塗⼭璟(とざんけい)は青丘から戻ると、決意を固め、祖母に婚約解消を申し出た。しかし、太夫人は激しく仮対し、三日後には族長就任の儀式を行うと宣言した。璟と兄の篌は不満を抱くも、太夫人が倒れ、余命わずか半年と知り、衝撃を受ける。

その夜、激しい風雨の中、小夭(しょうよう)は胸騒ぎで目を覚ますと、雨に打たれる璟を見つける。彼の話を聞き、祖母のこと、そして彼が背負う重荷を理解し、優しく慰めた。璟への愛は深まるばかりだった。

一方、篌は母の霊前で酒を飲み、屈辱感を味わっていた。彼にとって大切なものが、璟には取るに足らないものだったからだ。そこに防風意映(ぼうふういいえい)が現れ、逆転の機会があると告げる。

三日後、塗山氏の族長就任の儀式が厳かに執り行われた。小夭(しょうよう)や瑲玹(そうげん)たちも参列する中、天に吉兆が現れ、璟の就任を祝福するかのようだった。しかし、璟は上の空で、小夭(しょうよう)ばかりを気にしていた。

儀式の後、小夭(しょうよう)は相柳(そうりゅう)に呼び止められる。瑲玹(そうげん)の忠告を思い出し、平静を装う小夭(しょうよう)に、相柳(そうりゅう)もまた涙をこらえ、璟と防風意映(ぼうふういいえい)の結婚について尋ねる。小夭(しょうよう)は既に吹っ切れたと答え、今ある幸せを大切にすると微笑んだ。

相柳(そうりゅう)は小夭を離戎氏の賭場に連れて行き、そこで40年間奴隷として戦い続けた少年と出会う。少年は壮絶な戦いの末、敵と共に命を落とす。その不屈の精神に心を打たれた小夭は、勝ち金を少年に贈り、「左耳(さじ)」という新たな名前を与えた。

賭場を出ると、小夭と相柳(そうりゅう)の間には複雑な感情が流れるも、相柳(そうりゅう)は冷淡な態度でそれを隠す。そこに璟が現れ、小夭は彼に安らぎを見出す。そして、璟と⾚⽔豊隆(せきすいほうりゅう)(せきすいほうりゅう)は男同士の話し合いで和解する。

瑲玹(そうげん)は四大世家のうち三家の支持を得る一方、五王(ごおう)と七王(しちおう)は40年前の伏兵を動かす計画を企てる。曋淑(きょうしゅく)と樊彰(はんしょう)は大明殿の儀式の準備が迫っていると瑲玹(そうげん)に報告するが、彼は冷静に状況を把握し、知略と決意を示す。

この回では、愛情と責任が交錯し、それぞれの信念と未来のために戦う人々の姿が描かれた。そして、小夭と璟の愛は、試練の中でより一層強固なものへと変わっていく。

第34話 感想

第34話は、塗⼭璟(とざんけい)の族長就任という大きな転換点を通して、登場人物たちの複雑な感情とそれぞれの決意が鮮やかに描かれた回でした。

まず印象的なのは、塗⼭璟(とざんけい)の苦悩です。愛する小夭との未来を望みながらも、一族の責任と重病の祖母への孝行の間で板挟みになり、苦渋の決断を迫られる姿には胸が締め付けられました。彼が小夭に本心を打ち明け、雨の中で寄り添うシーンは、二人の強い絆を感じさせ、切なさが募ります。

一方、小夭もまた、塗⼭璟(とざんけい)の立場を理解し、彼を支えようとする健気な姿が印象的です。相柳(そうりゅう)との再会や、賭場で出会った少年とのエピソードを通して、彼女の芯の強さと優しさが改めて浮き彫りになりました。特に、少年に「左耳(さじ)」という名前を与え、新たな人生を歩ませるシーンは、小夭自身の未来への希望も象徴しているようで、深く心に響きました。

また、塗山篌(とざん こう)の屈辱感や、防風意映(ぼうふういいえい)の闇躍など、他のキャラクターたちの思惑も交錯し、物語の緊張感を高めています。瑲玹(そうげん)の冷静な判断力や、⾚⽔豊隆(せきすいほうりゅう)(せきすいほうりゅう)との和解など、今後の展開を予感させる要素も多く含まれており、ますます目が離せません。

つづく