あらすじ
第二十九話は、寧缺(ねいけつ)が符を描く際に誤って書院の秩序を乱し、师兄師姉たちの不満を買ってしまう場面から始まります。その後、寧缺は桑桑(そうそう)と夜語りをする中で、桑桑の病気が発作。寧缺は彼女を温め、二人の間にはかすかな変化が生まれます。一方、寧缺は小師叔である柯浩然(かこうぜん)の故事から啓発を受け、修行に対する新たな理解を深めます。
朝廷では、唐王は書院の学生たちを燕北荒原(えんほくこうげん)での実修に派遣することを決定します。これは、将来的な脅威に備えるためですが、寧缺が隊長に選ばれたことで、朝廷内には議論が巻き起こります。
さらに、隆慶(りゅうけい)は荒原にて天書を探す命を受け、葉紅魚(ようこうぎょ)は彼を監視するため同行を余儀なくされます。そして寧缺は、彼のために特別に鍛えられた「元十三箭(げんじゅうさんせん)」を受け取り、迫りくる試練に立ち向かう準備を整えるのでした。
ネタバレ
寧缺の日常は、一見穏やかに見えて、実はドタバタの連続だった。ちょっとした不注意で木柚の刺繍を燃やしてしまい、四師兄の鍛冶仕事にも影響を与え、書院の静寂を破って皆から非難を浴びせられる。陳皮皮に至っては「火事泥棒寧缺に注意」の張り紙を出す始末で、書院には苦笑が溢れた。
紅袖招を訪れた寧缺と桑桑は、そこで意外な歓迎を受ける。簡大家の計らいだと知り、寧缺は彼女に呼び出され、修行に専念するよう諭される。夫子ですら私生活に口出ししないのにと不満に思う寧缺だが、簡大家が小師叔の柯浩然を知っているという話に、伝説の人物への興味が湧き上がる。
激しい雷雨の夜、寧缺は柯浩然のことを考えながら眠れない夜を過ごす。一方、桑桑は寒気に襲われ、寧缺は彼女を温めながら、桑桑の成長を改めて実感し、二人の間に微妙な変化が生じる。
昊天世界では、天書をめぐる動きが再び活発化する。西陵の至宝、七巻の天書の一つ「明」の巻が荒原の魔宗にあると天諭大神官が感知し、掌教は隆慶を派遣する。これに羅克敵は仮発するも、隆慶は天書獲得に自信を見せる。また、葉紅魚は陸晨伽の桃山出発を隆慶に知らせようとするが、一歩遅れてしまう。隆慶は羅克敵と陸晨伽の争いに介入し、二人の因縁はさらに深まる。
書院では、桑桑が昨夜の寧缺の行動に戸惑い、小草に相談する。君陌から修行書をもらった寧缺は、柯浩然のことを尋ねるが、「すごい」という一言しか返ってこない。病に倒れた唐王を夏天が看病する中、掌教からの魔宗討伐の指示が届く。唐王は書院の生徒を燕北荒原へ実修に派遣することを決め、寧缺を隊長に任命する。この決定は朝堂に波紋を広げる。
四師兄と六師兄は協力して寧缺専用の武器、符呪入りの金剛石を埋め込んだ弓と十三本の特殊な矢、「元十三箭」を作り上げる。出発前、君陌は寧缺に弓の使用は慎重にと忠告する。隆慶は陸晨伽に別れを告げ、天書探しの旅に出る。全てを取り戻すと誓いながら。
桑桑は寧缺のために旅支度を整えるが、寧缺は安全のため彼女を置いていくことを決める。桑桑の同行を望む気持ちと寧缺の心配が交錯する。李漁の任務への疑問、李青山と顔瑟の寧缺への期待と不安、様々な思惑が渦巻く中、荒原への旅は波乱の幕開けを予感させる。
第29話の感想
第29話は、寧缺を中心とした様々な人間模様と、今後の波乱を予感させる展開が巧みに描かれていました。日常のドタバタ劇から、修行、そして国家を揺るがす陰謀まで、緩急のあるストーリー展開に引き込まれました。
特に印象的だったのは、寧缺と桑桑の関係性の変化です。これまで主従関係のような距離感だった二人が、桑桑の成長と寧缺の意識の変化によって、微妙な空気が流れるようになりました。思春期を迎えた桑桑の戸惑いや、寧缺の葛藤が繊細に表現されており、今後の二人の関係がどうなっていくのか、非常に気になります。
また、簡大家の登場も印象的でした。紅袖招の女将という立場でありながら、寧缺を諭す姿は母性を感じさせ、彼女と柯浩然の過去についても興味をそそられました。伝説的人物である柯浩然の逸話が、今後どのように物語に絡んでくるのか、期待が高まります。
一方、天書をめぐる争いも激化し、隆慶、羅克敵、葉紅魚といった登場人物たちの思惑が複雑に絡み合っています。それぞれの野望や過去の因縁が、今後の物語に大きな影響を与えそうです。
つづく