それぞれのキャラクターがそれぞれの試練に立ち向かう姿が印象的でした。
特に寧缺(ねい・けつ)の不屈の精神には感動させられます。山を登る過酷な試練の中で、何度も挫けそうになりながらも、諦めずに前進し続ける姿は、まさに主人公の風格です。桑桑(そうそう)との絆も強く感じられ、彼女の存在が寧缺の支えになっていることがよく伝わってきました。
一方、隆慶はエリートとしてのプライドとプレッシャーの中で、試練に挑みます。彼の冷静沈著な態度は、寧缺とは対照的ですが、内に秘めた熱い思いは同じように感じられました。「君子不争」の真意を悟るシーンは、隆慶の成長を感じさせる重要な場面でした。
そして、忘れてはならないのが、個性豊かな脇役たちの存在です。余簾の謎めいた雰囲気、範悦の厳しい試練、李青山の野心、顔瑟(がんしつ)の慧眼。それぞれのキャラクターが物語に深みを与え、今後の展開への期待を高めてくれます。
つづく