強力な陣に閉じ込められた玟小六(びんしょうりく)。誰が自分を陥れたのか分からぬまま、突如現れた凶暴な獣に襲われ、激痛に耐えながらこれを倒す。

しかし、安堵する間もなく、親族を赤宸(せきしん)に殺された沐斐(もくひ)が現れ、復讐として玟小六(びんしょうりく)に襲いかかる。玟小六(びんしょうりく)は皓翎(こうれい)王のみが父だと訴えるも、沐斐(もくひ)は聞く耳を持たず、刃を彼女の四肢と体に突き刺す。絶望の中、玟小六(びんしょうりく)は激痛に痙攣するも、叫び声を上げることなく耐え続ける。

とどめとばかりに無数の梅花鏢が玟小六(びんしょうりく)の体に突き刺さり、血が雨のように梅林に降り注ぐ。玟小六(びんしょうりく)の異変を感知した相柳(そうりゅう)は毛球(もうきゅう)に乗り辰栄山へ急行する。瑲玹(そうげん)と塗⼭璟(とざんけい)も異様に気付き、急いで駆けつける。

最初に玟小六を発見したのは塗⼭璟(とざんけい)だった。しかし、彼女は既に息絶えており、必死に霊力を送っても蘇生する兆しはない。絶望の淵に突き落とされた塗⼭璟(とざんけい)は、自らの命を絶とうと決意し、絶殺陣を発動させる。炎が衣を包み込み、梅林全体を焼き尽くす。駆けつけた瑲玹(そうげん)は、侍衛の製止を振り切り、陣の中へ飛び込む。

炎の中、塗⼭璟(とざんけい)は玟小六を強く抱きしめ、霊力を送り続けていた。そのおかげで玟小六の体は炎から守られていたが、塗⼭璟(とざんけい)自身は重傷を負い昏倒していた。駆けつけた瑲玹(そうげん)は玟小六の死を告げられ、受け入れることができず、何とかして妹を蘇生させようと決意する。

辰栄馨(しんえいけい)悦(しんえい けいえつ)は医師を呼び、瑲玹(そうげん)は怒りを抑え事態の収拾に尽力する。自責の念に駆られる辰栄馨(しんえいけい)悦(しんえい けいえつ)は、事件の徹底調査を命じる。一方、相柳(そうりゅう)は未だ到著しておらず、玟小六の魂が消滅しないよう、自らの命を削り魂を守り続けていた。

辰栄山の結界を強行突破した相柳(そうりゅう)は、血に染まった白装束に銀の仮面姿で、瑲玹(そうげん)の元へ向かう。その姿は雪の結晶に紅梅が添えられたように美しく、異彩を放っていた。兵士たちに囲まれるも、相柳(そうりゅう)は霊力を使って瑲玹(そうげん)に問いかける。「小夭(しょうよう)を生かすのか、それとも死なせるのか。」

玟小六を救うという明確な意思を持つ相柳(そうりゅう)に対し、瑲玹(そうげん)は彼が事件の黒幕だと疑い、玟小六の身を案じる。相柳(そうりゅう)は瑲玹(そうげん)を安心させるため、王姫(おうき)を貶めるような真意はないと偽り、利益のためだと告げる。瑲玹(そうげん)は複雑な思いで見送る。

相柳が去った後、瑲玹(そうげん)は傀儡で相柳の姿を作り逃亡に見せかけ、もう一体の傀儡で玟小六の姿を作り、彼女の帰りを待つと宣言する。そして、密かに梅林事件を調査し、現場に少なくとも三人の霊力使いがいたことを突き止め、計画的な虐殺と断定する。

塗⼭璟(とざんけい)は命に別状はなかったものの、意識が戻らず、心に深い傷を負っていた。大切な人を失い、再び心を閉ざしてしまう。一方、相柳は玟小六を海底の住処に連れて行き、自らの心臓の血を与え、生きることを諦めないよう語りかける。

第30話の感想

第30話は、息詰まるような緊張感と、登場人物たちの深い愛情と悲しみが胸を締め付ける、非常にドラマチックな展開でした。玟小六への容赦ない仕打ち、沐斐(もくひ)の復讐心、そして塗⼭璟(とざんけい)の殉情未遂と瑲玹(そうげん)の悲痛、それぞれの感情が激しくぶつかり合い、見ている側も感情移入せずにはいられません。

特に印象的なのは、塗⼭璟(とざんけい)の玟小六への深い愛です。既に息絶えている彼女を前に、自らの命を絶つほどの強い愛は、感動的であると同時に、あまりにも切なく、胸が張り裂けそうになります。絶殺陣の中、炎に身を焼かれながらも玟小六を霊力で守り続ける姿は、彼の愛の深さを物語っています。

つづく