あらすじ
第六十二話は、廷尉右丞が葵姑が嬴稷のために作った貂皮の外套を見つけ出し、羋月たちを訴え、官府に送って尋問したことから始まります。黄歇が秦国の質子の身分を盾に駆けつけ、これを阻止しようとしますが、争いが起こり、廷尉右丞が嬴稷を突き飛ばした拍子に貞嫂が殺されてしまい、民衆が反乱を起こします。義渠王が駆けつけ、羋月母子を薊城から脱出させます。この知らせを聞いた羋茵は激怒し、兵を動かして追撃しようとします。羋月の窮状を知った蘇秦は、孟嬴を通じて救援を求めます。逃亡の途中、黄歇は羋月に想いを伝え、やり直してほしいと懇願します。一方、郭隗はこの事態を知り薊城へ戻って対処することを決め、孟嬴もまた救援に向かう準備をします。そしてついに、白樺林の中、義渠王の兵たちが命を懸けて戦い、羋月母子は燕国の追っ手から逃れることができました。その夜、羋茵は自ら軍営に赴き、部下に羋月母子の捕縛を厳命しました。
ネタバレ
廷尉右丞は葵姑が嬴稷のために作った貂皮の大衣を見つけ、「人贓俱獲だ!」と羋月たちを官府に連行しようとした。そこに黄歇が駆けつけ、羋月母子は秦国の質子であるため、秦国への照会無しには連れ去れないと阻止する。廷尉は詭弁を弄し、揉み合う中で嬴稷を突き飛ばした。それを見た貞嫂は廷尉右丞に噛みつき、止めようとした兵に殺されてしまう。この蛮行に人々が激昂し抵抗を始め、さらに義渠王が率いる一団が到著、官兵を撃退し、羋月母子は薊城を脱出した。
羋茵は羋月たちの逃亡を知り激怒。「なんと羋月め!胡人と結託し、徒党を組んで役人を殺すとは!これだけの罪状で幾つもの首が飛ぶわ!」と、国相の不在をいいことに独断で令符を使い、追手を差し向け羋月を亡き者にしようと企む。
羋茵の侍女、菱児は蘇秦に会い、羋月母子の危機を訴え、助けてくれるよう懇願する。蘇秦はすぐさま孟嬴に謁見し、救いの手を差し伸べるよう進言した。
逃亡の道中、黄歇と義渠王は羋月母子の安全に尽力する。夜更け、羋月と黄歇は語り合う。羋月は黄歇がなぜ独り身なのか尋ね、誰かに寄り添って生きていくべきだと諭す。黄歇は「私は、私のことを理解してくれる人が傍にいてほしい」と答える。羋月は黄歇に申し訳ない気持ちでいっぱいだと語り、黄歇は羋月にやり直さないかと尋ねる。
羋茵の手下は郭隗に羋月母子の罪を誇張して語り、羋茵を擁護する。話を聞いた郭隗は激怒し、薊城へ戻ろうとする。引き止めようとする手下に対し、「貴様らのような佞臣に騙された!」と怒鳴りつけた。
蘇秦の言葉を受けた孟嬴は、燕王と共にすぐに薊城へ戻ることを決意する。
深く心を動かされた羋月は、黄歇と共に楚へ戻ることを決める。義渠王への感謝を伝え別れを告げるが、義渠王は斉の国境まで送り届けると言う。一行は白樺林で燕の追手に遭遇するが、義渠王の一団が命を懸けて食い止め、羋月母子は難を逃れた。
その夜、羋茵は軍営に赴き、追手の状況を確認する。将は明日には必ず羋月母子を捕らえると断言した。
第62話の感想
第62話は、息もつかせぬ展開で、ハラハラドキドキの連続でした。貞嫂の死はあまりにも突然で、衝撃的でした。羋月を守るため、身を挺して廷尉右丞に立ち向かう姿は、真の忠義と言えるでしょう。彼女の死が引き金となり、義渠王の登場、薊城からの脱出へと繋がる緊迫感は、見ているこちらも手に汗握るものでした。
羋茵の悪辣さも際立っていました。国相の不在に乗じて私欲のために令符を盗用するとは、権力への執著が恐ろしいほどです。彼女と羋月の対比が、物語をより一層ドラマチックにしています。対照的に、黄歇の羋月への変わらぬ想いは、胸を打つものがありました。長年の時を経ても、なお彼女を想い続ける一途さは、まさに純愛と言えるでしょう。「知我、懂我」という言葉に、彼の深い愛情が凝縮されているように感じました。
つづく