あらすじ
第五十五話は、秦の咸陽城内外の緊迫した情勢を描いています。魏冉は急ぎ都に戻り復命しました。樗裏疾は羋姝に、羋月母子を殉葬させないよう説得し、朝廷で各公子への封土配分を発表しました。その中で、羋月母子は燕の国へ人質として送られることになりました。魏冉は道中、難儀する羋月母子を救出しますが、羋月は魏冉に同行を断り、秦で地位を固め、将来の母子帰還への道筋をつけてくれるよう頼みます。一方、羋姝は遺詔が嬴夫人の元に隠されていると疑い、詰問しますが成果なく、咸陽を去ると脅します。燕へ向かう途中、羋月一行は義渠王翟驪と遭遇し、翟驪は羋月母子に義渠へ同行し、安穏な暮らしを送るよう提案します。
ネタバレ
咸陽の郊外は兵の動きが慌ただしく、公子華や公子池の軍勢に加え、魏冉の軍も集結していた。樗裏疾は蜀の地が平定され、司馬錯の命を受けた魏冉が昼夜兼行で五日もかからず咸陽に戻ったと報告する。羋姝は秦の厳格な法を盾に、魏冉といえど謀仮は不可能だと断言する。樗裏疾は、新王即位に伴い国を安定させることが最優先であるべきだと羋姝を説得し、羋月親子と樊長使の殉葬を阻止しようと尽力する。
魏琰は魏頤と羋姝について語り、かつて彼女を甘く見ていたが、情け容赦なく旧情を無視するとは予想外だったと話す。魏頤は羋姝に羋月を他国へ人質として送ることを提案する。羋姝は楚国を考えていたが、魏頤は魏冉や芈戎らと合流する可能性があるため不適切だと進言する。
朝廷にて、樗裏疾は各公子の封土を発表し、羋月親子を燕国へ人質として送ると宣言する。張儀と庸芮は仮対するが、羋姝は嬴氏の末裔としての嬴稷の義務だと主張する。
羋月が咸陽を去る日、樊長使は宮中で自害する。羋月の流刑、嬴駟の死、そして嬴蕩の暴虐な振る舞いを見て、張儀は自ら秦を去ることを決意する。出発前に庸芮に、もし羋月親子が再び秦に戻ることがあれば、庸氏一族として力を貸してほしいと頼む。
羋月と嬴稷は道中、羋姝の手下の役人である杜錦から様々な嫌がらせを受けるが、魏冉に助けられる。魏冉は共に燕国へ行くことを提案するが、羋月は「あなたが秦で地盤を固めてこそ、私と稷児の帰る道ができる」と告げる。
羋姝と馮甲は遺言書が嬴夫人にかくされている可能性があると睨み、北郊の離宮へ行き、嬴夫人を脅迫する。嬴夫人は口を割らず、羋姝は馮甲に侍女たちを永巷へ連行するように命じるが、樗裏疾と庸芮が駆けつけ阻止する。羋姝は「私は忍耐強い。もし遺言書が嬴夫人の手にあるなら、いずれわかる」と言い残し立ち去る。
羋月たちの行列が趙の地に入ると、義渠王翟驪の軍勢と遭遇する。事情を聞いた翟驪は、嬴駟が死んだ今、義渠は秦に臣従する必要はないと考え、羋月親子を義渠へ連れて帰り、生涯の安全を保障すると申し出る。
第55話の感想
第55話は、秦国内の権力争いが激化し、羋月と嬴稷の運命が大きく揺れ動くエピソードでした。嬴駟の死後、羋姝は冷酷な本性を露わにし、羋月親子を燕国へ追放します。この残酷な仕打ちは、これまでの二人の関係性を考えると非常に衝撃的でした。羋姝の権力欲と嫉妬心が、彼女をここまで非情な人間に変えてしまったのでしょうか。
一方、羋月は逆境の中でも気丈に振る舞い、息子の嬴稷を守り抜こうとする強い母性を見せています。魏冉の助けを借りながらも、自分の力で道を切り開こうとする彼女の姿は、まさに「女傑」という言葉がふさわしいでしょう。未来への希望を捨てず、力強く生き抜こうとする羋月の姿に、心を打たれました。
この回では、張儀の去就も印象的でした。嬴駟という賢明な君主を失い、嬴蕩の治世に未来を見出せなかった張儀の決断は、秦国の将来を闇示しているようにも感じられます。彼が庸芮に託した言葉は、羋月親子がいつか秦国に戻る可能性を示唆しており、今後の展開への期待が高まります。
つづく