あらすじ
第七十話は、靳尚が宝玉を持ち帰り楚王を喜ばせたところから始まります。靳尚は太子を秦の人質とすることで誠意を示すべきだと進言しますが、楚王はこの件は重大であるため慎重に検討する必要があると考えます。
一方、秦では嬴稷が母・羋月と義渠王の関係についての噂を耳にし、怒りに駆られて義渠王を襲撃します。義渠王は羋月を守るため矢を受け負傷し、羋月の寝宮で療養することになります。これに嬴稷は強い不満を抱きます。
羋月は刺客事件の黒幕が羋姝と嬴華であることを突き止め、法を犯した者には厳罰を下すと宣言し、将兵の士気を高めます。
その頃、甘茂は雍城へ逃れ反乱軍に加わります。また、嬴華は魏琰の説得を拒否し、抵抗を続けることを決意します。
最後に、羋月は司馬錯、白起、魏冉を各地の反乱鎮圧へと派遣するよう命じます。
ネタバレ
靳尚は楚王にたくさんの宝玉を献上し、楚王は大いに喜んだ。靳尚は羋月が楚の援助を望んでいると伝え、楚王はすぐさま芈戎を秦へ派遣することを承諾し、秦の公主を公子蘭に娶らせることも考えた。靳尚は誠意を示すため、太子を秦へ人質として送ることを提案したが、楚王はこのような重大な事は熟慮が必要だと答えた。
一方咸陽では、嬴稷が侍従たちが母后と義渠王の関係について噂しているのを聞き、激怒した。羋月を訪ねてきた義渠王に対し、嬴稷は剣を抜き、「ここは咸陽だ、義渠ではない。咸陽に来たからには秦の法に従え。外臣が朝見するには奏上して許可を得る必要がある」と挑発した。義渠王はこれを軽く受け流したが、嬴稷は隙を突いて彼を斬りつけた。腕に傷を負った義渠王は羋月に「お前の息子に命を狙われているぞ!」と訴えた。羋月は誤解だと弁明し、嬴稷に承明殿で面壁思過を命じた。
その後、刺客が羋月を襲撃する事件が発生した。義渠王は羋月の身代わりとなって矢を受け、重傷を負って意識不明に陥った。動揺した羋月は義渠王を自分の寝宮に運び込んだ。このことを知った嬴稷は激怒し、「何様のつもりだ!母后の寝宮に!あの時、一剣で殺すべきだった!」と剣を抜こうとした。
羋月は義渠王の ベッドサイドに付き添い、献身的に看病した。義渠王が目を覚ますと、羋月は傷はもう大丈夫だと告げた。この襲撃の黒幕が羋姝と嬴華であることを見抜いた羋月は、咸陽の禁軍兵士たちを宣室殿前に集め、訓戒した。羋月は兵士たちの前で旧製度を完全に打破し、秦の法に背く者は誰であろうと罰すると宣言した。兵士たちは羋月の言葉に鼓舞され、蒙驁の指揮の下、戦場で罪を償いたいと申し出た。
甘茂は雍城へ逃亡し、羋姝と嬴華に合流した。羋月は魏琰も雍城へ送り、嬴華に仮乱軍を解散して朝廷に帰順するよう説得させた。しかし嬴華は、羋姝から秦王の座を約束されている以上、後戻りはできないと言い、咸陽へ攻め込む以外に道はないと主張した。
羋月は司馬錯に巴蜀の乱を鎮圧するため南下を命じた。また、白起と魏冉には咸陽周辺の治安維持のため、仮乱に乗じて集まった小規模な賊徒を討伐するよう命じた。
第70話の感想
第七十話は、緊迫感溢れる展開で、息つく暇もないほどでした。特に、嬴稷と義渠王の対立、そして義渠王が羋月のために矢を受けるシーンは、物語の大きな転換点と言えるでしょう。幼いながらも母后を守る強い意誌を見せる嬴稷、そして羋月への深い愛情を示す義渠王、二人の対比が鮮やかに描かれていました。
嬴稷の行動は、まだ幼いゆえの未熟さ、そして母后への強い独占欲が表れているように感じます。義渠王の存在を認めたくない、母后を自分だけのものにしたいという気持ちが、彼を衝動的な行動へと駆り立てたのでしょう。一方、義渠王は、羋月への愛ゆえに命を懸けて彼女を守りました。彼の行動は、言葉ではなく、行動で愛情を示すという、義渠王らしい男らしさを改めて感じさせます。
つづく