雁鳴湖畔で、生死を賭けた戦いが静かに醸成されている。寧缺(ねい・けつ)は実験の中で爆弾の威力を目の当たりにし、その目に新たな光が宿る。彼はすぐさま四師兄と六師兄に爆弾の増産を依頼する。その後、木柚と共に雁鳴湖を訪れた寧缺(ねい・けつ)は、彼女の見識によってこの地が陣を敷くのに最適な場所だと確信する。夏侯(か・こう)との決戦の地と定め、木柚は10日以内に湖畔に陣を完成させると約束する。
一方、隆慶は再び聖人の隠れ家を訪れ、心の導きを求める。聖人は隆慶が通天丸の秘密を覗き見たことを見抜き、問い詰める。隆慶は弁明するも、聖人から通天丸の貴重さと沙字巻天書にその製法が記されていることを聞かされ、欲望に火がつく。
李慢慢の説得も虚しく、寧缺(ねい・けつ)は夏侯(か・こう)への挑戦を決意する。同時に、隆慶は力をつけるため、義成(ぎせい)師叔から薬鼎を借り、通天丸を精製しようと躍起になる。義成(ぎせい)の警告にも耳を貸さず、ただひたすら強さを求める。
寧缺(ねい・けつ)は桑桑(そうそう)と舟に乗り、師兄たちが作った爆弾を湖に仕掛け、夏侯(か・こう)を待つ。万全の準備を整えながらも、寧缺(ねい・けつ)の心には不安がよぎる。桑桑(そうそう)は彼の傍らに寄り添い、静かに励ます。小舟の上で、二人の間に温かい情が流れる。
夏侯(か・こう)は帰路の途中、掌教(しょうきょう)から授かった通天丸が偽物だと知り、激怒する。掌教(しょうきょう)の策略に嵌められたものの、抗う術もなく、現状を受け入れるしかない。
李漁は寧缺(ねい・けつ)の屋敷を訪れ、祝いの言葉を述べる一方で、彼を自陣に引き込もうと画策する。しかし、寧缺は唐王への忠誠を誓い、李漁と夏天(か・てん)の権力争いに関わることを拒否する。
隆慶は通天丸の精製に失敗を重ね、自らの血を捧げても成功しない。絶望の中、彼は天に向かって咆哮する。
許世(きょせい)将軍は王景略(おう・けいりゃく)を通して寧缺を呼び出し、警告する。しかし、寧缺は臆することなく仮論し、自らの決意を示す。出自を問いただされても、正々堂々とした態度で答える。
そして、葉青は生死観で15年の修行を終え、ついに悟りを開き、出関の時を迎える。義成(ぎせい)は彼に観主の座を継承させようとするが、葉青は世界への好奇心に駆られ、旅に出ることを選ぶ。
様々な勢力が動き出す中、雁鳴湖での決戦は刻一刻と迫り、運命と信念を賭けた戦いの幕が今、上がろうとしている。
第55話の感想
第55話は、決戦を目前に控えた緊張感と、各キャラクターの思惑が交錯する、非常にスリリングな展開でした。
寧缺は著々と夏侯(か・こう)との決戦の準備を進めており、爆弾という近代兵器を用いる戦略は、これまでの物語の流れを大きく変える可能性を秘めています。木柚の協力も得て、万全の体製を整えようとする寧缺の姿からは、静かな闘誌が感じられました。
対照的に、隆慶は焦燥感に駆られています。力への渇望から禁断の通天丸に手を出し、その代償として精神的にも追い詰められていく様子は、見ていて痛々しいものがありました。
掌教(しょうきょう)の策略によって翻弄される夏侯(か・こう)、権力争いに巻き込もうとする李漁、そして静かに出番を待つ葉青など、それぞれのキャラクターの動向が今後の物語をどのように左右するのか、非常に楽しみです。
つづく