瑲玹(そうげん)が十七への気遣いを残しつつ去った後、玟小六(びんしょうりく)は巧みに言葉を濁してその場を収めた。そして十七に、周りの複雑な人間関係に気を付けるよう忠告した。その時、相柳(そうりゅう)が突然現れ、玟小六(びんしょうりく)を連れ去ろうとする。十七はすぐさま玟小六(びんしょうりく)を守ろうと前に出るが、緊迫した空気が流れる。間一髪、玟小六(びんしょうりく)は機転を利かせてこの場を丸く収め、毛球(もうきゅう)の背に飛び乗り、相柳(そうりゅう)と共に去っていった。十七は一人取り残され、名残惜しさと寂しさに満ちた視線を二人に送る。
相柳(そうりゅう)は心中穏やかではないものの、玟小六(びんしょうりく)の平凡に見える霊力に好奇心を抱いていた。玟小六(びんしょうりく)はかつて自分がどれほど強かったか、そして狐妖に襲われ力を失った悲惨な過去を淡々と語った。彼女は飄々とした様子を見せるものの、相柳(そうりゅう)が手を上げた際に無意識に体を縮こませるなど、細かな仕草の一つ一つが、心の奥底に抱える言いようのない傷と恐怖を物語っていた。
毛球(もうきゅう)がゆっくりと降下し、二人は波打ち際を歩く。月光に照らされた海面はキラキラと輝き、互いに価たような辛い経験を語り合い、同情の気持ちが湧き上がってくる。相柳(そうりゅう)は天地の美しさで玟小六(びんしょうりく)を慰め、命の尊さを伝えようとする。玟小六(びんしょうりく)はどんな美しい景色も誰かと一緒に見てこそ価値があるのだと呟く。
清水(せいすい)鎮へ帰る途中、玟小六(びんしょうりく)の心はすでに別の場所にあった。彼女は相柳(そうりゅう)の眉間の疲れに気づき、思い切って権力闘争から身を引いて別の主君に仕えることを提案する。しかし、この言葉は相柳(そうりゅう)の怒りに触れ、玟小六(びんしょうりく)は命の危険に晒される。必死に命乞いをしたことで、ようやく難を逃れた。河辺で心配そうに待っていた十七は、怪我をした玟小六(びんしょうりく)の姿を見て心を痛め、自ら温かいスープを作ってあげる。二人の間には、言葉にはならない温かい感情が静かに育まれていく。
回春堂での日々は相変わらず穏やかで温かいものだったが、俞老板(ゆろうばん)からの一枚の通知が、その静けさを破る。彼は回春堂を含む河辺の店を全て取り壊すと言い渡し、この突然の出来事に玟小六(びんしょうりく)たちは驚きを隠せない。俞老板(ゆろうばん)の冷酷で断固とした態度に、玟小六は自ら交渉に臨み、皆の生活の場を守ろうと決意する。
しかし、交渉の最中、十七の侍女だと名乗る静夜(せいよ)が突然現れる。彼女の出現は、まるで十七と玟小六の世界を分かつ分水嶺のようだった。十七の優柔不断な態度に玟小六は胸を締め付けられるが、笑顔を作って十七に自分の家のことを片付けるように言う。十七の別れは避けられないと分かっていながらも、玟小六の心にはまだかすかな希望が残っていた。
一方、辰栄軍では瘴気の問題で相柳(そうりゅう)は頭を悩ませており、薬草を集めるのに奔走していた。瑲玹(そうげん)はこの機に乗じて、相柳(そうりゅう)が必要とする薬草を全て買い占め、追い詰められた相柳(そうりゅう)を降伏させようと企む。夜になり、十七が戻ってくる。彼の飾り気のない誠実さに玟小六は少し慰められる。玟小六は自ら調合した薬草を十七に渡し、身を守る術を教える。苦難の中で、二人の絆はさらに深まっていく。
第7話の感想
第7話は、登場人物たちの複雑な感情の交錯と、それぞれの立場の難しさが際立つエピソードでした。特に、玟小六と相柳(そうりゅう)、そして玟小六と十七の関係性の変化に注目が集まります。
相柳(そうりゅう)は、冷酷な一面を見せながらも、玟小六の過去や心の傷に共感し、慰めようとする優しさも垣間見えます。毛球(もうきゅう)に乗って波間を漂うシーンは、二人の孤独と、だからこそ生まれる共感を感じさせる幻想的な美しさがありました。しかし、清水(せいすい)鎮での出来事は、相柳の権力への執著と冷酷さを改めて浮き彫りにし、玟小六との間に大きな溝を作ってしまう結果となりました。
一方、十七は、玟小六を守るために勇敢に立ち向かう姿が印象的です。玟小六のために料理を作るなど、献身的な愛情を示す場面は、視聴者の心を温かくします。しかし、静夜(せいよ)の登場によって、彼の立場は複雑になり、玟小六との関係にも影を落とします。身分差による苦悩、そして選択を迫られる十七の葛藤が、今後の展開を大きく左右していくでしょう。
玟小六は、持ち前の明るさと機転で困難を乗り越えようとする一方で、心の奥底に抱える深い孤独や不安が、彼女の繊細な仕草を通して伝わってきます。相柳との束の間の心の繋がり、そして十七への募る想い。二人の男性の間で揺れ動く玟小六の心情は、切なくも美しく描かれています。
つづく