唐の朝廷で、波乱が静かに幕を開けた。かつての王爵、李沛言は跪き、爵位を自ら放棄し許しを乞うた。しかし、唐王の心は揺れたままだった。翌日、夏侯(か・こう)将軍は堂々と入朝するも、突然辞職を申し出る。唐王は驚きながらもこれを認め、15年前の林光遠将軍の冤罪の真相を問いただした。

夏侯(か・こう)は冷たく、林光遠の裏切りは事実だと主張し、証拠がないことを盾に、寧缺(ねい・けつ)への屈服を強要されていると唐王を責めた。長年の功績を盾に、旧事にとらわれるべきではないと訴える夏侯(か・こう)。しかし、林光遠の名誉回復を誓う唐王は一歩も引かず、両者の緊張は最高潮に達し、夏侯(か・こう)は憤然と退出した。この一部始終を屏風の後ろから見守っていた夏天(か・てん)は、ただため息をつくことしかできなかった。怒りに燃える唐王は退朝を宣言し、後宮へ戻ると、夏天(か・てん)は言葉少なにその後を追った。

宮外では、寧缺(ねい・けつ)と桑桑(そうそう)が雪の中、夏侯(か・こう)を待っていた。李沛言や文武百官も次々と到著する。寧缺(ねい・けつ)は林光遠の冤罪を晴らすため、夏侯(か・こう)との決闘を誓い、自らの掌を切り裂き、血で衣を染めた。桑桑(そうそう)は心を痛めながらも、彼を止めなかった。夏侯(か・こう)もまた挑戦を受け入れ、左手で掌を切り、三日後の雁鳴湖での決闘を約束した。

その時、唐王が現れ、夏侯(か・こう)の兵権剝奪と平民への降格、李沛言の罷免と平民への降格を宣言した。同時に、林光遠将軍と全ての犠牲者の名誉回復を宣言し、寧缺(ねい・けつ)への補償を求めた。寧缺(ねい・けつ)は感謝しつつも、将軍府の使用人、つまり自分の養父母が含まれていないことに気づき、自分が門番の息子であること、そして林光遠の事件で被害を受けた友人卓爾(たくじ)と村人たちのことにも言及した。その言葉に、在場の者は皆心を動かされた。

寧缺(ねい・けつ)は夏侯(か・こう)が免死金牌を持っていることを知り、決闘の必要性を訴え、唐王はついにそれを許可した。その後、李青山は寧缺(ねい・けつ)に会い、決闘の公平性を保つため、顔瑟(がんしつ)大師の陣眼杵を返却するように求めた。寧缺(ねい・けつ)は既に唐王に渡したことを伝え、勝利すれば必ず返すと約束した。

一方、李漁は寧缺(ねい・けつ)の身を案じ、華山岳(かざんがく)は寧缺(ねい・けつ)の勝利が宮廷の勢力図を変える可能性に気づいていた。桑桑(そうそう)は寧缺(ねい・けつ)に羊のモツ煮込みを作り、葉紅魚(よう・こうぎょ)はそれを味わいながら、寧缺(ねい・けつ)の剣術向上のため、実践を通して彼を助けることを決意した。葉紅魚(よう・こうぎょ)の指導の下、寧缺は急速に成長し、二人の間には静かな共感が芽生えていった。

決戦前夜、寧缺は四師兄と六師兄の鍛冶屋を訪れ、桑桑(そうそう)のために美しい金のかんざしを手作りした。二人は抱き合い、迫り来る嵐と未知の危険を退けるかのように、互いの温もりを確かめ合った。この決闘は、夏侯(か・こう)への復讐であると同時に、正義と真実への強い信念の証でもあった。

第59話の感想

第59話は、緊張感と感動が入り混じる、非常にドラマチックなエピソードでした。特に印象的だったのは、寧缺の揺るぎない正義感と、桑桑(そうそう)の献身的な愛情です。

林光遠将軍の冤罪を晴らすため、自らの危険を顧みず夏侯(か・こう)将軍との決闘を決意する寧缺の姿は、まさに主人公の風格を感じさせました。掌を切り裂き、血で誓いを立てるシーンは、彼の強い意誌と覚悟を象徴的に表しており、観る者の心を強く揺さぶります。同時に、そんな寧缺を優しく見守り、支え続ける桑桑(そうそう)の愛情もまた、深く胸を打ちます。彼女が作る羊のモツ煮込みや、手作りのかんざしは、寧缺にとってどれほどの心の支えとなっていることでしょう。

また、唐王の苦悩と決断も、物語に深みを与えています。15年前の事件の真相究明と、国と民の安定の間で揺れ動く彼の姿は、為政者の重圧と責任を改めて感じさせます。最終的に林光遠将軍の名誉回復を決断するシーンは、非常にカタルシスがありました。

つづく