あらすじ

第35話は、劉世安(りゅうせいあん)が天衣居士(てんいこじ)の後事を済ませ次第、証拠を京城へ送る決意をする場面から始まります。溫柔(おんじゅう)は天衣居士の死に深い悲しみを覚えますが、小石(しょうせき)を心配させまいと、その悲しみを懸命にこらえます。一方、小石は食事をすることで心の痛みを紛らわし、関外へ向かう決心をします。道中、既に亡くなっている狄飛驚(てきひきょう)に遭遇し、彼のために墓を建てた後、小石は心に未練が残っていることに気づき、劉世安の京城への護送に戻ることを決意します。

その頃、蘇夢枕(そむちん)は体が弱り、白愁飛(はくしゅうひ)(はくしゅうひ)との最終決戦が近いことを予感していました。蘇夢枕(そむちん)は周りの者たちを遠ざけ、白愁飛の攻撃に一人で立ち向かいます。高い武功の持ち主である蘇夢枕ですが、体力の衰えには勝てず、白愁飛に重傷を負わされ、地下道へ逃げ込みます。白愁飛は金風細雨(きんぷうさいう)楼の支配権を握り、小石がまだ生きているという知らせに激昂します。師無愧(しむき)、楊無邪(ようむじゃ)、そして朱小腰(しゅしょうよう)は蘇夢枕の「訃報」を聞き、深い悲しみに暮れます。

ネタバレ

天衣居士(てんいこじ)の葬儀を終え、劉世安(りゅうせいあん)は重要な証拠を京城へ持ち帰ろうとしていた。悲しみに暮れる溫柔(おんじゅう)だったが、小石(しょうせき)の前では涙を拭い、平静を装う。天衣居士(てんいこじ)の教え「腹が減っては戦はできぬ」を思い出し、小石(しょうせき)は懸命に食事をするが、悲しみは拭えず、涙がこぼれる。溫柔(おんじゅう)も一緒に食べながら、涙をこらえきれなかった。

小石(しょうせき)は天衣居士(てんいこじ)の死を溫柔(おんじゅう)のせいにするはずないと分かっていたが、溫柔(おんじゅう)は自分を責め続けていた。小石(しょうせき)の無理した笑顔を見る度に、彼女の心は痛んだ。この出来事が二人の間に溝を作ってしまうことを恐れ、溫柔(おんじゅう)は時間をかけて解決しようと考えた。小石(しょうせき)が天衣居士(てんいこじ)の遺書を読んだ時には、既に溫柔(おんじゅう)の姿はなかった。

お尋ね者である小石(しょうせき)は関外へ向かうことにした。道中、亡くなった狄飛驚(てきひきょう)に出会い、墓を建てて弔った後、旅を続けた。しかし、広大な世界を前に、たとえ体が自由になっても、心に未練があれば真の解放は得られないと悟る。自分の江湖はまだ終わっていないと気づき、小石(しょうせき)は劉世安(りゅうせいあん)と共に京城へ戻ることを決意した。

楊無邪(ようむじゃ)と蘇夢枕(そむちん)は、たとえ小石(しょうせき)が無事に帰ってきても、事態が好転しても、蘇夢枕(そむちん)の体はもう長くは持たないと理解していた。白愁飛(はくしゅうひ)(はくしゅうひ)との衝突は避けられないと予感した蘇夢枕(そむちん)は、自分を殺せるのは自分か楊無邪(ようむじゃ)だけだと考え、ある合図を聞いたら自分を殺すように楊無邪(ようむじゃ)に命じた。そして、朱小腰(しゅしょうよう)には小石(しょうせき)の無事を祈らせ、師無愧(しむき)には温家の薬を取りに行かせ、周囲の人間を遠ざけたが、それは表向の理由で、真の目的は別にあった。

白愁飛(はくしゅうひ)(はくしゅうひ)は手下を引き連れ金風細雨(きんぷうさいう)楼へ乗り込んできた。蘇夢枕(そむちん)は疲れ切っていた。白愁飛(はくしゅうひ)(はくしゅうひ)の真意を探るため、低姿勢で和解を試みるが、白愁飛(はくしゅうひ)(はくしゅうひ)はそれを受け入れず、蘇夢枕(そむちん)を排除しようと決意していた。蘇夢枕(そむちん)は状況がもはや取り返しがつかないことを悟りつつも、なぜ自分がこんな仕打ちを受けるのか理解できなかった。白愁飛(はくしゅうひ)(はくしゅうひ)は、なぜ蘇夢枕(そむちん)はいつも小石(しょうせき)ばかりを可愛がり、自分には冷淡なのかと激しく問い詰めた。蘇夢枕(そむちん)の目は冷たく光り、剣を抜いて応戦した。

蘇夢枕(そむちん)は武芸の達人だったが、既に満身創痍だったため、白愁飛(はくしゅうひ)(はくしゅうひ)に敵わなかった。白愁飛(はくしゅうひ)(はくしゅうひ)は蘇夢枕(そむちん)を刺し、とどめを刺そうとしたその時、蘇夢枕(そむちん)は抜け穴へ飛び込み姿を消した。激怒した白愁飛(はくしゅうひ)(はくしゅうひ)は楼中をくまなく捜索するように命じた。

師無愧(しむき)は出発の準備をしていたが、令牌を忘れたことに気づき戻ってきたところ、白愁飛(はくしゅうひ)(はくしゅうひ)の手下と遭遇し、楼内に潜入して様子を探っていたところを白愁飛(はくしゅうひ)(はくしゅうひ)に見つかってしまった。楊無邪(ようむじゃ)と朱小腰(しゅしょうよう)は蘇夢枕(そむちん)の「死」の知らせを受け、悲しみに打ちひしがれるが、何もできなかった。

蘇夢枕(そむちん)の失踪により、白愁飛(はくしゅうひ)(はくしゅうひ)は金風細雨(きんぷうさいう)楼の楼主の座に就いた。伝書鳩の担当者がうっかり白愁飛(はくしゅうひ)(はくしゅうひ)を「副楼主」と呼んでしまい、激怒した白愁飛はその場で彼を処刑した。白愁飛の元に届いた紙片には、小石(しょうせき)がまだ生きているという情報が記されていた。

第35話の感想

第35話は、様々な感情が渦巻く、息詰まる展開でした。まず、天衣居士(てんいこじ)を失った溫柔(おんじゅう)と小石(しょうせき)の悲しみと、それでも前を向こうとする姿が胸を打ちます。特に、小石が天衣居士(てんいこじ)の教えを守り、涙ながらに麺を食べるシーンは、彼の健気さと哀しみが強く伝わってきました。溫柔(おんじゅう)が密かに去っていく選択も、彼女らしい優しさであり、切なさを感じさせます。

一方、蘇夢枕(そむちん)は、自らの死期を悟り、周到な準備を進めていました。白愁飛との対決は避けられないと理解し、楊無邪(ようむじゃ)に自分を殺すよう命じる場面は、彼の覚悟と冷徹さ、そして楊無邪(ようむじゃ)への深い信頼が垣間見えます。白愁飛の冷酷さと野心も際立ち、金風細雨(きんぷうさいう)楼の今後の行方が不安になります。

小石が狄飛驚(てきひきょう)の墓を建てるシーンは、彼の義理堅さを改めて感じさせると同時に、真の自由とは何かを考えさせられます。彼が最終的に京城へ戻ることを決意した背景には、過去の出来事や人々との繋がりへの責任感があるのでしょう。

つづく