あらすじ
第三十話は、寧缺が荒野へ向かう前の出来事を描いています。出発前に、寧缺は桑桑に老筆斎の世話と李漁公主府からの夕食の招待を受けるように言い残しました。
晩餐の席で、李漁は寧缺に荒野行きを思い留まるよう説得しますが、寧缺の決意は固く、桑桑の面倒を見てくれるよう頼みます。その席で李琿圓が桑桑に無礼な言葉を浴びせますが、寧缺はそれを製止し警告します。桑桑は寧缺の激しい気性を心配し、李漁を娶ることを提案しますが、寧缺はそれを拒否します。
一方、寧缺の書に心酔する莫山山は、彼に同行して荒野へ行くことを決意し、師である書聖から地図を授かります。
出発を前に、寧缺は顔瑟大師や師兄師姐、余帘たちから贈り物と励ましの言葉を受け取ります。唐王と夏天の会話では、永夜の伝説への不安と夏侯への複雑な感情が垣間見えます。
こうして、周囲の人々の温かい見送りを受け、寧缺は荒野への旅路へと踏み出しました。
ネタバレ
寧缺は出発前に桑桑に老筆斎の商売を丁寧に世話するように念を押した。桑桑は別れを惜しみつつも、静かに頷くしかなかった。間もなく、李漁公主府からの招待状が届き、寧缺と桑桑は夕食に招かれる。実は、夏天公主は唐王の仁政に深く感謝しており、特に唐王が荒人討伐に大軍ではなく寧缺率いる書院の弟子たちを選んだことに感銘を受けていた。それは無益な殺戮を避けるためだった。
晩餐の席では、微妙な空気が流れていた。李漁は侍女たちを下がらせ、寧缺と二人きりになると、荒原行きを思い留まるよう説得し始めた。書院の掟を持ち出し、彼に考え直させようとしたのだ。しかし、寧缺の決意は固く、李漁の好意を断るだけでなく、桑桑の面倒を見てくれるよう頼んだ。一方、桑桑は小世子の小蛮と庭で遊んでいたが、そこに李琿圓が現れ、桑桑に無礼な言葉を浴びせ、乱暴を働こうとした。それを見た寧缺は怒り心頭で、李琿圓の行為を製止し、二度と繰り返さないよう警告した。その後、李明池が現れると、寧缺はさらに厳しく李琿圓を叱りつけるよう要求した。
夜が更け、桑桑は寧缺の激しい気性を心配し、穏やかな暮らしを送るため李漁と結婚してはどうかと提案するが、寧缺はきっぱりと拒絶した。寧缺の心には桑桑しかいない。その深い愛情に桑桑は感動し、胸を締め付けられた。
同じ頃、墨池苑の莫山山は、寧缺の書に魅せられ、彼に恋心を抱いていた。寧缺が荒原へ向かうと知り、彼女は彼に付いて行くことを決意する。出発前、師である書聖は彼女に貴重な地図を授け、魔宗山門で明字巻天書を探すよう指示した。
荒原への旅立ちを前に、寧缺の荷物には多くの「お守り」が増えていた。顔瑟大師は天書の秘密を伝授するだけでなく、護符を与え、隆慶に警戒するよう忠告した。師兄師姐たちもそれぞれ護身用の道具を贈り、特に余帘の玉の扳指は窮地を救う切り札となるだろう。陳皮皮は別れを惜しみ、様々な食べ物や薬を用意し、寧缺の無事を祈った。
また、唐王と夏天的には、永夜の伝説への不安と、夏侯への複雑な感情が語られた。夏天は夏侯のために弁護しようとするが、唐王は夏侯の罪の重さを知りながらも、夏天への深い愛情は変わらず、ただ夏侯の心の魔が再び目覚めないことを願っていた。
こうして、寧缺は皆の心配と祝福を受けながら、荒原へと旅立った。胸には未知の挑戦への不安と、天書を見つけ、自らの実力を証明したいという強い思いを抱いて。この旅でどのような試練や選択に直面し、どのように様々な勢力と渡り合っていくのか、全ては未知数だった。
第30話の感想
第30話は、寧缺の荒原行きを軸に、様々な人間関係とそれぞれの思惑が交錯する、ドラマチックな展開でした。特に印象的なのは、それぞれのキャラクターの心情描写の細やかさです。
桑桑の寧缺への深い愛情と、旅立ちへの不安がひしひしと伝わってきました。李漁の秘めた想い、そして寧缺への複雑な感情も繊細に描かれており、彼女の切ない立場に共感せずにはいられません。一方、莫山山の寧缺への純粋な憧憬は、新たな恋の始まりを予感させ、今後の展開に期待が高まります。
つづく