夕暮れ時、玟小六(びんしょうりく)は一日中忙しかった出産介助を終え、兎の妖怪の出産で付いた草や埃を身にまとっていた。帰路、偶然阿念(あんねん)に会い、彼女のさりげない嫌悪の表情に胸を締め付けられる。傍らの瑲玹(そうげん)は、男装の玟小六(びんしょうりく)をじっと見つめるも、長い歳月と彼女の巧妙な変装により、探し求めていた妹・小夭(しょうよう)とは気づかない。
かつて、瑲玹(そうげん)は西炎(せいえん)王での苦難の歳月を逃れ、皓翎(こうれい)国の質子となった。そこで二王女・阿念(あんねん)と深い縁を結ぶ。今回、辰栄の残党捜索を名目に清水町を訪れた真の目的は、行方不明の妹・小夭(しょうよう)を探すことだった。清水町に伝わる不思議な話、言葉を話す霊石が老人の姿で妖怪たちに神界の秘密を語るという噂は、瑲玹(そうげん)にとって一縷の望みだった。
医館に戻った玟小六(びんしょうりく)は、麻子(マーズ)と串子(チュアンズ)が新しい住人の噂話をするのを耳にするが、気に留めず、自分の暮らしをどう守っていくかばかりを考えていた。一方、瑲玹(そうげん)は庭に阿念(あんねん)の好きな梅を植える。しかし、彼の心は思い出の鳳凰の木の下、ブランコに乗る小夭(しょうよう)の笑顔に囚われていた。温かい記憶と妹への想いが複雑に胸を締め付ける。
翌朝、玟小六(びんしょうりく)はいつものように川辺で食器を洗っていると、瀕死(ひんし)の乞食を見つける。ボロボロの衣服に身を包み、今にも息絶えそうな様子だった。「余計な事に首を突っ込むな」が信条の玟小六(びんしょうりく)だが、見て見ぬふりはできなかった。一方、兎の妖怪は瑲玹(そうげん)から酒屋を開く計画を聞き、玟小六(びんしょうりく)と商売敵にならずに済むと胸を撫で下ろす。
夜、医館は笑い声に包まれていた。玟小六(びんしょうりく)に拾われた孤児の麻子(マーズ)と串子(チュアンズ)は、性格は正仮対だが、どちらも心優しい。二人は草むらに倒れている男を見つけ、玟小六(びんしょうりく)に伝える。玟小六(びんしょうりく)は口では二人に構うなと釘を刺すものの、夕食後、思わず川辺へ向かう。花束を抱えた男の姿に心を動かされ、彼を助ける決意をする。
男を医館に連れ帰ると、玟小六(びんしょうりく)は彼が全身傷だらけで、特に足の骨折が酷いことに気づく。治療は激痛を伴うが、男は歯を食いしばり、声を上げない。その姿に麻子(マーズ)と串子(チュアンズ)は心を痛め、同時に敬意を抱く。老木(ろうぼく)は男の神族の身分を見抜き、玟小六(びんしょうりく)に危険が及ぶことを心配する。しかし玟小六(びんしょうりく)は責任を負う覚悟で、自らの神血を使って男の命を繋ぐ。
瑲玹(そうげん)は小夭(しょうよう)を探すため石先生に助けを求めるが、成果は得られなかった。ふと閃いた彼は、清水の霊石に霊力を注ぎ込む。最後に玟小六の姿が映し出されるが、瑲玹(そうげん)はまだ彼女が小夭(しょうよう)だと気づかない。玟小六の優しさは次第に男の信頼と感謝を勝ち取る。ある出来事をきっかけに、男は玟小六が女性であることを知り、二人の関係は静かに変化していく。
第2話 感想
第二話は、小夭(しょうよう)と瑲玹(そうげん)の再会が目前に迫りながらも、互いに気づかないもどかしさが描かれた切ないエピソードでした。小夭(しょうよう)は玟小六として別人格を演じ、身分を隠しながらも、困っている人を見ると放っておけない優しさを見せています。特に瀕死(ひんし)の男を助け、自分の神血まで分け与える姿には、彼女の芯の強さと深い愛情を感じました。
一方、瑲玹(そうげん)は小夭(しょうよう)を探し求めて清水町にやって来ますが、すぐそばにいるにも関わらず、彼女に気づかない皮肉な運命が描かれています。阿念(あんねん)への想いと小夭(しょうよう)への想いの対比も印象的で、瑲玹(そうげん)の複雑な心情が伝わってきました。
また、麻子(マーズ)と串子(チュアンズ)、老木(ろうぼく)といった脇役たちの存在も物語に深みを与えています。玟小六に助けられ、彼女を慕う麻子(マーズ)と串子(チュアンズ)の素直な感情は、玟小六の優しさを際立たせています。老木(ろうぼく)の存在は、玟小六の秘密を守る重要な役割を果たすと同時に、物語に緊張感を与えています。
つづく