遠い昔、天地開闢の頃、人、神、妖の三界が共存する広大な大荒の世界。皓翎、辰栄、西炎(せいえん)王の三大神族が鼎立し、それぞれ領土を治めていた。豊かな物産を誇る皓翎、肥沃な土地と多くの人口を擁する辰栄、そして厳格な法と強大な軍事力を持つ西炎(せいえん)王。
物語は西炎(せいえん)王の王姫(おうき)、西陵珩(せいりょうけい)の運命から始まる。平和のために皓翎(こうれい)王に嫁ぐも、心には辰栄の将軍、赤宸(せきしん)への想いを秘めていた。皓翎で娘の小夭(しょうよう)を産み、小夭(しょうよう)の従兄(いとこ)である瑲玹(そうげん)と共に朝雲峰で育ち、二人はまるで兄弟姉妹のように仲睦まじかった。
しかし、平和は長く続かなかった。西炎(せいえん)王の九王、夷澎の私怨により援軍要請が無視され、洵山の戦いで西炎(せいえん)王は大敗。西炎(せいえん)王仲意将軍は戦死し、六千の若水族の戦士も全滅した。この悲劇は西陵珩(せいりょうけい)の運命を一変させる。彼女は皓翎(こうれい)王のもとを去り、小夭(しょうよう)と瑲玹(そうげん)を連れて西炎(せいえん)王山へ戻り、一族と共に仲意を弔った。
仲意の墓の前で、四嫂の昌僕(しょうぼく)は夷澎の罪を責め、悲しみのあまり自刃し、夫と共に葬られた。息を引き取る間際、彼女は愛の象徴である若木の花を瑲玹(そうげん)に託し、真実の愛を見つけるよう願った。
失意の西陵珩(せいりょうけい)は家族と共に朝雲峰に隠居し、静かな生活を送る。小夭(しょうよう)と瑲玹(そうげん)は鳳凰の木の下で遊び、幼少期の喜びを分かち合い、愛する者を失った悲しみを共に乗り越えた。瑲玹(そうげん)が両親を偲んで泣く時、小夭(しょうよう)はいつも傍にいて慰めた。
だが、幸せな日々は長くは続かなかった。夫への失望と自責から、西陵珩(せいりょうけい)は病に倒れる。臨終の時、彼女は瑲玹(そうげん)と小夭(しょうよう)を呼び、互いに支え合うよう言い残した。西陵珩(せいりょうけい)の死後、朝雲峰はさらに寂しくなり、瑲玹(そうげん)は西炎(せいえん)王の氏族の子弟からいじめられるようになる。小夭(しょうよう)は勇敢に彼を守った。
ある夜、瑲玹(そうげん)は一人で涙を流す西陵珩(せいりょうけい)を見つけ、辰栄軍の侵攻を知ることになる。西陵珩(せいりょうけい)は再び戦場へ向かう。出発前、彼女は小夭(しょうよう)の安全を願って「神兵」と呼ばれる匕首を瑲玹(そうげん)に託した。鳳凰の花が鮮やかに咲く中、西陵珩(せいりょうけい)は出陣するが、彼女と赤宸(せきしん)が共に戦死したという知らせが皆を驚かせた。
この戦の後、辰栄は滅亡し、西炎(せいえん)王が大荒を統一。三国の鼎立は二国対立へと変化した。小夭(しょうよう)を権力争いから守るため、西炎(せいえん)王は彼女を玉(ぎょく)山へ送り、王母(おうぼ)に修行させることにした。瑲玹(そうげん)は別れを惜しむも、自分が強くなることが小夭(しょうよう)を守る最善の道だと理解していた。碧玉の桑の木の下で二人は別れを告げ、小夭(しょうよう)は九尾の狐の尻尾を瑲玹(そうげん)に形として残し、玉(ぎょく)山への旅に出た。
三百年後、中原はかつてない平和と繁栄を迎えていた。かつて盗賊が横行していた清水町も、今では秩序を取り戻し活気に満ちていた。小夭(しょうよう)は玟小六(びんしょうりく)と名を変え、医術で名を馳せる「六哥」として暮らしていた。瑲玹(そうげん)は軒老板として清水町を訪れるも、小夭と再会することは葉わず、二人の運命は再び引き裂かれてしまうのだった。
第1話の感想
「長相思」第1話は、壮大な世界観と魅力的なキャラクターたちによって、一気に物語の世界へと引き込まれました。神話的な要素と人間ドラマが巧妙に織り交ぜられ、今後の展開への期待感が高まります。
特に印象的だったのは、西陵珩(せいりょうけい)の壮絶な運命です。国のために愛のない結婚をし、愛する人を想いながらも娘と甥を懸命に育て、最後は戦場で散っていく姿は、深い悲しみと感動を覚えました。平和を願う彼女の強い意誌と、抗えない運命の残酷さが胸を締め付けます。
小夭と瑲玹(そうげん)の幼少期の描写も心に残りました。無邪気に遊ぶ二人の姿は、過酷な運命に翻弄される彼らの未来を闇示しているようで、切なさを覚えます。互いを支え合う二人の絆が、今後どのように変化していくのか、注目したいポイントです。
つづく