あらすじ
第五十九話は、早朝に於ける夏侯の振る舞いから始まります。林光遠将軍の冤罪を頑なに認めず、唐王と激しい言い争いを繰り広げた後、憤然と退出する夏侯の姿が描かれています。
林光遠の汚名を晴らすべく、寧缺は夏侯に決闘を申し入れます。生死を賭けた真剣勝負の申し出に、場は騒然となります。その後、唐王は夏侯と李沛言を庶民に落とす勅命を出し、林光遠をはじめとする人々の名誉回復を宣言します。
この機に寧缺は自らの出生の秘密を明かします。自らが林光遠の実子ではなく、将軍府の門番の息子であったこと、そして親友である卓爾の悲劇を語り、居合わせた人々の同情を集めます。
一方、李青山は寧缺に対し、陣眼杵の引き渡しを要求します。李漁は寧缺の身を案じ、今後の動向を気にかけます。
そんな中、葉紅魚は寧缺の武芸の向上に力を貸します。そして寧缺は桑桑のために金釵を手作りし、二人の絆の深さが改めて感じられる場面で幕を閉じます。
ネタバレ
唐の朝廷で、波乱が静かに幕を開けた。かつての王爵、李沛言は跪き、爵位を自ら放棄し許しを乞うた。しかし、唐王の心は揺れたままだった。翌日、夏侯将軍は堂々と入朝するも、突然辞職を申し出る。唐王は驚きながらもこれを認め、15年前の林光遠将軍の冤罪の真相を問いただした。
夏侯は冷たく、林光遠の裏切りは事実だと主張し、証拠がないことを盾に、寧缺への屈服を強要されていると唐王を責めた。長年の功績を盾に、旧事にとらわれるべきではないと訴える夏侯。しかし、林光遠の名誉回復を誓う唐王は一歩も引かず、両者の緊張は最高潮に達し、夏侯は憤然と退出した。この一部始終を屏風の後ろから見守っていた夏天は、ただため息をつくことしかできなかった。怒りに燃える唐王は退朝を宣言し、後宮へ戻ると、夏天は言葉少なにその後を追った。
宮外では、寧缺と桑桑が雪の中、夏侯を待っていた。李沛言や文武百官も次々と到著する。寧缺は林光遠の冤罪を晴らすため、夏侯との決闘を誓い、自らの掌を切り裂き、血で衣を染めた。桑桑は心を痛めながらも、彼を止めなかった。夏侯もまた挑戦を受け入れ、左手で掌を切り、三日後の雁鳴湖での決闘を約束した。
その時、唐王が現れ、夏侯の兵権剝奪と平民への降格、李沛言の罷免と平民への降格を宣言した。同時に、林光遠将軍と全ての犠牲者の名誉回復を宣言し、寧缺への補償を求めた。寧缺は感謝しつつも、将軍府の使用人、つまり自分の養父母が含まれていないことに気づき、自分が門番の息子であること、そして林光遠の事件で被害を受けた友人卓爾と村人たちのことにも言及した。その言葉に、在場の者は皆心を動かされた。
寧缺は夏侯が免死金牌を持っていることを知り、決闘の必要性を訴え、唐王はついにそれを許可した。その後、李青山は寧缺に会い、決闘の公平性を保つため、顔瑟大師の陣眼杵を返却するように求めた。寧缺は既に唐王に渡したことを伝え、勝利すれば必ず返すと約束した。
一方、李漁は寧缺の身を案じ、華山岳は寧缺の勝利が宮廷の勢力図を変える可能性に気づいていた。桑桑は寧缺に羊のモツ煮込みを作り、葉紅魚はそれを味わいながら、寧缺の剣術向上のため、実践を通して彼を助けることを決意した。葉紅魚の指導の下、寧缺は急速に成長し、二人の間には静かな共感が芽生えていった。
決戦前夜、寧缺は四師兄と六師兄の鍛冶屋を訪れ、桑桑のために美しい金のかんざしを手作りした。二人は抱き合い、迫り来る嵐と未知の危険を退けるかのように、互いの温もりを確かめ合った。この決闘は、夏侯への復讐であると同時に、正義と真実への強い信念の証でもあった。
第59話の感想
第59話は、緊張感と感動が入り混じる、非常にドラマチックなエピソードでした。特に印象的だったのは、寧缺の揺るぎない正義感と、桑桑の献身的な愛情です。
林光遠将軍の冤罪を晴らすため、自らの危険を顧みず夏侯将軍との決闘を決意する寧缺の姿は、まさに主人公の風格を感じさせました。掌を切り裂き、血で誓いを立てるシーンは、彼の強い意誌と覚悟を象徴的に表しており、観る者の心を強く揺さぶります。同時に、そんな寧缺を優しく見守り、支え続ける桑桑の愛情もまた、深く胸を打ちます。彼女が作る羊のモツ煮込みや、手作りのかんざしは、寧缺にとってどれほどの心の支えとなっていることでしょう。
また、唐王の苦悩と決断も、物語に深みを与えています。15年前の事件の真相究明と、国と民の安定の間で揺れ動く彼の姿は、為政者の重圧と責任を改めて感じさせます。最終的に林光遠将軍の名誉回復を決断するシーンは、非常にカタルシスがありました。
つづく