あらすじ
第16話は、耶沐憬(やぼくけい)と劉衍(りゅうえん)の間の重要な対話を中心に描かれています。耶沐憬が小秦宮で北涼の同僚たちと酒を酌み交わしていたところ、劉衍が彼を誘い、拒馬河(きょばがわ)の戦における情報漏洩問題について話し合いました。劉衍は、十年間北涼に攻め入らないことを条件に、情報源の開示を求めました。耶沐憬は当初口を閉ざしていましたが、劉衍の執拗な追及に屈し、薛笑棠(せつしょうとう)が内通者であることを明かしました。しかし、慕灼華(ぼしゃくか)と劉衍は、耶沐憬のこの行動には何か裏があるのではないかと疑念を抱きます。
また、このエピソードでは、慕灼華(ぼしゃくか)と劉衍の微妙な関係の変化も描かれています。慕灼華は何らかの理由で劉衍を避け始め、劉衍は不満と困惑を感じます。二人が顔を合わせる度に、劉衍は慕灼華が自分を遠ざける理由を探ろうとし、慕灼華は贈り物をするなどして関係を修復しようと試みます。最終的に、慕灼華は江南の災害救援を命じられ、朝廷内での彼女の地位が向上していることが示されます。
ネタバレ
小秦宮で、耶沐憬(やぼくけい)は北涼の同僚たちと酒を酌み交わし、今日の出来事は南宸の負け惜しみだと吐き捨てた。その時、劉衍(りゅうえん)が現れ、耶沐憬(やぼくけい)に酒を勧めて話を持ちかけた。淵羅花の毒に倒れたはずの耶沐憬(やぼくけい)が生きていることに驚きを隠せない劉衍(りゅうえん)に対し、耶沐憬(やぼくけい)は南宸の豊かさを皮肉った。さらに、拒馬河(きょばがわ)の戦いで精鋭を失った劉衍(りゅうえん)がまだ生きていることに、耶沐憬(やぼくけい)は侮蔑の言葉を投げつける。劉衍(りゅうえん)は、最も親しかった戦友との物語を語り、多くの仲間の命を背負っているからこそ、自分が簡単に死ねないのだと耶沐憬(やぼくけい)に説いた。
劉衍(りゅうえん)は、拒馬河(きょばがわ)の戦いで耶沐憬(やぼくけい)に内通者がいたことを確信しており、その人物が未だに正体不明であることを懸念していた。そこで、耶沐憬(やぼくけい)に取引を持ちかける。全ての情報を明かせば、十年間北涼への侵攻を止めると約束したのだ。当初は拒否していた耶沐憬(やぼくけい)だったが、慕灼華(ぼしゃくか)たちに北涼へ戻る理由を問い詰められ、仕方なく内通者は薛笑棠(せつしょうとう)だと明かした。しかし、高笑いと共に立ち去る耶沐憬(やぼくけい)の様子から、慕灼華(ぼしゃくか)と劉衍(りゅうえん)は、彼の証言が南宸内部を混乱させるための嘘だと疑う。
劉衍(りゅうえん)は耶沐憬(やぼくけい)の策略に乗るつもりはないと心に誓い、慕灼華(ぼしゃくか)は劉衍(りゅうえん)を励ました。慕灼華(ぼしゃくか)が去ろうとすると、劉衍(りゅうえん)は彼女を引き止め、なぜ自分を避けるのかと問いただす。慕灼華(ぼしゃくか)は、劉衍(りゅうえん)が自分の心を乱すからだと告げ、急いでその場を離れた。兄を見送る耶沐蓁(やぼくしん)に、耶沐憬(やぼくけい)は自分が火種を蒔いたので、機会があればもっと燃え上がらせろと囁いた。一方、慕灼華(ぼしゃくか)と沈驚鴻(しんきょうこう)は事件について話し合っていたところ、劉衍(りゅうえん)と劉琛(りゅうしん)に出くわす。
気まずい雰囲気の中、慕灼華(ぼしゃくか)は劉琛(りゅうしん)の足の怪我を尋ねる口実を作る。劉衍(りゅうえん)は慕灼華(ぼしゃくか)に避けられている理由を問うが、慕灼華(ぼしゃくか)は否定する。劉琛(りゅうしん)は慕灼華(ぼしゃくか)に、自分は恩を仇で返すような人間ではないと言い、劉俱(りゅうく)に掛け合って学堂での講義を再開できるようにしたと伝える。喜ぶ慕灼華(ぼしゃくか)の姿を見て、劉琛(りゅうしん)も笑顔を見せる。二人の親しげな様子に、劉衍は慕灼華(ぼしゃくか)が自分を避ける理由が劉琛(りゅうしん)にあるのではと疑念を抱く。劉衍と劉琛(りゅうしん)は碁を打ちながら慕灼華(ぼしゃくか)の話題になり、劉琛(りゅうしん)は今回の耶沐憬の件での慕灼華(ぼしゃくか)の功績を認め、劉衍に褒美を与えるべきだと進言する。しかし、劉衍は嫉妬からか、冷たく「ない」と答える。
その後、接待史の功績により、慕灼華(ぼしゃくか)と沈驚鴻(しんきょうこう)はそれぞれ正五品主事と正六品主事に昇進する。昇進が劉衍の計らいだと理解した慕灼華(ぼしゃくか)は、劉衍の休沐日に定王府を訪ね、硯を贈る。劉衍は慕灼華(ぼしゃくか)と劉琛(りゅうしん)が親しくなることを危惧し、皇子たちの争いに巻き込まれるなと忠告する。しかし、慕灼華(ぼしゃくか)は劉衍の好意を避けようとしており、誤解が生じる。慕灼華(ぼしゃくか)は劉衍の機嫌を損ねてしまったと思い、翌日、菓子を手作りして定王府に届けるが、劉衍は病で臥せっており会うことができなかった。落胆する慕灼華(ぼしゃくか)は、郭巨力(かくきょりき)に劉衍が自分を諦めてしまったのではないかと不安を吐露する。時を同じくして、江南で蝗害が発生し、劉俱(りゅうく)は頭を悩ませていた。劉琛(りゅうしん)は自ら救済に向かうことを申し出て、劉俱(りゅうく)は慕灼華(ぼしゃくか)と沈驚鴻(しんきょうこう)も同行させることにする。
第16話の感想
第16話は、慕灼華(ぼしゃくか)と劉衍のすれ違う想いが切なく描かれた回でした。耶沐憬の策略によって、二人の間には疑念と誤解が生じ、距離ができてしまいます。慕灼華(ぼしゃくか)は劉衍への想いを自覚しながらも、彼の立場や皇子たちの争いに巻き込まれることを恐れ、距離を置こうとします。一方、劉衍は慕灼華(ぼしゃくか)の行動の真意を理解できず、劉琛(りゅうしん)への嫉妬心から、冷たく突き放してしまう場面もありました。
特に印象的だったのは、慕灼華が雨の中、手作りのお菓子を持って定王府を訪れるシーンです。劉衍に会うことができず、落胆する彼女の姿は、胸が締め付けられるようでした。慕灼華の健気な行動と、それを受け止められない劉衍の苦悩が対照的に描かれ、二人のもどかしい関係性がより際立っていました。
また、耶沐憬の策略によって、南宸内部の混乱を招こうとする様子も緊迫感がありました。劉衍は冷静に状況を分析し、対応しようとする姿が頼もしく描かれていましたが、同時に、慕灼華との関係に悩む人間らしい一面も垣間見えました。
つづく