莫山山(ばく・さんさん)は寧缺(ねい・けつ)の書いた「鶏湯帖」に夢中で、一心に筆写を続けていた。その様子を見た酌之華(しゃく・のはな)は、寧缺(ねい・けつ)への想いを告白するよう勧めるが、山山は言葉を濁すばかり。しかし、帖に込められた桑桑(そうそう)への深い愛情を感じ、山山の心には複雑な感情が芽生える。

一方、墨池苑に戻った寧缺(ねい・けつ)は、突然の立ち退きを命じられる。猫女に身分を隠していたことを責められつつも、山山への謝罪を促される。帳内で山山は依然として鶏湯帖の筆写に没頭しており、寧缺(ねい・けつ)に札を書いてもらう。その時、山山は思わず「好き」と呟いてしまうが、すぐに「字が好き」と言い繕う。寧缺(ねい・けつ)の胸にも言い知れぬ温かさが広がり、二人の間には言葉にならない静かな繋がりが生まれた。

桑桑(そうそう)は衛光明(えい・こうめい)の指導の下、神術の修行に励んでいた。昊天神輝(こうてんしんき)を容易く感知した桑桑(そうそう)に、衛光明(えい・こうめい)は驚き、彼女を光明之子、そして未来の光明大神官(だいしんかん)に育てようと決意する。桑桑(そうそう)は喜びと不安を抱えつつも、寧缺(ねい・けつ)への想いを募らせる。

寧缺(ねい・けつ)と山山は明字巻天書を求め、天棄山へ向かう。道中、李琿圓に襲われるが、衛光明(えい・こうめい)に助けられ、桑桑(そうそう)も無事救出される。旅を続ける二人は、荒人(こうじん)の女性に出会い、当初の誤解も解け、温かくもてなされる。夫婦と間違われたことで、二人の間には微妙な空気が流れる。

夜更け、桑桑(そうそう)は寧缺(ねい・けつ)を想い、山山と寧缺(ねい・けつ)は魔宗の功法や昊天世界についての認識の違いを語り合う。立場は違えど、互いを尊重する気持ちが会話から伝わってくる。しかし、西陵(せいりょう)裁決司(さいけつし)の襲撃により、静寂は破られる。小提(しょう・てい)母子が殺され、怒りに燃えた寧缺(ねい・けつ)は敵を討つが、悲しみを隠しきれない。

旅は困難を極め、寧缺(ねい・けつ)は桑桑(そうそう)の温もりを思い出す。山山の心は複雑な思いで揺れる。ついに天棄山に到著するも、天書の在り処は不明のまま。一方、唐小棠(とう・しょうとう)は隆慶が荒人(こうじん)の領地に侵入したことを知り、激しい戦いが繰り広げられる。そこに葉紅魚(よう・こうぎょ)が現れ、事態はさらに混迷を深める。

寒さの中、寧缺(ねい・けつ)は山山のために火符を描く。その時、ふとしたことから桑桑(そうそう)の名前が出たことで、山山の心はさらに乱れる。共に旅を続ける二人だが、それぞれの胸には秘めた想いがある。天書探しの旅は、同時にそれぞれの心の奥底を探る旅でもあった。

第36話 感想

第36話は、それぞれの想いが交錯する切ないエピソードでした。莫山山(ばく・さんさん)の秘めた恋心、寧缺と桑桑(そうそう)の揺るぎない絆、そして様々な思惑が渦巻く権力争い。これらの要素が複雑に絡み合い、物語に深みを与えています。

特に印象的だったのは、莫山山(ばく・さんさん)の心情描写です。寧缺の書いた鶏湯帖を一心不乱に書き写す姿からは、彼女の一途な想いがひしひしと伝わってきました。好きな人のために何かをしたい、少しでも近づきたいという純粋な気持ちが胸を打ちます。しかし、寧缺と桑桑(そうそう)の親密な様子を目の当たりにする度に、彼女の心は苦悩に満ちていきます。葉わぬ恋と知りながらも、想いを抑えきれない切なさが、見ている側にも痛いほど伝わってきました。

一方、寧缺は桑桑(そうそう)への愛情を再確認しながらも、山山の優しさに触れ、心が揺れ動く様子が描かれています。二人の女性の間で揺れ動く彼の心情は、今後の展開を大きく左右していくことでしょう。

また、桑桑(そうそう)が光明之子として覚醒するシーンも重要なポイントです。昊天神輝(こうてんしんき)を感知した彼女の運命は、大きく変わり始めています。今後の物語において、彼女がどのような役割を果たしていくのか、非常に楽しみです。

西陵(せいりょう)裁決司(さいけつし)による小提(しょう・てい)母子の殺害は、物語に闇い影を落としました。寧缺の怒りと悲しみは、見ている側にも強く訴えかけてきます。この事件が、今後の彼の行動にどのような影響を与えるのか、注目すべき点です。

つづく