あらすじ
第七十二話は、羋月と息子嬴稷の会話から始まります。嬴稷は母と義渠王の関係に疑問を抱きますが、羋月は気楽な様子で答え、楚の公主を嬴稷の妃に選んだことを告げます。
その後、義渠君が現れ、狩りで得た獲物や毛皮で生活の糧を保証すると約束します。樗里子が会おうとしない中、羋月は雪の中じっと待ち続け、ついに樗里子の心を動かします。二人は秦の未来について語り合い、共に誓いを立てます。
この回では、謀反を起こした七公子が処刑され、公子たちの反乱が鎮圧されたことも描かれています。羋月は赢駟を弔い、秦の未来を守る決意を新たにします。
そして、頑なに心を閉ざした姉・羋姝と最後の対面を果たし、羋姝を清涼殿で余生を送らせることを決めます。
ネタバレ
嬴稷は羋月の真意を理解し、彼女の公明正大さを称賛しました。しかし、義渠王との関係が世間の噂になっていることに疑問を抱き、「なぜ義渠王と関わり、世間に噂されるのですか?」と尋ねます。羋月は「それなら噂する者の舌を切り落とせばいい」と答え、嬴稷は「天下人の舌をすべて落とせますか?」と仮論します。羋月は笑い、「天下人?衣食にも事欠く民がどれだけいると思っているの?隣で誰と寝ていようが気にしている暇があるかしら?」と返しました。そして嬴稷を優しく慰め、楚の美しく賢淑な王女との縁談を提案し、嬴稷は「母后の言うとおりにします」と静かに答えました。
香児が雪の降りしきる様子を伝えに来る中、羋月は燕国での厳しい冬を思い出し、義渠王の温かさを懐かしみます。すると、いつの間にか現れた義渠王は「月児、安心してください。これからもたくさんの獲物を狩り、たくさんの毛皮を持ち帰り、月児と稷児に毎日新しい服を著せましょう」と羋月に語りかけます。羋月は「あなたが獣を狩るように、私は老臣の心を取り戻しに行きます」と答えました。
樗裏疾は屋敷に閉じこもり、酒に憂さを晴らしていました。羋月は何度門を叩いても開けてもらえず、最後は根比べのように雪の中に立ち続けると宣言します。
翌朝、樗裏疾が門を開けると、羋月たちは雪の中で眠っていました。驚いた樗裏疾に、羋月は「ずいぶん早起きですね」と冗談を言い、屋敷に招き入れられます。羋月は自身の大きな夢を語り、樗裏疾は「天下人が秦にひれ伏すなどではなく、恵文王時代の秦に戻るだけでも満足です」と悲観的に答えます。そこで羋月は、10年以内に秦が恵文王時代のように復興しなければ、太后の座を退き政務に関わらないと誓います。
紀元前305年、仮乱を起こした七公子が咸陽で処刑され、諸公子の乱は終結しました。羋月は嬴駟に七公子を処刑したことを報告し、「大王が生きていたら賛成したかどうか分かりませんが、将来の王図覇業のためには、こうするしかありませんでした」と告げます。
宮中に平和が戻り、羋月は羋姝を訪ねますが、彼女は依然として心を改めません。羋月は別れを告げ、すべてを終わらせます。姉である羋姝を清涼殿で余生を送らせることにしました。
第72話の感想
第72話は、羋月が政治的手腕と愛情の両面を見せる、感動的なエピソードでした。嬴稷との会話では、母としての愛情と厳しさを巧みに使い分け、若い王を導く姿が印象的です。義渠王との関係に対する世間からの批判にも毅然とした態度で臨み、揺るぎない信念を感じさせます。
特に印象的だったのは、樗裏疾との雪の中での対峙です。一晩中立ち続け、自身の覚悟を示すことで、老臣の心を取り戻そうとする彼女の強い意誌が伝わってきました。権力闘争だけでなく、人としての情も大切にする羋月の人間性が際立つシーンでした。
一方で、羋姝との最後の別れは切なく、複雑な感情を抱かせます。姉妹でありながら、異なる道を歩み、最後は分かり合えないまま別れる二人の姿は、権力闘争の残酷さを改めて感じさせます。羋姝を清涼殿で余生を送らせるという羋月の判断は、姉としての情が残っているからこそでしょう。
つづく