あらすじ
第七十一話は、義渠王が羋月の心配をよそに、司馬錯将軍の援軍として前線へ向かう決意を語る場面から始まります。彼は何の役にも立たない男ではいたくないと羋月に告げます。その後、嬴稷が楚の使者が到着したことを知らせ、羋月はそれが弟の芈戎だと聞くと、喜び勇んで彼との再会を果たします。
場面は変わり、宣太后として政務に当たる羋月は、樗里子と共に秦の現状について話し合い、未だ恭順の意を示さない謀反人たちに対し、最後通牒を出すことを決断します。
一方庸の地では、恵后である羋姝が公子華を王として擁立し、咸陽に対抗する姿勢を見せていました。しかし、蒙将軍の説得工作により、公子華の軍勢は多くの兵士が逃亡し、ついには公子華を含む七人の公子が捕らえられる事態に陥ります。
そして、捕らえられた謀反人たちをどう処遇するかという問題に直面した羋月は、法に従って罰するべきだと毅然とした態度で主張し、法の前では誰もが平等であることの重要性を改めて強調します。
ネタバレ
義渠王は服を著ながら、羋月が身の回りの世話をしていました。羋月は「お体はまだ万全ではないのに、どうしてそんなに急ぐのですか」と心配そうに言いました。義渠王は「軽い傷だ、とっくに治っている」と答え、一日中寝ているわけにはいかないと続けました。「白起や魏冉たちが前線で戦っているというのに、私はここで何不自由なく暮らし、遊んでばかりいるわけにはいかない」羋月は仕方なく送り出すことにしました。出発際、義渠王は羋月を安心させるように「今回は司馬錯将軍の援軍に行くだけで、大事には至らない」と言いました。
義渠王が去った直後、嬴稷が興奮した様子で羋月の元へ駆け込んできました。「楚の使者が到著しました!今、宿舎にいます!」羋月は芈戎が来たと聞き、喜びのあまり目に涙を浮かべ、急いで嬴稷と共に宿舎へ向かいました。
宿舎に著くと、羋月と芈戎は涙を流しながら抱き合い、再会を喜びました。母と叔父がようやく再会できたのを見て、嬴稷もまた喜びに満ち溢れ、少司命の加護に感謝しました。
ある日、宣太后である羋月は宮殿で樗裏疾と秦の現状について話し合っていました。樗裏疾は巴蜀の仮乱が鎮圧されたこと、各国からの使者が帰国したこと、公子池が帰順したこと、さらに他の公子たちも密かに朝廷に帰順の書状を提出していることを報告しました。残るは庸城で公子華と恵后を筆頭とする仮乱を起こしている公子たちだけとなりました。二人は嬴華たちに再び詔書を送り、朝廷に帰順して共に国を治めるならば過去の罪は問わないが、そうでなければ仮逆者として討伐すると通告することにしました。
庸城では、甘茂が羋姝に公子華に咸陽への攻撃を命じるよう進言していました。「今まさに大戦が始まろうとしています。恵后様、早く決断を下してください」と甘茂は迫りました。やむを得ず、羋姝は公子華を王に立てました。嬴華が秦王に即位したと知った魏琰は、喜びのあまり涙を流しました。「これで華児は堂々と咸陽の逆賊を討伐できる」
蒙武将軍は嬴華の軍隊へ行き、兵士たちを説得しました。大戦前夜、嬴華の兵士の多くが逃亡しました。多勢に無勢で、最終的に嬴華と仮乱に加担した七人の公子は全員捕らえられました。甘茂は混乱に乗じて魏国へ逃亡し、恵后は咸陽へ連れ戻されました。
仮乱を起こした嬴華をはじめとする七人の公子の処遇について、羋月は秦の法律に従い全員斬首刑にすべきだと主張しました。しかし、樗裏疾と嬴稷は納得しませんでした。羋月は息子に根気強く説明しました。「王子であろうと庶民であろうと、法を犯せば同じ罪に問われる。そうでなければ秦の法律は何のためにあるのか。法律が施行されなければ、いずれ国は滅びる」
第71話の感想
第71話は、感動の再会と緊迫の政治劇が交錯する、見応えのあるエピソードでした。羋月と芈戎の涙の再会は、これまでの苦難を乗り越えてきた二人の絆の深さを改めて感じさせ、胸を打つものがありました。少司命への感謝の言葉からも、彼らの信仰心の厚さが伺えます。
一方で、秦国内の政情は依然として不安定です。巴蜀の仮乱は鎮圧されたものの、公子華と恵后を中心とした仮乱勢力が残っており、羋月は難しい判断を迫られます。嬴華を王位に就かせるという羋姝の決断は、追い詰められた状況での苦肉の策とはいえ、更なる混乱を招く危険な賭けでした。
甘茂の闇躍や蒙将軍の活躍など、脇を固めるキャラクターたちの動きも物語に深みを与えています。特に、甘茂の魏国への逃亡は、今後の展開に大きな影響を与える伏線となるでしょう。
つづく