寧缺(ねい・けつ)の日常は、一見穏やかに見えて、実はドタバタの連続だった。ちょっとした不注意で木柚の刺繍を燃やしてしまい、四師兄の鍛冶仕事にも影響を与え、書院(しょいん)の静寂を破って皆から非難を浴びせられる。陳皮皮(ちんぴぴ)に至っては「火事泥棒寧缺(ねい・けつ)に注意」の張り紙を出す始末で、書院(しょいん)には苦笑が溢れた。

紅袖招を訪れた寧缺(ねい・けつ)と桑桑(そうそう)は、そこで意外な歓迎を受ける。簡大家(かんたいか)の計らいだと知り、寧缺(ねい・けつ)は彼女に呼び出され、修行に専念するよう諭される。夫子(ふうし)ですら私生活に口出ししないのにと不満に思う寧缺(ねい・けつ)だが、簡大家(かんたいか)が小師叔の柯浩然(ここうぜん)を知っているという話に、伝説の人物への興味が湧き上がる。

激しい雷雨の夜、寧缺(ねい・けつ)は柯浩然(ここうぜん)のことを考えながら眠れない夜を過ごす。一方、桑桑(そうそう)は寒気に襲われ、寧缺は彼女を温めながら、桑桑(そうそう)の成長を改めて実感し、二人の間に微妙な変化が生じる。

昊天世界では、天書をめぐる動きが再び活発化する。西陵(せいりょう)の至宝、七巻の天書の一つ「明」の巻が荒原の魔宗にあると天諭大神官(だいしんかん)が感知し、掌教(しょうきょう)は隆慶を派遣する。これに羅克敵は仮発するも、隆慶は天書獲得に自信を見せる。また、葉紅魚(よう・こうぎょ)は陸晨伽の桃山(とうざん)出発を隆慶に知らせようとするが、一歩遅れてしまう。隆慶は羅克敵と陸晨伽の争いに介入し、二人の因縁はさらに深まる。

書院(しょいん)では、桑桑(そうそう)が昨夜の寧缺の行動に戸惑い、小草(しょうそう)に相談する。君陌(くんはく)から修行書をもらった寧缺は、柯浩然(ここうぜん)のことを尋ねるが、「すごい」という一言しか返ってこない。病に倒れた唐王を夏天(か・てん)が看病する中、掌教(しょうきょう)からの魔宗討伐の指示が届く。唐王は書院(しょいん)の生徒を燕北荒原へ実修に派遣することを決め、寧缺を隊長に任命する。この決定は朝堂に波紋を広げる。

四師兄と六師兄は協力して寧缺専用の武器、符呪入りの金剛石を埋め込んだ弓と十三本の特殊な矢、「元十三箭」を作り上げる。出発前、君陌(くんはく)は寧缺に弓の使用は慎重にと忠告する。隆慶は陸晨伽に別れを告げ、天書探しの旅に出る。全てを取り戻すと誓いながら。

桑桑(そうそう)は寧缺のために旅支度を整えるが、寧缺は安全のため彼女を置いていくことを決める。桑桑(そうそう)の同行を望む気持ちと寧缺の心配が交錯する。李漁の任務への疑問、李青山と顔瑟(がんしつ)の寧缺への期待と不安、様々な思惑が渦巻く中、荒原への旅は波乱の幕開けを予感させる。

第29話の感想

第29話は、寧缺を中心とした様々な人間模様と、今後の波乱を予感させる展開が巧みに描かれていました。日常のドタバタ劇から、修行、そして国家を揺るがす陰謀まで、緩急のあるストーリー展開に引き込まれました。

特に印象的だったのは、寧缺と桑桑(そうそう)の関係性の変化です。これまで主従関係のような距離感だった二人が、桑桑(そうそう)の成長と寧缺の意識の変化によって、微妙な空気が流れるようになりました。思春期を迎えた桑桑(そうそう)の戸惑いや、寧缺の葛藤が繊細に表現されており、今後の二人の関係がどうなっていくのか、非常に気になります。

また、簡大家(かんたいか)の登場も印象的でした。紅袖招の女将という立場でありながら、寧缺を諭す姿は母性を感じさせ、彼女と柯浩然(ここうぜん)の過去についても興味をそそられました。伝説的人物である柯浩然(ここうぜん)の逸話が、今後どのように物語に絡んでくるのか、期待が高まります。

一方、天書をめぐる争いも激化し、隆慶、羅克敵、葉紅魚(よう・こうぎょ)といった登場人物たちの思惑が複雑に絡み合っています。それぞれの野望や過去の因縁が、今後の物語に大きな影響を与えそうです。

つづく