あらすじ
第二十八話は、律箋文(りつせんぶん)が顔如山(がんじょざん)の脱獄について王権弘業(おうけん こうぎょう)に助命嘆願する場面から始まります。顔如山は塗山(とざん)紅紅(とざんこうこう)の助けを借り、狐念の術にかかり操られていたため脱獄したという事実を明らかにします。しかし、王権弘業は顔如山の罪を重く見て、刑期を四十年加えるという厳しい判決を下します。
律箋文は妖族を愛したという理由で自ら一気道盟を去ることを選び、後悔のない強い決意を示します。東方月初(とうほうしょげつ)は、塗山紅紅(こうこう)が一気道盟の結界強化を支援することを提案し、王権弘業もこれを承諾します。
一方、東方洛(とうほう らく)は石姫(せっき)に操られ、最後は塗山紅紅(とざんこうこう)を守るため自らの命を絶ちます。この出来事をきっかけに、東方月初(しょげつ)は塗山紅紅の東方洛への想いを問い詰め、二人の間に感情的な衝突が生じます。
そして、律箋文は塗山紅紅から提示された寿命を延ばす代わりに顔如山の記憶を失うという提案を拒否し、顔如山のことを決して忘れないという強い意志を示します。
ネタバレ
律箋文(りつせんぶん)は王権弘業(おうけん こうぎょう)に呼び出され、顔如山(がんじょざん)の脱獄が露見したことを知る。律箋文(りつせんぶん)は苦情樹(くじょうじゅ)の下で、顔如山(がんじょざん)を助けてくれるよう懇願する。実は、二人はかつてこの樹の下で誓いを立てていたのだ。それを聞いた顔如山(がんじょざん)は驚き、塗山(とざん)容容(とざんすず)の助言もあって、律箋文(りつせんぶん)への想いを告白する。彼女の気持ちを知り、もはや悔いはないと。
翌日、南宮家当主の処刑後、顔如山(がんじょざん)の脱獄問題が審議される。律箋文(りつせんぶん)は心配そうな表情で見守る中、顔如山(がんじょざん)は罪を認める。しかし塗山(とざん)紅紅(とざんこうこう)は、彼が狐念之術にかかったことが原因だと主張する。狐念之術の威力を証明するため、紅紅(こうこう)は術を披露し、術にかかった者は「火事だ!」と叫び出す。律箋文(りつせんぶん)もまた、苦情樹(くじょうじゅ)の下で結ばれた縁を救うために顔如山(がんじょざん)は脱獄したのだと訴える。人間が妖怪を愛することを非難する者もいるが、律箋文(りつせんぶん)は自分の愛に間違いはないと主張する。東方月初(とうほうしょげつ)もまた、人妖の恋は罪ではないと擁護する。最終的に王権弘業(おうけん こうぎょう)は、顔如山(がんじょざん)に40年の追加刑、合わせて100年の刑罰を言い渡す。二人はすれ違い、共に歩む未来は閉ざされた。
顔如山(がんじょざん)が連行された後、律箋文(りつせんぶん)は自ら一気盟を去ることを決意し、後悔はないと断言する。東方月初(とうほうしょげつ)は、塗山(とざん)紅紅(とざんこうこう)に一気盟の結界強化を依頼することを提案し、仮対意見もあったものの、二人の言葉に誰も仮論できなかった。王権弘業(おうけん こうぎょう)は、渾天典獄の結界修復を紅紅(こうこう)に依頼する。
東方月初(とうほうしょげつ)は律箋文(りつせんぶん)を労い、休息を取るように勧める一方で、一気盟を変えたいという自分の決意を語る。王権弘業(おうけん こうぎょう)は紅紅(こうこう)と個人的に話し合い、圏外の脅威と自身の恐怖を明かし、人妖の協力が必要だと訴える。
盟を去った律箋文(りつせんぶん)は顔如山(がんじょざん)に会うことができず、東方月初(とうほうしょげつ)に、どんなに時間がかかっても待つと伝えてほしいと頼む。東方月初(とうほうしょげつ)は彼女の愚かさを指摘し、距離よりも辛いのは、愛する人に愛されないことだと語る。一方、顔如山(がんじょざん)は律箋文(りつせんぶん)に待ち続けてほしくないと願い、紅紅(こうこう)に彼女の記憶を消してほしいと頼む。東方月初(とうほうしょげつ)は真実を伝えるべきだと提案するが、顔如山(がんじょざん)は律箋文(りつせんぶん)を終わりのない待ちぼうけにさせたくない一心だった。盟を去っても、律箋文(りつせんぶん)のもとには依頼が絶えない。たとえ一生会えなくても、彼女は待ち続けると決めていた。塗山(とざん)紅紅(とざんこうこう)は苦情樹(くじょうじゅ)の力で寿命を延ばす代わりに、顔如山(がんじょざん)の記憶を失う可能性を提示するが、律箋文はそれを拒否する。彼女は顔如山のことを覚えていたいと願った。
石姫(せっき)は東方洛(とうほう らく)の体を乗っ取り、塗山(とざん)紅紅(とざんこうこう)を脅迫する。東方月初(とうほうしょげつ)は紅紅(こうこう)を止めることができず、二人は共に石姫(せっき)と対峙する。しかし、東方洛(とうほう らく)を傷つけることなく石姫(せっき)を倒すことは不可能だった。東方洛(とうほう らく)を案じる紅紅(こうこう)は攻撃を受け、傷を負う。紅紅(こうこう)の呼びかけによって意識を取り戻した東方洛(とうほう らく)は、彼女を守るため自害を選ぶ。東方洛(とうほう らく)の死に、紅紅(こうこう)は深い悲しみに暮れる。
東方月初(とうほうしょげつ)は、紅紅(こうこう)が本当に東方洛(とうほう らく)を愛していたのか疑問を抱き、記憶を消す前に東方洛(とうほう らく)に確認したのかと問いただす。もし東方洛(とうほう らく)のためでないのであれば、一体何のために自分を忘れたのかと。
第28話の感想
第28話は、切ない愛と厳しい現実、そして大きな犠牲が描かれた、非常に重みのあるエピソードでした。律箋文と顔如山の悲恋は、胸を締め付けられるような思いです。二人は愛し合いながらも、種族の違い、そして逃獄という事実が二人の未来を阻んでしまいます。律箋文の、どんなに時間がかかっても待ち続けるとの強い決意は感動的ですが、同時に、報われない愛の残酷さも感じさせます。顔如山もまた、律箋文を想うからこそ、彼女に待ち続けてほしくないという葛藤が見て取れます。
東方月初(とうほうしょげつ)は、二人の悲恋を傍観しながら、人妖の垣根を越えた愛を理解を示し、一気盟の古い体質を変えたいという強い意誌を改めて表明します。彼の存在は、この物語に一筋の光を投げかけているようにも感じられます。
そして、物語は衝撃的な展開を迎えます。石姫(せっき)による東方洛(とうほう らく)の身体の乗っ取り、そして東方洛(とうほう らく)の自害。塗山(とざん)紅紅(とざんこうこう)を守るための彼の選択は、あまりにも悲しいものでした。紅紅(こうこう)の悲しみは計り知れず、東方月初(とうほうしょげつ)が紅紅(こうこう)の真意を問いただすシーンは、今後の物語の展開を闇示する重要な場面と言えるでしょう。
つづく