深い夜、豪雨の中、寧缺(ねい・けつ)は護衛たちとの激しい戦いの真っ隻中にいた。満身創痍になりながらも、傷ついた朝小樹(ちょう・しょうしゅ)を守るため、必死に戦っていた。しかし、体力の限界が近づき、次第に劣勢に追い込まれていく。まさに絶体絶命のその時、朝小樹(ちょう・しょうしゅ)は驚異的な意誌力で意識を取り戻し、僅かながら力を取り戻して、襲いかかる護衛たちを次々と撃退した。二人は辛くも勝利を収めたものの、疲労困憊し、雨の中を急いで朝府を後にした。
その時、一台の馬車が正面から現れた。突然、朝小樹(ちょう・しょうしゅ)は倒れ込み、全身を痙攣させ、苦しみ始めた。それを見た寧缺(ねい・けつ)は、迷わず馬車に向けて矢を放ったが、目に見えない力によって簡単に跳ね返されてしまった。彼はすぐさま刀を抜いて馬車に突進したが、苦悶しながらも立ち上がった朝小樹(ちょう・しょうしゅ)に剣で弾き飛ばされてしまった。その時、馬車の中から王景略(おう・けいりゃく)という名の修行者がゆっくりと姿を現した。その深不可測な力に、朝小樹(ちょう・しょうしゅ)は勝ち目がないと悟り、寧缺(ねい・けつ)に逃げるよう促した。
しかし、寧缺(ねい・けつ)は簡単に諦めるような男ではなかった。再び王景略(おう・けいりゃく)に挑みかかったが、まるで蟻が巨木に挑むようなもので、軽く一振りで数メートルも弾き飛ばされてしまった。王景略(おう・けいりゃく)は寧缺(ねい・けつ)をただの凡人だと嘲笑い、自分の手で殺す価値もないと吐き捨てた。それを見た朝小樹(ちょう・しょうしゅ)は、全身の気を集中し、鋭い剣光を放ち、王景略(おう・けいりゃく)に斬りかかった。激しい戦いが繰り広げられる中、突如として白い円形の符が現れ、顔瑟(がんしつ)大師が駆けつけた。圧倒的な法力で王景略(おう・けいりゃく)を封じ込め、そのまま連れ去ってしまった。
寧缺(ねい・けつ)はそこで初めて、屋台で字を書いて飴を交換していた老人が、朝小樹(ちょう・しょうしゅ)が言っていた秘密兵器、顔瑟(がんしつ)大師であることに気づいた。朝小樹(ちょう・しょうしゅ)は多くを語らず、ただ微笑んだ。一方、華山岳(かざんがく)たちは常思威(じ・ょうしい)、劉五、費六の救出に成功していたが、崔得禄(さい・とくろく)は乱戦の中で負傷し、包囲されてしまい、絶望の淵で自害した。死に際まで唐人を罵り、燕国万歳を叫び続けた。
崇明(すうめい)は朝小樹(ちょう・しょうしゅ)の後ろ盾が唐王だと知り、激怒し、復讐を誓った。燕唐戦争での敗北、そして人質としての屈辱的な日々を思い出し、唐国の根幹を揺るがすため、まずは書院(しょいん)を叩くことを決意した。一方、唐王は自ら親王府を訪れ、李沛言を問い詰めた。李沛言は敗北を悟りながらも、王位継承の夢破れた無念さを未だに抱いていた。唐王は彼を諭し、一人仮省するよう言い残して親王府を後にした。
朝小樹(ちょう・しょうしゅ)と寧缺(ねい・けつ)は家に戻り、桑桑(そうそう)が用意してくれた温かい麺をすすった。寧缺(ねい・けつ)の碗には、桑桑(そうそう)特製の目玉焼きが添えられていた。朝小樹(ちょう・しょうしゅ)は命の恩人である寧缺(ねい・けつ)に感謝し、必ず報いると約束し、自分の後ろ盾が唐王であることを明かした。翌日、朝小樹(ちょう・しょうしゅ)は寧缺(ねい・けつ)に新しい服を用意し、共に宮殿へ行き、唐王に謁見させた。寧缺(ねい・けつ)は宮殿の中を興味深げに見回し、大胆にも玉座に座ってしまった。一方、唐王は朝廷で王景略(おう・けいりゃく)への処分を宣布し、驚くべきことに自身が魚龍幇(ぎょりゅうほう)の真の頭領であることを明かし、周囲を驚愕させた。
そして、寧缺(ねい・けつ)は御書房(ごしょぼう)で唐王の書を模写しながら書道の練習をしていたが、宮廷の作法を知らず、侍衛長の徐崇山(じょすうざん)に連れ出されてしまう。徐崇山(じょすうざん)は寧缺を叱責する一方で、魚龍幇(ぎょりゅうほう)の秘密を語り、寧缺はこの世界の深淵を垣間見ることになった。これら全てが、寧缺がこれから歩む、試練とチャンスに満ちた修行の道の始まりを予感させていた。
第七話 感想
第七話は、寧缺と朝小樹(ちょう・しょうしゅ)の強い絆、そして物語の核心へと迫る重要なエピソードでした。豪雨の中の死闘は、息を呑むような迫力。体力の限界を迎えた寧缺を庇う朝小樹(ちょう・しょうしゅ)、そして再び立ち上がり敵を倒す朝小樹(ちょう・しょうしゅ)の姿は、二人の信頼関係の深さを物語っています。
王景略(おう・けいりゃく)の登場は、この世界の広さと、まだ見ぬ強大な力の存在を闇示しており、今後の展開への期待を高めます。顔瑟(がんしつ)大師の登場シーンは、まさに圧巻。謎めいた雰囲気と圧倒的な強さは、物語に更なる深みを与えています。
崔得禄(さい・とくろく)の最期は、悲しくも印象的でした。死に際まで燕国への忠誠を誓う姿は、敵ながらあっぱれと言えるでしょう。そして、唐王が魚龍幇(ぎょりゅうほう)の頭領であるという衝撃の事実は、今後の物語を大きく左右することになりそうです。
寧缺の宮殿での振る舞いは、彼の純粋さと大胆さを際立たせています。何も知らないからこその行動は、見ていて微笑ましい仮面、ハラハラさせられる場面もありました。徐崇山(じょすうざん)との出会いは、寧缺にとって大きな転機となるでしょう。
つづく