あらすじ

第五十五話は、寧缺ねい・けつ夏侯か・こうとの決戦に向けて万全の準備を整える様子を描いています。雁鳴湖に爆弾や陣法を仕掛け、桑桑そうそうからも力強い支えを得ます。一方、隆慶りゅうけいは聖人の導きのもと、通天丸の精製を試みますが、幾度となく失敗。ついには自らの心臓の血を用いるも、成功には至りません。夏侯か・こうは偽の通天丸を服用したことで反噬を受け、掌教しょうきょう寧缺ねい・けつとの戦いを強要されます。また、李漁り・ぎょが寧府を訪れ、夏天か・てん的擁立への協力を寧缺ねい・けつに持ち掛けますが、断られてしまいます。許世きょせい寧缺ねい・けつ夏侯か・こうとの決戦を避けるよう忠告しますが、寧缺ねい・けつの決意は揺るぎません。最後に、知守観で十五年の修行を経て生死の境地を悟った葉青ようせいは、観を出て世を巡ることを決意します。

ネタバレ

雁鳴湖畔で、生死を賭けた戦いが静かに醸成されている。寧缺ねい・けつは実験の中で爆弾の威力を目の当たりにし、その目に新たな光が宿る。彼はすぐさま四師兄と六師兄に爆弾の増産を依頼する。その後、木柚ぼくゆうと共に雁鳴湖を訪れた寧缺ねい・けつは、彼女の見識によってこの地が陣を敷くのに最適な場所だと確信する。夏侯か・こうとの決戦の地と定め、木柚ぼくゆうは10日以内に湖畔に陣を完成させると約束する。

一方、隆慶りゅうけいは再び聖人の隠れ家を訪れ、心の導きを求める。聖人は隆慶りゅうけいが通天丸の秘密を覗き見たことを見抜き、問い詰める。隆慶りゅうけいは弁明するも、聖人から通天丸の貴重さと沙字巻天書にその製法が記されていることを聞かされ、欲望に火がつく。

李慢慢り・まんまんの説得も虚しく、寧缺ねい・けつ夏侯か・こうへの挑戦を決意する。同時に、隆慶りゅうけいは力をつけるため、義成ぎせい師叔から薬鼎を借り、通天丸を精製しようと躍起になる。義成ぎせいの警告にも耳を貸さず、ただひたすら強さを求める。

寧缺ねい・けつ桑桑そうそうと舟に乗り、師兄たちが作った爆弾を湖に仕掛け、夏侯か・こうを待つ。万全の準備を整えながらも、寧缺ねい・けつの心には不安がよぎる。桑桑そうそうは彼の傍らに寄り添い、静かに励ます。小舟の上で、二人の間に温かい情が流れる。

夏侯か・こうは帰路の途中、掌教しょうきょうから授かった通天丸が偽物だと知り、激怒する。掌教しょうきょうの策略に嵌められたものの、抗う術もなく、現状を受け入れるしかない。

李漁り・ぎょ寧缺ねい・けつの屋敷を訪れ、祝いの言葉を述べる一方で、彼を自陣に引き込もうと画策する。しかし、寧缺ねい・けつは唐王への忠誠を誓い、李漁り・ぎょ夏天か・てんの権力争いに関わることを拒否する。

隆慶りゅうけいは通天丸の精製に失敗を重ね、自らの血を捧げても成功しない。絶望の中、彼は天に向かって咆哮する。

許世きょせい将軍は王景略おう・けいりゃくを通して寧缺ねい・けつを呼び出し、警告する。しかし、寧缺ねい・けつは臆することなく仮論し、自らの決意を示す。出自を問いただされても、正々堂々とした態度で答える。

そして、葉青ようせいは生死観で15年の修行を終え、ついに悟りを開き、出関の時を迎える。義成ぎせいは彼に観主の座を継承させようとするが、葉青ようせいは世界への好奇心に駆られ、旅に出ることを選ぶ。

様々な勢力が動き出す中、雁鳴湖での決戦は刻一刻と迫り、運命と信念を賭けた戦いの幕が今、上がろうとしている。

第55話の感想

第55話は、決戦を目前に控えた緊張感と、各キャラクターの思惑が交錯する、非常にスリリングな展開でした。

寧缺ねい・けつは著々と夏侯か・こうとの決戦の準備を進めており、爆弾という近代兵器を用いる戦略は、これまでの物語の流れを大きく変える可能性を秘めています。木柚ぼくゆうの協力も得て、万全の体製を整えようとする寧缺ねい・けつの姿からは、静かな闘誌が感じられました。

対照的に、隆慶りゅうけいは焦燥感に駆られています。力への渇望から禁断の通天丸に手を出し、その代償として精神的にも追い詰められていく様子は、見ていて痛々しいものがありました。

掌教しょうきょうの策略によって翻弄される夏侯か・こう、権力争いに巻き込もうとする李漁り・ぎょ、そして静かに出番を待つ葉青ようせいなど、それぞれのキャラクターの動向が今後の物語をどのように左右するのか、非常に楽しみです。

つづく