あらすじ

第五話では、科挙の本試験である会試まであと十日となり、主人公の慕灼華(ぼしゃくか)は自宅に籠り猛勉強に励んでいる様子が描かれています。試験の成功を祈願するため、親友の郭巨力(かくきょりき)に連れられ浮雲寺へ参拝に行きます。そこで偶然にも劉衍(りゅうえん)と出会い、彼が還陽散(かんようさん)の処方を捜していることを知ります。この還陽散は、灼華の亡き母に関係があることが分かります。灼華は劉衍に協力し調査を進めることを申し出、母の生前に外祖父が太医院に勤めていたという話を明かし、還陽散の処方が外祖父と関係している可能性を示唆します。また、経済的に困窮していた灼華は劉衍に借金を申し出ます。一方、沈驚鴻(しんきょうこう)は詩歌の大会で素晴らしい成績を収め、周囲から賞賛を集めます。この回では、灼華と巨力の固い友情と、困難に立ち向かう中で互いに支え合う姿も描かれています。最後に、灼華は劉衍の手下に剣を突きつけられ連れ去られますが、その道中で劉衍が自ら灼華を恐怖から守る場面があり、二人の関係に今後進展があることを予感させます。

ネタバレ

科挙まであと十日。慕灼華(ぼしゃくか)は家で猛勉強に励んでいた。郭巨力(かくきょりき)は彼女を浮雲寺へ連れて行く。そこはご利益があると評判で、合格祈願に訪れる人が多いのだ。二人は菩薩に祈りを捧げ、巨力は灼華の合格を心から願う。その姿に灼華は感動する。巨力は詩会が開かれることを教え、沈驚鴻(しんきょうこう)の活躍が見られるかもしれないと言う。その時、灼華は劉衍(りゅうえん)らしき人影を見かけ、寺を後にする。

後山で劉衍(りゅうえん)を見つけると、彼は還陽散(かんようさん)の処方を尋ねる。あらゆる手を尽くしたが、見つからないという。灼華は処方に至仙果という希少で高価な薬材が使われていることを教え、太医院でその使用記録を調べるよう助言する。劉衍(りゅうえん)は良い考えだとしながらも、灼華への疑念は拭えない。一方、沈驚鴻(しんきょうこう)は刘皎(りゅうきょう)との面会を心待ちにし、琴を奏でる。劉琛(りゅうしん)は背後に立ち、静かに耳を傾ける。

灼華は上京の目的が科挙だけではないことを劉衍(りゅうえん)に悟られ、還陽散(かんようさん)の知識は母から得たものだと説明する。母の謎を解明したいと願い、劉衍(りゅうえん)に協力を求める。沈驚鴻(しんきょうこう)の詩は人々から絶賛され、巨力は灼華がいないことを心配する。彼女は執墨(しゅうぼく)に詩を書き留めてもらうよう頼む。執墨(しゅうぼく)は字が下手だと断るが、巨力は内容が分かれば良いと説得する。書き終えた詩を見て、執剣(しゅうけん)はあまりの汚さに目を覆う。

灼華は劉衍(りゅうえん)に、皇子は部下を大切にするのに、なぜ自分には優しくしないのかと尋ねる。金欠だと訴える灼華に、劉衍(りゅうえん)は財布を渡す。灼華は喜び、感謝する。巨力は執墨(しゅうぼく)から詩を受け取り、礼を言おうとして勢い余って彼の腕を脱臼させてしまう。沈驚鴻(しんきょうこう)は刘皎(りゅうきょう)に謁見する。公主は彼の活躍を聞き、劉琛(りゅうしん)に認められたことを喜ぶ。そして、科挙に励み、役に立つ人材になるよう激励する。

大金を持って帰ってきた灼華を見て、巨力は驚愕する。灼華は「虎の尻尾を撫でただけ」と答える。劉衍(りゅうえん)はまだ彼女を完全に信用しておらず、還陽散(かんようさん)の知識が利用価値があると見ているだけだと推測する。灼華は劉衍(りゅうえん)の信頼を得ることが重要だと考える。巨力は灼華の機転を褒めるが、灼華は還陽散(かんようさん)のことが気がかりだ。劉衍(りゅうえん)は至仙果、母の素性、袁副将(えんふくしょう)の遺体の三つの手がかりを追っているはずだと考える。

灼華は母方の祖父が太医院に勤めていたことを巨力に話し、還陽散(かんようさん)との関連を疑う。劉衍(りゅうえん)に復讐されるのではないかと不安を口にする。その時、扉を叩く音が響く。巨力が開けると、執剣(しゅうけん)が立っていた。執剣(しゅうけん)は灼華に馬に乗るよう促すが、彼女は馬に乗れない。劉衍(りゅうえん)は執剣(しゅうけん)を叱責し、灼華を自分の馬に乗せる。疾走する馬上で怯える灼華を、劉衍は抱きしめる。

第5話の感想

第五話は、慕灼華(ぼしゃくか)と劉衍の関係性が少しずつ変化していく様子が描かれており、今後の展開が気になる回でした。特に印象的だったのは、慕灼華(ぼしゃくか)が劉衍に金銭的な援助を求めるシーンです。これまで劉衍は灼華に対して疑いの目を向けていましたが、このシーンでは彼女のお願いを聞き入れ、懐から財布を渡しています。これは劉衍が灼華のことを少しは信頼し始めている、もしくは利用価値を見出していることの表れでしょう。灼華もまた、劉衍の懐柔を試みている節があり、二人の駆け引きがより一層面白くなってきました。

また、沈驚鴻(しんきょうこう)と劉琛(りゅうしん)、刘皎(りゅうきょう)の関係性も興味深いです。沈驚鴻(しんきょうこう)は劉琛(りゅうしん)に才能を認められ、刘皎(りゅうきょう)からも激励を受けるなど、順風満帆に見えます。しかし、宮廷内の権力争いに巻き込まれる可能性も秘めており、今後の展開に不安を感じさせます。

全体を通して、コミカルなシーンとシリアスなシーンのバランスが良く、飽きさせない展開でした。郭巨力(かくきょりき)のドジっぷりや執墨(しゅうぼく)の字の下手さなど、クスッと笑える場面が散りばめられている一方で、還陽散(かんようさん)の謎や劉衍の疑念など、緊張感のあるシーンも効果的に挿入されています。特にラストシーン、馬に乗れない灼華を劉衍が抱きしめるシーンは、二人の距離が縮まったことを象徴するようで、胸キュン必至でした。

つづく