愛憎渦巻く中、陸晨伽の告白に隆慶は罪悪感と無力感に苛まれる。もはや愛の奴隷となった自身を自覚しながらも、残されたプライドが邪魔をして、彼は陸晨伽を拒絶し、再び孤独な逃亡を選んだ。同じ夜、寧缺(ねい・けつ)の心もまた平静ではいられない。復讐の炎が胸の内で燃え盛り、夏侯(か・こう)の強大さにプレッシャーを感じながらも、決意はより固いものとなる。李慢慢に教えを請い、夏侯(か・こう)が武道の頂点に限りなく近い存在だと知るも、寧缺(ねい・けつ)は諦めず、自ら決著をつけると誓う。
一方、顔瑟(がんしつ)大師の突然の死は唐国に大きな衝撃を与え、特に李青山は悲しみのあまり病に倒れる。事態を収拾するため、唐王は急遽許世(きょせい)大将軍を呼び戻す。軍部では、林零からの密書が爆弾のように炸裂し、寧缺(ねい・けつ)は窮地に立たされる。林零の挑発と脅迫に、寧缺(ねい・けつ)の怒りはついに爆発。夏侯(か・こう)と林零に過去の罪を償わせることを誓う。激しい戦いの末、寧缺(ねい・けつ)は林零を倒し、彼の西陵(せいりょう)での身分が明らかになるが、寧缺(ねい・けつ)の復讐の道はより険しいものとなる。
隆慶は燕国の都に流れ著き、極貧の生活を送っていた。陸晨伽の献身的な愛も彼の凍てついた心を溶かすことはできず、むしろ絶望の中で自暴自棄になるばかり。しかし、丐幇にいじめられた時、隆慶の心の奥底に眠る誇りが呼び覚まされる。たった一人で形勢逆転し、乞食たちの畏敬の念を集める。だが、陸晨伽への冷淡な態度は変わらず、二人の関係は冷え切ったままだった。
激戦の後、疲労困憊の寧缺は住処に戻ると倒れるように眠りに落ちる。莫山山(ばく・さんさん)の献身的な看病に温かさを感じる寧缺。しかし、外の世界の脅威は消えていない。上官揚羽(じょうかんようう)らの出現により、桑桑(そうそう)は危険に晒される。魚龍幇(ぎょりゅうほう)の斉四(さいし)爺の勇敢な抵抗も事態を変えることはできず、桑桑(そうそう)は牢獄で孤独な大晦日を過ごす。莫山山(ばく・さんさん)に寄り添われながらも、寧缺の心は葛藤と戦っていた。
蓮生から伝授された魔宗の功法に、寧缺は感謝と同時に恐怖も感じていた。その危険性を認識しながらも、完全に手放すことはできない。李慢慢の忠告を受け、夫子(ふうし)に教えを請う以外に解決策はないと悟る。そして、莫山山(ばく・さんさん)には、より真実で、より強い自分を見せると約束する。
第43話 感想
第43話は、主要キャラクターそれぞれが苦難や葛藤に直面し、物語が大きく動き出す重要な回でした。愛憎入り乱れる人間模様と、迫りくる危機感が巧みに描かれ、見ている側も息を呑む展開でした。
特に印象的だったのは、隆慶の変わり果てた姿です。かつてのプライドはどこへやら、どん底の生活の中でもがき苦しむ様子は見ていて辛く、陸晨伽の深い愛情にも応えることができない彼の苦悩が伝わってきました。丐幇との一件で意地を見せたものの、依然として閉ざされた心は、今後の展開を不安にさせます。
一方、寧缺は復讐心と責任感の間で揺れ動きながらも、著実に強さを増していく姿が頼もしいです。夏侯(か・こう)や林零といった強敵との戦いを乗り越え、守るべき人たちのために戦う覚悟を決めた彼の成長は、物語の大きな推進力となっています。桑桑(そうそう)の危機、そして魔宗の功法という新たな課題も、彼の今後の試練となるでしょう。
つづく