清水(せいすい)鎮での穏やかな日々、特に相柳(そうりゅう)との試薬の日々を懐かしむ玟小六(びんしょうりく)。彼女は狌狌鏡で相柳(そうりゅう)の姿を見ながら物思いに耽り、皓翎(こうれい)王が近づいてきたことにも気づかない。王は鏡に映る相柳(そうりゅう)を見て、玟小六(びんしょうりく)が塗山家の小狐に心を寄せていると勘違いするが、玟小六(びんしょうりく)は数百年の男装経験から、もはや乙女の恋心はないと笑ってごまかす。
皓翎(こうれい)王姫(おうき)帰還を祝う宴が近づき、塗⼭璟(とざんけい)は⾚⽔豊隆(せきすいほうりゅう)(せきすいほうりゅう)、辰栄馨(しんえいけい)悦(しんえい けいえつ)と共に五神山へ。瑲玹(そうげん)は自ら出迎え、自分の正体を明かす。馨悦は喜びと恥ずかしさで顔を赤らめ、身分差のある恋への決意を新たにする。豊隆は鷹揚に構え、瑲玹(そうげん)の正体も気にせずに対局を申し込む。しかし、玟小六(びんしょうりく)の姿が見えない璟と、上の空の瑲玹(そうげん)は対局に集中できず、豊隆に勝利を譲ってしまう。
瑲玹(そうげん)は玟小六(びんしょうりく)を訪ね、璟や豊隆との関係、そして将来璟と敵対する可能性を話し、玟小六(びんしょうりく)を悩ませる。玟小六は瑲玹(そうげん)の味方だと断言し、彼の王座奪還を誓う。宴の前夜、阿念(あんねん)の策略で玟小六は皓翎(こうれい)王が赤宸(せきしん)を思い出す赤い礼服を著ることになり、注目を集める。人混みの中には、相柳(そうりゅう)に価た男が複雑な表情で意味深な笑みを浮かべている。
宴の後、皓翎(こうれい)王は朝暉殿へ、玟小六は明瑟殿へ戻る。璟は玟小六を想い、瑲玹(そうげん)を通して山麓の龍骨獄外で会う約束をする。瑲玹(そうげん)は冗談めかして伝えながらも内心複雑で、璟が去ると表情は曇る。
一方、相柳(そうりゅう)に操られた阿念(あんねん)は玟小六を崖から突き落とす。泳ぎに自信のある玟小六だが、海中で相柳(そうりゅう)に遭遇し、キスと引き換えに命を救うと迫られる。玟小六は拒否し、強い意誌を示す。岸に辿り著くも、生死の境を彷徨った恐怖を味わう。相柳は玟小六の嘘を責めるが、彼女の真摯な言葉に怒りを鎮め、「毒薬」のことも気にしない。
なぜキスを拒否したのかと問われ、玟小六は感情の渦に巻き込まれるのを恐れたと答える。相柳は拒絶されたと思い込み、玟小六を孤島に置き去りにする。璟との約束を守るため、玟小六は必死に泳ぎ、待ち受けていた璟に助けられる。この様子を陰から見ていた相柳は、玟小六への想いの深さに苦しみ、離戎老伯(りじゅうろうはく)の言葉通り、情蠱は自身を傷つけると悟る。九つの命を持つ彼も心は一つ、一度捧げたら二度と戻らない。
第19話 感想
第19話は、玟小六と相柳の関係性が大きく揺れ動く、胸が締め付けられるようなエピソードでした。特に、海中でのキスシーンは、二人の複雑な感情がぶつかり合う名シーンと言えるでしょう。玟小六は、相柳の申し出を拒否することで、自分の意誌の強さ、そして彼への想いの深さを同時に示しました。同時に、相柳の歪んだ愛情表現、そしてそれに対する玟小六の恐れも描かれており、二人の関係の危うさが際立っていました。
玟小六は瑲玹(そうげん)、塗⼭璟(とざんけい)、相柳という三人の男性の間で揺れ動き、それぞれの想いに応えようとする姿が切ないです。瑲玹(そうげん)への忠誠、塗⼭璟(とざんけい)への愛情、そして相柳への複雑な感情。彼女が背負う重圧は計り知れません。特に、瑲玹(そうげん)と塗⼭璟(とざんけい)の間で板挟みになる状況は、今後の展開を闇示しているようで、不安を掻き立てられます。
一方、相柳は玟小六への想いを自覚しながらも、素直に表現できないもどかしさが伝わってきました。離戎老伯(りじゅうろうはく)の言葉が、彼の心に深く突き刺さっていることが窺えます。九つの命を持つ彼でさえ、心は一つ。そのたった一つの心を玟小六に捧げながらも、拒絶されることで、彼のプライドは深く傷つけられたのでしょう。
つづく