簡素ながらも芸術的な雰囲気に満ちた寧缺(ねい・けつ)の小屋に、顔瑟(がんしつ)と李青山が足を踏み入れた。壁一面に飾られた書に目を奪われ、その独特かつ精緻な筆緻に深く感銘を受ける。二人は寧缺(ねい・けつ)を稀代の天才と賞賛し、李青山は寧缺(ねい・けつ)の書体が唐王の御書房(ごしょぼう)にある秘蔵の書と酷価していることに気付く。すぐさま御書房(ごしょぼう)へ赴き、顔瑟(がんしつ)は「花開彼岸天」を凝視した後、寧缺(ねい・けつ)を昊天道南門に迎え入れ、自身の後継者とすることを心に決める。出発前、李青山は国師の令牌を顔瑟(がんしつ)に渡し、全面的な支援を約束した。

一方、寧缺(ねい・けつ)は小屋の前で「君子不器」の四文字を覚えようと繰り返し試みるが、焦燥感からなかなか覚えられない。ついに彼は歯を食いしばり、血で「器」の字を掌に刻み、ようやく小屋の扉を開ける。この行動に君陌(くんはく)は小賢しいと嘆息しつつも、かつての師兄の姿を思い出す。

その頃、隆慶は既に山頂に到達していたが、体力の限界で倒れ込む。後を追って寧缺(ねい・けつ)も一歩一歩、重たい足取りで登っていく。過去の傷と憎しみが波のように押し寄せ、彼の精神を苛む。陳皮皮(ちんぴぴ)は遠くから寧缺(ねい・けつ)が無事に試練を乗り越えるよう祈っていた。

ついに寧缺(ねい・けつ)も山頂へ辿り著くと、既に目を覚ました隆慶が待ち構えていた。二人は竹片を手に、更なる試練へと進む。隆慶は再び桑桑(そうそう)への想いを口にするが、寧缺(ねい・けつ)は自身の貧しさと孤独に胸を締め付けられる。

次に、二人は夫子(ふうし)の試練を受ける。隆慶は自身の欲望と野心に向き合うが、最終的に幻影の中の恋人、陸晨伽と葉紅魚(よう・こうぎょ)を手にかけ、道を踏み外してしまう。一方、寧缺(ねい・けつ)は光と闇の選択を迫られ、迷わず光を選び、桑桑(そうそう)と卓爾(たくじ)を決して諦めないことを誓う。夫子(ふうし)は彼の選択を認め、新たな生を与えた。

しかし、真の試練はまだ終わっていなかった。寧缺(ねい・けつ)は幻の中で別の「桑桑(そうそう)」に遭遇する。彼女の異様な様子から、寧缺(ねい・けつ)はこれが本当の桑桑(そうそう)ではないことに気付く。苦悩の末、幻影を見破り、鍵となる半分の瓢箪を見つけ、試練を突破する。隆慶は執著と残虐な行為により、余簾から失格を宣告される。

書院(しょいん)は寧缺の勝利に沸き返るが、彼は疲労困憊で倒れてしまう。顔瑟(がんしつ)と李青山は唐王に寧缺の才能を報告し、顔瑟(がんしつ)自ら指導して最高の符師に育て上げることを提案する。唐王は強い興味を示し、若き俊才との面会を心待ちにする。

書院(しょいん)では寧缺の勝利の知らせが広まり、程立雪(てい・りゅうせつ)たちは不服ながらも結果を受け入れるしかない。顔瑟(がんしつ)は一刻も早く寧缺を弟子に迎え入れようと画策し、李漁は早速唐王に吉報を伝える。しかし、全員が寧缺の勝利を素直に受け入れたわけではなく、程立雪(てい・りゅうせつ)たちは書院(しょいん)の不正を疑い、調査を求めるが、顔瑟(がんしつ)と李漁の断固とした態度に阻まれる。

第二十一話 感想

第二十一話は、寧缺の才能と精神力の強さが際立つエピソードでした。血で「器」の字を刻むシーンは、彼の決意の固さを象徴的に表しており、強い印象を残しました。山頂への過酷な道のりは、肉体的な試練であると同時に、過去のトラウマと向き合う精神的な試練でもありました。隆慶との対比も効果的で、欲望に溺れ道を誤る隆慶と、信念を貫き通す寧缺の姿が鮮明に描かれていました。

夫子(ふうし)の試練は、まさに二人の内面を映し出す鏡のようでした。隆慶は幻影に惑わされ、愛する者さえも手に掛けてしまう残酷さを露呈します。一方、寧缺は光を選び、愛する桑桑(そうそう)と卓爾(たくじ)を守るという強い意誌を示しました。この選択は、彼の優しさだけでなく、揺るぎない精神力の強さを示すものでもありました。

偽りの桑桑(そうそう)が登場する場面は、緊張感がありました。寧缺が冷静に幻影を見破ることで、真の強さを改めて実感させられます。瓢箪を見つけるシーンは、彼の機転と洞察力の高さを示す象徴的な場面でした。

つづく