肉切り包丁と酒壺がいつものように口喧嘩をしている。苛立ちを隠せない肉切り包丁だが、その鋭い感覚で夫子(ふうし)の来訪を察知する。夫子(ふうし)は前回の永夜の謎を解き明かすためやって来たのだが、肉切り包丁は巧みな言葉でその真意を隠そうとする。一方、寧缺(ねい・けつ)は夏侯(か・こう)が魔宗の伝承者であり、しかも相当な実力者であることを知り、復讐心は燃え上がるばかりだった。彼は迷うことなく李慢慢に夏侯(か・こう)を倒す方法を尋ねる。李慢慢は少し考え、寧缺(ねい・けつ)に自ら土陽城へ行き、夏侯(か・こう)と直接対峙するよう勧める。
時を同じくして、荒野では隆慶が生死の境を彷徨っていたが、幸いにも荒人(こうじん)に助けられる。しかし、意識を取り戻した隆慶は、恩人である荒人(こうじん)に対して感謝するどころか、プライドを傷つけられた恨みを抱き、殺そうと企てる。これに怒った荒人(こうじん)は仮撃し、隆慶を彼らの保護区域から追い出す。隆慶はよろめきながら川辺に辿り著き、そこで陸晨伽と再会する。陸晨伽は隆慶を見捨てず、かつての闘誌を取り戻させようとする。しかし、隆慶は既に心が折れており、修為を失い廃人となった自分を自覚し、陸晨伽の温かい言葉に耳を貸さず、婚約まで破棄してしまう。
寧缺(ねい・けつ)は莫山山(ばく・さんさん)と共に土陽城へ向かう。馬上で寄り添う二人の姿。雪景色の中、莫山山(ばく・さんさん)が水墨画を描く間、寧缺(ねい・けつ)は彼女が大河国に帰って自分を忘れてしまうのではないかと案じ、じっと見守る。莫山山(ばく・さんさん)の愛情あふれる告白に寧缺(ねい・けつ)の心は温まる。そこに李慢慢がタイミング良く現れ、冗談を言って場を和ませる。そして、二人が夫婦になることを提案するが、誤解だと気づき、莫山山(ばく・さんさん)を義妹として迎え、都を案内することを約束する。
土陽城に到著後、夏侯(か・こう)は宴を設ける。宴席では、寧缺(ねい・けつ)は夏侯(か・こう)に敵意をむき出しにするが、夏侯(か・こう)は落ち著き払って、自らの過去の苦難と選択について語る。魔宗の伝承者であること、保身のために多くの過ちを犯したこと、そして、その心の葛藤を告白する。李慢慢は夏侯(か・こう)の苦悩を理解しつつも、彼が負うべき責任を指摘する。夏侯(か・こう)も逃れられないことを悟り、官職を辞して隠遁生活を送りたいと申し出る。李慢慢はその誠意を感じながらも、既に遅すぎると告げる。
宴は不穏な雰囲気のまま終わり、李慢慢は寧缺(ねい・けつ)と莫山山(ばく・さんさん)を連れて立ち去る。一方、隆慶の窮状を知った崇明(すうめい)は、荒野へ救出に向かおうとするが、燕王(えんおう)に阻まれる。崇明(すうめい)と燕王(えんおう)は激しく対立し、最後は崇明(すうめい)が隆慶の仇を討つことを誓い、唐国が最も弱った時に緻命的な一撃を加える計画を企てる。
隆慶は壊れた小屋に一人で隠れ、自暴自棄になっている。陸晨伽は彼を見捨てず、自らの体で彼の冷え切った心を温めようとする。しかし、隆慶の絶望は深く、全てに無関心だ。二人の運命は、もはや取り返しのつかないところまで来てしまったようだ。
第42話の感想
第42話は、それぞれのキャラクターの苦悩と葛藤が深く描かれた回でした。特に隆慶の絶望と、それに対する陸晨伽の献身的な愛が印象的です。かつての輝きを失い、自暴自棄になった隆慶の姿は痛々しく、彼の心の闇の深さを改めて感じさせられました。そんな彼を支えようとする陸晨伽のひたむきな愛情は、見ている側も胸が締め付けられるようでした。しかし、隆慶は彼女の愛を受け入れることができず、二人の関係はさらに悲劇的な方向へと進んでいくように感じます。今後の展開が非常に気になります。
一方、寧缺(ねい・けつ)と夏侯(か・こう)の関係も大きな局面を迎えました。直接対峙したことで、寧缺(ねい・けつ)は夏侯(か・こう)の苦悩を知り、復讐心にも変化が生じるのでしょうか。また、莫山山(ばく・さんさん)との関係も進展し、李慢慢の計らいで義兄妹となるなど、微笑ましいシーンもありました。しかし、土陽城での宴は不穏な空気が漂い、今後の波乱を予感させます。
つづく