夜、筆斎の薄闇い灯りの下で、桑桑(そうそう)は寧缺(ねい・けつ)のために丁寧に湯を用意し、足を洗ってあげた。寧缺(ねい・けつ)は温かい湯に足を浸しながら、桑桑(そうそう)に布団を温めておくからゆっくり休むようにと優しく声をかけた。桑桑(そうそう)は微笑みながら頷き、その後、筆斎を隅々まで綺麗に掃除した。寧缺(ねい・けつ)が寝入ったかを確認しようと静かに寝室を覗くと、彼はすでに深い眠りに落ちていた。寝顔を見つめる桑桑(そうそう)の胸中は複雑だった。才色兼備の莫山山(ばく・さんさん)こそ寧缺(ねい・けつ)にふさわしい伴侶だと感じていた彼女は、苦渋の決断を下す。愛する寧缺(ねい・けつ)の幸せを願い、身を引くことを決意したのだ。

翌朝、まだ夜が明けきらぬうちに、桑桑(そうそう)は静かに荷物をまとめ、愛する寧缺(ねい・けつ)と筆斎を後にした。彼女は宿屋に向かい、雪の中で静かに書をしたためる莫山山(ばく・さんさん)を訪ねた。その清楚な姿に、桑桑(そうそう)は自分の及ばぬところを感じ、心から莫山山(ばく・さんさん)の美しさを褒め称えた。そして、莫山山(ばく・さんさん)から贈られた美しいハンカチを受け取った。意を強くした桑桑(そうそう)は、寧缺(ねい・けつ)の伴侶となるよう莫山山(ばく・さんさん)に懇願し、複雑な思いを抱えながら、きっぱりと背を向けて去っていった。残された莫山山(ばく・さんさん)は、密かに喜びをかみしめていた。

目を覚ました寧缺(ねい・けつ)は、いつものように桑桑(そうそう)を呼んだが、返事はなかった。桑桑(そうそう)が買い物に出かけたと思い、気に留めずに再び眠りについた。しかし、次に目を覚ました時、家の中には誰もいない。桑桑(そうそう)の姿がないことに気づき、寧缺(ねい・けつ)は急に不安に襲われた。急いで魚竜組の斉四(さいし)爺に助けを求め、筆斎に戻ったが、やはり桑桑(そうそう)の姿はなく、家はひっそりと静まり返っていた。金庫を確認すると、銀票が半分なくなっていることに気づき、桑桑(そうそう)が家出したことを悟った寧缺(ねい・けつ)は、李漁に何か知っているか尋ねるため、急いで公主府へ向かった。そこで桑桑(そうそう)が実の両親の元へ戻ったことを知り、怒りに燃えた寧缺(ねい・けつ)は、すぐに学士府へと向かった。

学士府で寧缺(ねい・けつ)は、曽静(ぞうせい)夫妻と激しい言い争いを繰り広げた。桑桑(そうそう)を連れ戻すと主張する寧缺は、裁判を起こすとまで脅した。しかし、曽静(ぞうせい)夫妻は娘は自分たちのそばにいるべきだと譲らず、寧缺の強硬な態度に仮発した。そんな中、桑桑(そうそう)は自ら寧缺に仮論し、君陌(くんはく)に判断を仰ぐことを提案した。しかし、興奮した寧缺は聞く耳を持たず、強引に桑桑(そうそう)を連れ戻そうとし、曽静(ぞうせい)夫妻を棒で追い払おうとした。混乱の中、桑桑(そうそう)は涙を流しながら、自分はもう大人で自分の生き方を選ぶ権利があると訴え、寧缺についていくことを拒否した。

激しい衝突と口論の後、寧缺は徐々に冷静さを取り戻し、桑桑(そうそう)と落ち著いて話し合った。彼は莫山山(ばく・さんさん)への好意を認めながらも、それは桑桑(そうそう)が莫山山(ばく・さんさん)を好きだからだと気づいたのだと告げた。桑桑(そうそう)は莫山山(ばく・さんさん)の素晴らしさを認めていたが、寧缺の心が他に向くことは受け入れられなかった。桑桑(そうそう)の成長と変化を感じた寧缺は、一緒に帰るよう懇願したが、桑桑(そうそう)は首を縦に振らなかった。ついに寧缺は諦めてその場を去り、明日また迎えに来ると約束した。寧缺の寂しげな後ろ姿を見つめる桑桑(そうそう)の目からは、涙が溢れ出ていた。

一人筆斎に残された寧缺は、深い孤独と寂しさに包まれた。桑桑(そうそう)がいない家は、何もかもが色あせて見えた。桑桑との思い出が次々と蘇り、胸は後悔と未練でいっぱいになった。彼はすでに桑桑の存在が当たり前になっており、彼女がいない生活など想像もできなかった。同時に、寧缺は桑桑への本当の気持ち、そしてこれからの二人の関係をどう築いていくべきかを考え始めていた。

第47話の感想

第47話は、桑桑の深い愛情と自己犠牲、そして寧缺の未熟さが際立つ、切ないエピソードでした。桑桑は寧缺の幸せを願い、自分の気持ちを押し殺して身を引く決断をします。その姿は健気で美しく、胸が締め付けられる思いです。彼女は自分の感情よりも寧缺の happiness を優先し、莫山山(ばく・さんさん)に彼を託すという、非常に難しい決断を下しました。この行動は、彼女の深い愛情と強さを示しています。一方、寧缺は桑桑がいなくなって初めて彼女の存在の大きさに気づき、自分の未熟さを痛感します。彼は桑桑の気持ちに気づかず、自分の感情に振り回される姿は、もどかしさを感じさせます。

特に印象的なのは、桑桑が莫山山(ばく・さんさん)に寧缺を託すシーンです。桑桑の複雑な心境、そして莫山山(ばく・さんさん)の戸惑いが繊細に描かれており、二人の女性の心情が痛いほど伝わってきました。また、寧缺が桑桑がいなくなった家をさまようシーンも印象的です。静まり返った家の中で、彼は初めて桑桑の存在の大きさを実感し、後悔の念に苛まれます。このシーンは、寧缺の成長の始まりを予感させます。

つづく