あらすじ
第五十三話は、羋月が葵姑らと樊長使が羋姝の罪を訴え出た件について話し合う場面から始まります。公子通の死が樊長使の生きる希望を奪い、また、王后が公子稷に贈った衣が証拠になり得た可能性についても言及されます。
一方、朝廷では庸芮と張儀が王后廃位を提案しますが、甘茂と樗裏疾はこれに反対します。嬴駟は羋姝が黒幕であるか確信が持てず、珊瑚を自ら尋問しようとします。しかし、馮甲の助けを得た珊瑚は自害し、証拠は失われてしまいます。張儀は将来の庸君による政治を憂慮し、嬴駟は苦境に立たされます。
そんな中、嬴蕩は嬴稷への嫉妬から彼を攻撃し、嬴駟の怒りを買います。この一件で嬴駟は病に倒れてしまいます。もはや事態は好転しないと悟った嬴駟は、太子である嬴蕩に国政を代行させ、他の公子たちとその母をそれぞれの封地へ送ることを決めます。嬴稷は蜀侯に封じられ、母である羋月は彼に同行することになります。
ネタバレ
羋月は葵姑たちと樊長使が羋姝の悪事を白状した件について話していました。香児は樊長使の勇気に驚き、葵姑は公子通の死が樊長使の生きる希望を奪ったのだと説明します。香児は公子稷に贈られた服があれば証拠になったのにと残念がります。
庸芮と張儀は大王に上書して羋姝を廃后し冷宮に入れるよう進言しますが、甘茂と樗裏疾は仮対します。甘茂は大王の家事に臣下が口出しすべきではないと言い、樗裏疾は張儀を叱責し、まだ結論が出ていないのに廃后を迫るのは臣下の礼儀に仮すると非難します。
嬴駟は羋月を呼び、子供を害したのは本当に羋姝なのかと問います。もし羋姝が黒幕なら廃后し、侍女の珊瑚を自ら尋問すると告げます。
羋姝の側近の馮甲は獄卒を買収し、珊瑚に自害を促します。馮甲は「王后が楚国に手紙を送り、家族の面倒を見ると約束している」と伝えます。珊瑚は壁に頭を打ち付けて自害し、嬴駟は証拠を見つけられません。
張儀は王后は徳がなく廃すべきであり、太子も無能なので交代すべきだと主張します。大王の死後、愚かな君主が政治を行えば秦の百年築き上げた基盤は崩壊すると危惧します。嬴駟は決断できずにいます。嬴駟は嬴稷を承明殿に呼び出します。嬴蕩は嫉妬し、承明殿の外で嬴稷を懲らしめようと待ち伏せします。嬴蕩は嬴稷が無礼で目上を侮辱したとして、部下に嬴稷を捕らえるよう命じます。穆監は嬴稷を守って負傷します。駆けつけた嬴駟は嬴蕩を叱責しますが、嬴蕩は言い訳ばかりします。嬴駟は怒りで吐血し倒れ、周囲は大混乱に陥ります。
嬴駟が重病だと知った宮外の公子たちは宮殿に戻ってきます。樗裏疾は羋姝に後宮の管理を任せ、この時に嬴蕩を廃して嬴稷を太子に立てれば国が混乱すると進言します。
嬴駟はもはや大勢は決したと悟り、嬴蕩を太子として国を治めさせ、樗裏疾を補佐に任命する詔勅を作成します。他の公子たちには封地を与え、母も共に封地へ赴くように命じます。嬴稷は蜀侯に封じられ、母である羋月は共に巴蜀へ向かうことになります。そして嬴夫人を宮中に呼び寄せ、看病させるよう命じます。
第53話の感想
激動の第53話。息つく暇もない展開に、ハラハラドキドキさせられっぱなしでした。樊長使の自白という衝撃的な幕開けから、怒涛の展開が続きます。正義を貫こうとする羋月、保身のためなら手段を選ばない羋姝、そして板挟みになる嬴駟。それぞれの思惑が複雑に絡み合い、物語は悲劇へと突き進んでいきます。
特に印象的だったのは、珊瑚の自害シーン。主君である羋姝への忠義を貫き、自ら命を絶つ姿は、なんとも痛ましい。馮甲の言葉からも、羋姝がいかに周到に事を運んでいるかが伺え、彼女の冷酷さが際立ちます。嬴駟が証拠を見つけられず、歯痒い思いをするのも無理はありません。
そして、物語はクライマックスへ。嬴蕩の幼稚な嫉妬心から、嬴駟は吐血し倒れてしまいます。この一件が、後の秦国の運命を大きく左右することになると思うと、背筋が凍る思いです。嬴駟の病状が悪化し、宮中に緊張感が漂う中、樗裏疾は国家の安定を優先し、嬴蕩を太子に拠えるよう進言します。苦渋の決断を迫られる嬴駟の姿は、見ているこちらも胸が締め付けられます。
つづく