あらすじ
第五十四話は、寧缺が皇宮の外で夏天に偶然出会う場面から始まります。夏侯が彼女の兄だと知った寧缺は、夏侯との確執を明らかにしますが、夏天と李漁の家庭の問題に巻き込まれることを拒否します。
夜になり、寧缺は雨の中朱雀大通りへ向かい、朱雀を発動させて驚神陣を掌握し、都を守ると誓います。一方、掌教は夏侯を利用して寧缺を排除しようと企み、隆慶は力を回復するために修行に励みます。
桑桑は寧缺の書を売って資金を集め、雁鳴湖の購入を支援します。光明殿からの脱出を試みた葉紅魚は、失敗し羅克敵と衝突、羅克敵に怪我を負わせます。隆慶は修行の途中、囚われた聖人に遭遇し、厳しく叱責されます。
そして最後に、寧缺は雁鳴湖の購入に成功し、夏侯との対決に備えます。
ネタバレ
寧缺は皇宮を出て、夜更けに夏天的と出会う。彼女は兄である夏侯と寧缺の確執について尋ねるが、寧缺は李漁との家事には関わりたくないと言い、夏侯とは血で血を洗う深仇であり、相容れないと断言する。夏天的は夏侯の実力が高いことを理由に、彼との直接対決を避けるよう忠告するが、寧缺は揺るがない。別れ際に、夏天的は自分がかつて魔宗の聖女であったことを明かし、寧缺は驚きつつも深く頭を下げて去る。
その夜、風雨の中、寧缺は朱雀天街に赴き、陣眼杵を掲げ、驚神陣を掌握することを宣言する。朱雀の再覚醒と共に、寧缺は正式にこの千年の古陣を継承し、重い責任感に包まれる。都と民を守ることを誓う。
一方、教主は夏侯の帰都と退任を知り、裁決司大神官を遣わして彼を西陵に招き、寧缺の排除を企てる。隆慶は復讐心に燃え、天書を学び、寧缺への復讐と失った力の回復を切望する。寧缺は夏侯の弱点を水だと見抜き、雁鳴湖を買収することを決意する。桑桑は彼の決意を支え、全財産を提供する。
翌日、桑桑は寧缺の書を紅袖招に持ち込み、水珠児に高値で売るよう依頼する。水珠児は巧みにその出所を隠し、鍾大俊の父である鍾離を含む街の有力者を集める。交渉の末、鍾離は五百両の銀で寧缺の「鶏湯帖」を購入し、息子に自慢する。鍾大俊は寧缺を超えることを誓う。
隆慶は修行に没頭し、雑役も厭わず天書を学ぶ。沙字巻を開き、魔宗の饕餮大法に触れた彼は、他者を操ろうとして仮噬を受け、昏倒する。目を覚ました後も、義成師叔の忠告に耳を貸さず、西陵の秘法を乞うが、修練が足りないと言われる。
寧缺は資金調達のため、桑桑と共に賭場へ行き、借金の回収に成功する。さらに斉四爺の援助も得て、雁鳴湖の買収に成功する。湖畔に寧府を築き、夏侯との決戦に備える。桑桑は寧缺の身を案じながらも、彼と共に困難に立ち向かう決意を固める。
葉紅魚は光明殿からの脱出を図るが、教主の追手に囲まれ、激戦の末に力尽きる。隆慶は水汲みの途中、腰斬にされた越五境の聖人と出会い、言葉を交わすが、無礼な態度をとったため掌底で吹き飛ばされる。
西陵では、程立雪が戻り、羅克敵が葉紅魚を独断で追おうとしているのを発見する。天諭大神官が介入し、葉紅魚を重要人物として保護するよう指示する。教主も仲裁に入り、羅克敵に葉紅魚への幹渉を禁じる。
寧缺は湖畔で修練を続け、四師兄と六師兄が作った爆弾を試し、湖面に大きな水しぶきを上げる。迫りくる決戦の激しさを予感させる。
第54話の感想
第54話は、今後の展開を大いに期待させる、盛りだくさんのエピソードでした。寧缺と夏侯の対立が明確化され、いよいよ最終決戦に向けて物語が動き出したと感じます。寧缺の揺るぎない決意と、それを支える桑桑の献身的な姿には胸を打たれました。雁鳴湖の買収劇も、桑桑の機転と寧缺の交渉術が光る見事な展開でした。特に、紅袖招でのやり取りは、水珠児の巧みな話術と、鍾離の滑稽な姿が印象的で、緊迫した状況の中でもクスッと笑える場面が織り込まれているのが良かったです。
一方、隆慶の暴走は、彼の焦りと 絶望 を象徴しているように見えます。力を求めるあまり、禁断の術に手を出し、その結果がどうなるのか、非常に心配です。葉紅魚と西陵の対立も、今後の展開に大きく影響しそうです。掌教の真意がどこにあるのか、そして葉紅魚の運命はどうなるのか、目が離せません。
つづく