あらすじ
第六話では、慕灼華(ぼしゃくか)が遺体から二つの針穴を発見し、凶器が暴雨梨花針であると推断する場面から始まります。この針は皇室しか所有していないため、劉衍(りゅうえん)は過去の記憶、特に兄・劉俱(りゅうく)との関係を思い出します。
その後、彼らは刺客に襲撃されますが、慕灼華(ぼしゃくか)は石灰粉を使って追っ手を一時的に撃退します。劉俱(りゅうきょ)は母后に対し、劉衍への忠誠を誓い、生死を問わず、かつて劉衍を救った時のように命を懸けると言います。
慕灼華は足の怪我で歩けなくなり、劉衍は彼女をおんぶして運び、看病します。この時間を過ごす中で、二人の距離はさらに縮まります。執剣(しゅうけん)は、かつて劉衍が兄弟二人を窮地から救ってくれたことを思い出し、劉衍への感謝と忠誠を改めて表明します。
慕灼華は亡き母を夢に見ます。科挙に合格するという決意は、さらに固いものとなります。劉衍は、どちらの道も容易ではないと理解しつつも、慕灼華の夢を応援し、諦めないように励まします。
ネタバレ
慕灼華(ぼしゃくか)は遺体に見つけた二つの針穴から、犯行の様子を劉衍(りゅうえん)に説明した。人の頭蓋骨は非常に硬いため、貫通できる凶器は「暴雨梨花針」と呼ばれる極細の針しかないと。側で黙っていた執墨(しゅうぼく)が、その針を知っていると口を開き、執剣(しゅうけん)も皇室専用の特殊な針だと付け加えた。それを聞いた劉衍(りゅうえん)は表情を曇らせ、二人に軽々しく口にするなと製止した。彼は幼い頃、兄の劉俱(りゅうく)がこの針を持っていたことを思い出したのだ。いつも冷静な劉衍(りゅうえん)の弱さを見た慕灼華(ぼしゃくか)は、彼にもこんな一面があるのかと驚いた。
一行が出発しようとすると、刺客が現れた。執剣(しゅうけん)たちは劉衍(りゅうえん)を逃がすため、劉衍(りゅうえん)は慕灼華(ぼしゃくか)を連れて森の中へ逃げ込んだ。追っ手に迫られた慕灼華(ぼしゃくか)は、とっさに粉を投げつけた。劉衍(りゅうえん)が毒か?と尋ねると、慕灼華(ぼしゃくか)は石灰だと答えた。その際、慕灼華(ぼしゃくか)は風邪気味であることに気づき、劉衍(りゅうえん)は自分の外套を彼女にかけた。劉衍(りゅうえん)が敵をおびき寄せる作戦だと気づいた慕灼華(ぼしゃくか)は、残りの石灰を撒き散らした。すると案の定、黒ずくめの男たちが姿を現した。慕灼華(ぼしゃくか)と劉衍(りゅうえん)は刺客と戦い、そこに皇家の闇衛も駆けつけた。
劉俱(りゅうく)は母后に、なぜ劉衍(りゅうえん)を襲わせたのかと問いただした。母后は全て自分のためだと答えた。劉衍(りゅうえん)が死ねば、劉俱(りゅうく)の地位は安泰だと考えたのだ。劉俱(りゅうく)は母后に、過去の出来事を持ち出し、母債子償だと告げた。かつて母后が仕組んだ劉衍(りゅうえん)の水難事故で、劉俱(りゅうく)は彼を救うために自ら水に飛び込み、重い病を患った。もし母后が再び劉衍を害そうとするなら、自分もまた同じようにすると宣言した。太后(たいこう)は劉俱(りゅうく)の言葉に激怒し、全ては彼のためだったと主張した。
一方、慕灼華(ぼしゃくか)は科挙に間に合わないのではないかと焦っていた。劉衍は次回もあると慰めたが、慕灼華(ぼしゃくか)は何年も準備してきたので諦められないと訴えた。足の怪我で歩くのが困難な慕灼華(ぼしゃくか)を見て、劉衍はおぶって行こうと申し出た。慕灼華(ぼしゃくか)は遠慮したが、劉衍に促され、背に乗った。劉衍は慕灼華(ぼしゃくか)の軽さに驚き、慕灼華(ぼしゃくか)は庶子として育ち、満足に食事もできなかったためだと説明した。科挙に合格すれば、食べていけるようになると。劉衍は彼女にもっと食べるように言った。夜になり、慕灼華(ぼしゃくか)は熱を出した。劉衍は執墨(しゅうぼく)と執剣(しゅうけん)に薬を煎じるよう指示した。
執剣(しゅうけん)は執墨(しゅうぼく)に薬を運ぶように言ったが、劉衍と執墨(しゅうぼく)は顔を見合わせ、劉衍は執墨(しゅうぼく)に薬を飲ませられないのかと尋ねた。執墨(しゅうぼく)は自分はできないが、執剣(しゅうけん)ならできると答えた。しかし、執剣(しゅうけん)は機嫌が悪かった。そこで劉衍は自ら慕灼華(ぼしゃくか)に薬を飲ませ、執墨(しゅうぼく)に執剣(しゅうけん)を慰めるように言った。執剣(しゅうけん)は、劉衍が皇帝に命を狙われていることを信じず、自分の命を賭けてまで真相を確かめようとしたことを心配していた。皇帝が助けを送り、結果的には無事だったが、捜査は行き詰まったままだった。執剣(しゅうけん)は、かつて一族が財産争いで兄弟の命を顧みなかった時、劉衍が屋敷に踏み込み二人を救い出したことを思い出した。あの夜、執剣(しゅうけん)は心を、執墨(しゅうぼく)は言葉を失い、劉衍は全てを失ったのだ。
眠る慕灼華(ぼしゃくか)を見ながら、劉衍は科挙の道は容易ではない、どの道も容易ではないと考えた。慕灼華(ぼしゃくか)は夢の中で母と再会し、母の教え「読書は良いもの。たくさん本を読めば、心の中に丘や穀ができる」の意味が今やっとわかったと、泣きながら伝えた。母は娘に苦労をさせて申し訳ないと謝った。慕灼華(ぼしゃくか)は目を覚まし、劉衍から科挙に間に合うように都へ戻っている途中だと告げられ、安堵した。劉衍の顔を見て、数日間、自分が看病されていたことに気づいた。
第6話 感想
第6話は、劉衍と慕灼華(ぼしゃくか)の関係性が深まる重要なエピソードでした。刺客の襲撃、慕灼華(ぼしゃくか)の看病といった緊迫した状況を通して、二人の間に信頼と愛情が芽生えている様子が丁寧に描かれていました。特に、劉衍が慕灼華(ぼしゃくか)をおぶって科挙会場を目指すシーンは印象的です。慕灼華(ぼしゃくか)の軽さに驚き、彼女の生い立ちを知るくだりは、劉衍の優しさと慕灼華(ぼしゃくか)の芯の強さを際立たせていました。
また、劉衍の兄、劉俱(りゅうく)との確執も物語に深みを与えています。母后の陰謀によって翻弄される兄弟の姿は、権力闘争の残酷さを改めて感じさせます。劉俱(りゅうく)が母后に告げる「母債子償」という言葉には、過去の苦しみと強い決意が込められており、今後の展開に期待が高まります。
一方で、慕灼華の科挙に対する強い思いも描かれています。病を押して試験を受けようとする彼女の姿は、努力家でひたむきな性格をよく表しています。夢の中で亡き母と再会するシーンは、慕灼華の抱える不安やプレッシャーを表現しており、胸を締め付けられるものがありました。
つづく