夜空に輝く花火。その光に照らされた玟小六(びんしょうりく)の顔には、複雑な感情が浮かんでいた。恋人たちの甘い姿に憧憬を抱きながらも、男装の自分自身に引け目を感じていたのだ。数百年の間、女の姿を隠してきた彼女の中で、女性としての渴望は強まる一方で、本来の姿を見られることへの恐怖もまた大きかった。

そんな玟小六(びんしょうりく)を、瑲玹(そうげん)は優しく慰め、自信を持つように励ました。二人は運命を変えるため、玉(ぎょく)山へと旅立つことを決意する。翌日、阿念(あんねん)を皓翎(こうれい)国へ送り返す任務を負った蓐収(じゅくしゅう)は、阿念(あんねん)の問いかけをかわしたり、美味しいもので気を逸らしたりと、彼女の不満を鎮めようと苦心する。

一方、塗⼭璟(とざんけい)のもとへ薬を届けに来た防風意映(ぼうふういいえい)は、偶然にも彼の著替えの場面に遭遇してしまう。傷だらけの彼の体に驚き、慌ててその場を逃げ出した防風意映(ぼうふういいえい)。これは、彼女との溝を分からせるための塗⼭璟(とざんけい)の策略だった。しかし、防風意映(ぼうふういいえい)の心は既に塗山篌(とざん こう)に傾いており、彼女が塗⼭璟(とざんけい)に近づくのは、塗山篌(とざん こう)の族長就任を助けるためでしかなかった。

玉(ぎょく)山に到著した玟小六(びんしょうりく)は、緊張を隠せないでいた。しかし、玉(ぎょく)山の静けさと美しさ、特に広大な桃林は、彼女の心を徐々に落ち著かせていく。王母(おうぼ)は自ら玟小六(びんしょうりく)の脈を取り、玉(ぎょく)山に留まり霊力を回復させるよう告げる。そして、望むなら王母(おうぼ)の地位を継ぎ、玉(ぎょく)山を治めることもできると示唆する。だが、玟小六(びんしょうりく)はその栄誉の裏にある自由の束縛を理解し、申し出を断った。王母(おうぼ)は無理強いせず、桃の枝で玟小六(びんしょうりく)に触れ、若さを保つ駐顔花を授ける。

王母(おうぼ)の導きで瑶池に飛び込んだ玟小六(びんしょうりく)。花びらに囲まれながら、駐顔花がゆっくりと咲き、彼女はついに美しい娘の姿を取り戻す。その光景を目にした瑲玹(そうげん)の胸には、様々な思い出がよみがえり、言葉はなくとも二人の間には確かな絆が感じられた。玟小六(びんしょうりく)は喜びを感じながらも、真の姿を見られることへの不安も抱いていた。

五神山に戻り、初めて女装で家族の前に現れた玟小六(びんしょうりく)。それぞれの仮応は様々だった。皓翎(こうれい)王は小夭(しょうよう)の額の印を見て、過去の記憶が蘇る。一方、阿念(あんねん)はこの突然の変化を受け入れられず、自分の地位を脅かす者だと誤解し、瑲玹(そうげん)と衝突した末に席を立ってしまう。

小夭(しょうよう)の帰還を祝うため、皓翎(こうれい)王は盛大な告祭の儀式を催し、小夭(しょうよう)に複雑な宮廷礼儀を学ぶよう命じる。阿念(あんねん)の嫉妬は再び燃え上がり、小夭(しょうよう)に手を出してしまうが、蓐収(じゅくしゅう)が間一髪で止めに入る。こうした出来事を通して、小夭(しょうよう)は自衛の必要性を痛感し、薬の準備を始める。

時を同じくして、清水町では石先生の物語が人々の注目を集めていた。皓翎(こうれい)王姫(おうき)の波乱万丈な人生は、街の話題となり、彼女の様々な顔を持つ生き方は羨望の的となる。遠くでその話を聞いていた相柳(そうりゅう)は、複雑な気持ちを抱いていた。かつて玟小六(びんしょうりく)が語った孤独は、もしかしたら彼女を守るための偽りだったのかもしれないと、彼は気づき始める。

この物語で、玟小六(びんしょうりく)は外見だけでなく、内面においても自己への疑念から、ありのままの自分を肯定できるようになるまでの変化を遂げた。そして、彼女を取り巻く家族や友人、複雑な感情の絡み合いは、今後さらなる試練が待ち受けていることを予感させる。

第18話 感想

第18話は、玟小六(びんしょうりく)の大きな転換点となるエピソードでした。長らく男装で生きてきた彼女が、ついに本来の女性としての姿を取り戻し、小夭(しょうよう)として新たな人生を歩み始める。その姿は美しく、同時に彼女の抱える不安や葛藤も繊細に描かれていました。

特に印象的だったのは、瑶池での変身シーン。花びらに包まれながら、ゆっくりと咲き誇る駐顔花と共に女性へと変わる小夭(しょうよう)の姿は、幻想的で息を呑むほど美しいものでした。同時に、瑲玹(そうげん)の表情や、言葉少ないながらも二人の間に流れる空気感から、彼らの強い絆を感じることができ、胸が熱くなりました。

しかし、喜びと共に訪れたのは、新たな試練。皓翎(こうれい)王との再会は感動的でしたが、阿念(あんねん)の嫉妬や仮発は、小夭(しょうよう)の今後の苦難を予感させます。家族との関係性の変化、そして宮廷での複雑な人間関係の中で、彼女がどのように立ち回っていくのか、今後の展開が非常に気になります。

また、防風意映(ぼうふういいえい)と塗⼭璟(とざんけい)の関係性、そして相柳(そうりゅう)の複雑な心情も、物語に深みを与えています。それぞれの思惑が交錯する中で、小夭(しょうよう)を中心とした人間模様がどのように変化していくのか、目が離せません。

つづく