あらすじ
第68話は、贏稷の即位後、羋月が正式に権力を掌握し、「太后」と呼ばれ崇められるようになった様子を描いています。秦国の内外に難題が山積する中、彼女は樗裏疾ら大臣と対策を協議し、まずは外患を平定してから内紛を鎮めることを決断します。
一方、魏琰と魏頤は偽妊娠が発覚し、羋姝から叱責を受けます。また、羋姝は嬴華と結託して新政権に反対し、朝廷を分裂させ、新法を廃止して旧貴族の特権を復活させようと企みます。
これに対し、羋月は巧みな分断工作を展開します。唐夫人と衛良人に働きかけ、彼女たちの支持者を説得して寝返らせることに成功します。
嬴華らの軍事的な脅威に対しては、義渠王と白起に軍を率いさせ迎撃します。同時に、羋月は自ら各国に使者を送り交渉を行い、事態の収拾に尽力します。
ネタバレ
贏稷が即位し、羋月も共に権力を握った。朝廷にて、庸芮は羋月に尊号を贈るべきだと提案した。魏冉は周の三母、すなわち太妊、太姒、太姜の故事に倣い、「太」の字を用いて「太后」と呼ぶことを提案し、群臣も賛同した。こうして羋月の政治生涯が始まり、歴史上では「宣太后」と呼ばれることとなった。
魏琰と魏頤は自身の立場を危惧していた。魏頤は、嬴華と他の公子たちが さらに軍隊を保持している限り、羋月はすぐに自分たちを咎め立てはしないだろうと考えていた。そこへ羋姝が現れ、魏頤の偽妊娠を暴露し、「愚かな夢を見ている」と冷笑した。そして二人を厳しく叱責し、「真の妊娠であろうと偽妊娠であろうと、公子壮を害してはならない」と告げた。
秦は内憂外患を抱え、国力は衰え、強敵に囲まれ、あらゆる面で復興が必要な状態だった。羋月は樗裏疾ら臣下と共に国事について協議し、まずは五カ国の強敵に対処してから、国内の公子たちの仮乱を鎮圧するべきだと考えた。「諸公子たちの背後に列国の扇動がなくなれば、仮乱を起こす気も薄れるだろう」と考えたのだ。
羋姝は侍女の珍珠と共に咸陽を脱出し、嬴華を頼って共に新たな朝廷を樹立した。彼らは新法を廃止し、権力を失った旧貴族や宗室たちの爵位や俸禄を復活させ、人心を掌握しようと努めた。そして、遺詔は偽物だという噂を流した。
庸芮はこれを羋月に報告した。羋月は、「公子たちが謀仮を起こしたのは皆が本心からではない。公子華と彼らの同盟も決して盤石ではない。今や王位は定まったのだから、朝廷から彼らに進むべき道を示しても良いだろう」と言った。唐夫人と衛良人が羋月の元にやって来ると、羋月は二人を説得して味方につけた。衛良人は息子の嬴池に朝廷への帰順を勧めることを約束し、唐夫人も公子雍とその母に降伏を勧めることを約束した。
嬴華は公子軒ら他の公子たちを集め、恵后の命に従うという名目で咸陽に迫った。羋月は義渠王と白起に義渠の兵を率いて迎え撃つよう命じ、樗裏疾には各国に使者を咸陽に招き、政務を協議するよう命じた。
どの臣下も各国使者との交渉を望まなかったため、羋月は自ら交渉に臨むことを決意し、「易しいことから難しいことへ」という戦略をとり、まず燕の使者である蘇秦を召見することにした。
第68話の感想
第68話は、羋月が宣太后として本格的に政務を執り始める、新たな局面の幕開けとなる重要な回でした。これまで波乱万丈の人生を送ってきた彼女が、ついに最高権力者の地位に就き、その手腕を発揮していく期待感が高まります。
特に印象的だったのは、国が内憂外患の危機に瀕している中で、冷静に状況を分析し、戦略を立てていく羋月の姿です。公子たちの仮乱、列国の脅威という難題に直面しながらも、決して慌てることなく、まずは外敵に対処してから内乱を鎮圧するという、長期的な視野に立った判断を下しています。この冷静沈著さと知略こそが、彼女が宣太后として成功を収める鍵となるのではないでしょうか。
また、敵対する勢力に対しても、ただ力ずくで抑え込むのではなく、懐柔策を用いて味方に引き込もうとする巧妙さも光ります。唐夫人と衛良人を説得し、公子たちの内部崩壊を図る様子は、彼女の政治的な手腕の高さを改めて示しています。
つづく